2021年末。ほんとうに久々の18切符旅行では、福島から磐越西線経由で新潟方面へ抜けていきました。その途中で乗った列車がなんだか印象に残ったので、ご紹介します。
※2022年3月改正前の旅行記です。その後この列車は消えてしまいました…。
会津若松
凍り付いたホームの一端に、銀色でカクっとした現代的なディーゼルカーが止まっています。これから乗る、磐越西線227D 普通 新津ゆき。がらんとした車内で、8時14分の出発を待ちます。
この次の列車は、喜多方ゆきが9時57分。新津行きは11時台の快速列車…と、まあローカル線らしく間は空きますが、時間的な問題かお客さんは少なく。余裕でボックスシートを占領できてしまいました。ちょうど巨大寒波の襲来、そして年末、というのもあるかもしれませんが、意外とさみしい。
会津若松→喜多方:普通列車の駅飛ばし
発車してしばらく、喜多方までは会津盆地の中を走ります。
直線的な線形のこの区間、堂島・笈川・塩川・姥堂・会津豊川と、わりと細かく駅が設置されていますが、この列車が止まるのはそのうち塩川駅だけ。この列車だけでなく、多くの列車はこの区間で通過運転を行います。別に快速列車というわけではなく、これがこの区間の「普通」の様。
これらの駅は一日、上下ともに5本のみの停車。一方、快速1往復と普通10往復は通過してしまいます。
かつて長編成の客車列車が主体だった頃に、編成の短いガソリンカーやディーゼルカーだけが止まる短いホームの駅…が、運行形態だけそのままに今も残っているのでしょうね。ちょっと面白い。
ついでに言えば、喜多方までの区間は電化もされていますが、本数は年々減少し、今や1.5往復のみ。地元新聞では電化設備の廃止撤去も報じられていて、まあ仕方ない気もしますが、そういう段階かあ、とちょっと驚きました。
喜多方~五泉:阿賀川と長時間停車をお供に
この先線路は高度を上げ、そのあとは福島-新潟県境の山地を走ります。喜多方から先は五泉までICカードも使えず、ローカル線らしさはより濃ゆく。
やたらとゆっくりな227D
阿賀川(阿賀野川)と並走し、内陸のローカル線らしい雰囲気を感じる景色の美しい区間です。が、手元の「小さな時刻表」をめくってみると、この227D、この区間を走り抜けるのにやたらと時間がかかるのです。
ざっくりまとめてみます。
赤線で示したのが乗っていた227D。この列車、途中駅での停車時間がやたらと長いのです。そのおかげか、普通列車が2時間40分前後・快速が2時間18分で走り抜けるところを3時間18分も掛けてゆったりと進みます。
ところで、227Dと直接は無関係ですが…上の絵、ついでに高速バスを入れてみました。会津若松-新潟間って2時間切るのですね。磐越自動車道があまりに強い…。
この区間の名物観光列車、SLばんえつ物語号は若松→新津を3時間15分で走破しますから、227Dは蒸気機関車牽引の客車列車より更に時間がかかることになります。
(もっとも、SLの新津行きは走る時間帯が日没間際で飛ばし気味、というのもあるかもしれませんが。午前中の会津若松行きは3時間30分の運行。)
まあ要は、227Dは磐越西線の会津若松発、新津行きの列車で一番のドン行列車だなあと気づきました。下記、長時間停車の風景を交えつつ、沿線風景をご紹介。
野沢駅(25分停車)
耶麻郡西会津町の代表駅、野沢駅でまずガッツリ25分の停車。3番線まである結構大きな駅です。特に行き違い列車や通過待ちがあるわけでもなく、ただただ止まっているだけで、この時点では謎の長時間停車です。
これだけ停車時間があれば、駅周辺をいろいろ観察したいところ。が、久々の旅、動き方の勝手がつかめず、ちょっと控えめにホームを見て回る程度にしました。寒かったし。
野沢駅のお次、上野尻を出るとすぐに立派なダムが見えてきました。ちょっとテンション上がる!
