横川から県境をJRバスで越え、雨の軽井沢についた。といっても特に観光の予定はなく、これから長野まで向かう。ちょっとひねくれた帰省である。
軽井沢駅
バス停から少し歩いて軽井沢駅へ。3階の改札まで階段をあがるのが億劫で、地平にある旧駅舎口にゆく。窓口が閉まっていたので、券売機で切符を買ってホーム内へ。
青色の電車が発車するのが見え、焦る。あれって乗る電車じゃない?でもまだ早いし… 駅舎の時刻表を見るついでに改札で聞いてみる。どうも、入れ替えを行っていただけだけで、このあとまた戻ってくるらしい。
しばらく後、その電車はゆっくりと入線してきた。
しなの鉄道の「特別快速」
というわけで、今回は しなの鉄道の有料快速列車「特別快速 軽井沢リゾート3号」に乗る。
しなの鉄道は1997年の長野新幹線開業に伴って発足して以来、ずっと国鉄型電車を使い倒していたのだけれど、ついに新車が入ることになった。JR東日本E129系ベースのSR1系だ。
このときにデュアルシートタイプの特別車両を導入し、有料快速列車も運行開始。平日は「しなのサンライズ」「しなのサンセット」として、休日は「軽井沢リゾート」として、この青いSR1系が活躍することとなった。
車内の様子
車内へ。いわゆるデュアルシート車、座席をロングシート・進行方向向きシートと切り替えられるタイプの車両。東上ライナーとか京王ライナーとか、首都圏の私鉄では最近よく見かけるが、地方第3セクター鉄道では初なんじゃないだろうか。
今回は連休初日なのもあり、念のため事前にWeb予約しておいた。予約時は席も選び放題だったが、出発時にはシートの窓側が半分埋まるくらいだろうか。2人組もそれなりに多い。見える頭を数えてみれば、私の乗る1号車には16人ほど。2号車も予約時はガラガラだったが、10人弱の乗車があるように見える。
それでもまだまだ空きはあり、当日飛び乗りできるくらいの込み具合。でも旅程に組んだのなら予約がお奨め。デュアルシート車の宿命か、窓と席とが絶妙にあっていないのだ。
景色を眺めるつもりであれば、1号車なら2・4・7・9列目、2号車だと8・10列目を。これ以外の席だと窓枠が横にあったり、後ろ向きだったり(1・3号)、やけに狭かったりする。
軽井沢→上田
じっくり車内を観察していると、もう出発時間。
向かい側のホームに入ってきた電車と入れ替わるように発車、定刻16時8分。
列車は小雨降る、どんよりと湿気の高い軽井沢を走る。これまでも、軽井沢は来たとき晴れていた試しがないな。
すぐにお隣の中軽井沢に停車。16時12分着、ここで1グループが降りたのには流石にびっくりした。指定席料金を払ってそんな短距離乗車を? 20分もしないうちに、次の普通列車もあるので謎だ。知らずうっかり乗ってしまったのか、いやしかし軽井沢だからな…セレブかもな…流石にそれはないか…
特急ばりにカッ飛ばす転換三セク
さて、この次の停車駅はなんと上田である。この軽井沢リゾート3号はとにかく駅を飛ばすので、30分ほど無停車となる。
停車駅は軽井沢・中軽井沢・上田・戸倉・長野。
JR信越本線時代の特急「あさま」号の大半の便より停車駅が少ない。「あさま」が半数程度止まっていた篠ノ井はもちろん、全列車が停車していた小諸駅まで通過してしまう。これはなかなかだ。
もっとも、軽井沢→長野間の所要時間は65分。近い停車パターンの「あさま」はここを50分台前半で走破していたから、案外スピードダウンしている。
おそらく最高速度の関係だろう。「あさま」時代は最高120km/h、しなの鉄道移管後は最高速度が100km/hに引き下げられている。実際のところ、軽井沢リゾート号のなかでGPS速度計を見ていたが、出しても90km/hくらいだった。
さらに来年春には