徳沢駅(9分)
上野尻駅の次(さっきの野沢駅から2つ隣)の徳沢駅で、また9分間停車。新潟-福島県境に位置する駅です。
この駅で、新潟からやってくる快速「あがの」号と交換を行います。
恐らくですが、野沢駅での理由不明の25分停車、この待ち時間の時間消化も兼ねていたんでしょう。より大きい町の駅で時間を潰す、という意味合いがあるんじゃ?と推測。
快速が通過した後はすぐの発車。新潟県に入ります。分水嶺というわけでもないので、あまり県境を越えた感じはありません。(ただ、川の名前は阿賀川から阿賀野川に変わります。)
このあたり、昔から会津領で、廃藩置県後の一時期は福島県に属したエリア…なので、そういう雰囲気が残っているのかも。話を脱線させると、地理マニアには有名?な飯豊山登山道のヒョロ長い福島県境線、このへんが新潟県に移った影響でああなったのですよね。
津川駅(18分)
新潟県阿賀町の津川駅で最後の長時間停車。待合室がちょっと可愛く改修されていて、SLばんえつ物語の運んでくる観光客も意識している感じ。
この駅でも普通列車と交換がありました。
結局、野沢・徳沢・津川の3駅で止まっていた時間が25+9+18の計52分。運行時間が3時間18分ですので、この3駅だけで全体の1/4は止まっていた計算になります。
喜多方駅や五十島駅でも2~3分程度止まりましたし、単純に途中駅の停車時間を足していったら1時間以上はいっていそう。まさに鈍行!
津川駅を出ると国道49号線と並走します…が、国道のほうは集落が途切れた途端に廃道化。断崖絶壁のなかを磐越西線だけが進んでゆきます。
このあたり、通るのが列車ぐらいで人気がなく都合がいいのか、サルの群れが下りてきていました。ガードロープの柱の上にのっかったり、木の上で枝を揺らしたり。ちょっとびっくり。
五泉~新津:新潟近郊区間に突入
五泉駅から先は新潟近郊区間、ICカードも使えます。車窓の家並みも増え、ずいぶんひらけてきました。
県境を越えてからは、地元の方らしき利用もぼちぼち増えていたのですが、五泉まで来ると、これまでと比べ物にならないくらいに人が乗ってきます。混雑度イッキに増してにぎやかに、湿度もちょっと高めに。
こうなるともうあっという間に新津駅に到着。長い旅がおわりました。惜しむ間もなく、すぐの新潟行き電車が来てしまうので、跨線橋を渡って乗り換えて旅を続けましたが、本稿の乗車記録はここまで。
車輛紹介:GV-E400系
さて、最後に乗ってきた車輛のご紹介。最新型の電気式気動車、GV-E400系!
冬場はステンレスボディが凍り付き、ブラックフェイスも相まってどことなく寒々しいですが、しかし力強さも感じる。そこに桃色と黄色のキュートなドット柄を合わせてくるのが、なんだか今風の車両だなあと感じますが、妙に似合うんです。
淡い黄色・淡い桃色の組み合わせは、新潟地区の主力・E129系電車でも採用されていますから、これが今の「新潟色」なのでしょう。かつて新潟地区の旧型国電がまとっていた、濃い赤・濃い黄色のカラーリングをアレンジした感じで、こういう繋がりの感じられる塗装はなんだか好きです。
車内もまだ新車なのでピカピカ。暖色のシートが冬景色に映えます。窓が遮光シートで青っぽいのも最近の車両の特徴ですね。
トイレもでかい。長時間乗車には助かります。
ところで、磐越西線にGV-E400系が入ったのは2020年。それまでは、国鉄型気動車のキハ40系列と、JRに入ってから製造されたキハ120が活躍していました。
かつての旅行記や写真を見ると、この227Dにはキハ40が充てられていたようです。長時間停車があるので、追っかけ沿線撮影にちょうどいい?のか、Web検索するとカッコイイ走行写真がたくさん出てきます。
新潟地区のキハ40は、羽越本線ですが一度乗ったことがありました。2013年だったかな。このあたりも全部GV-E400系に置き換えられたはず…
折角なので国鉄車時代に乗っておきたかったなあという気もします。でも、トイレがでかく、気密性がよいので、新車でよかった!と有難がっておきました。
2022年3月改正で…
さて、快速「あがの」の普通列車化があらかじめ発表されていた22年3月改正。
この列車は「あがの」を通すために野沢駅+徳沢駅で38分も待たされていたわけで、さあどうなるか。久々に大判の時刻表を買って、確認してみました。
すると、磐越西線のこの区間はけっこう変化があります。同じ列車番号の新227Dは、若松9時48分発→新津12時26分着となり、2時間38分で走破。若松~喜多方間でも各駅に停車するので停車駅は増えますが、なんと40分!も大幅にスピードアップ。
いや、時間が変わってるんだからそのまま比較はできないな、と、自分が乗った227Dに相当する8時14分発の列車を確認してみる。こちらは一本前、225Dとして野沢駅止まりになっていました。そうか、途中駅で切られちゃったか…。
さらに、若松で9時48分の新227Dを逃すと、次の新津まで行ける列車は14時台の231Dに。5時間弱も空いてしまいます。
アシの遅い旧型が引退し、ダイヤも合理化されて、ローカル線の長閑なドン行列車は姿を消してゆくのでしょう。やっぱり、途中下車しておけばよかったな…。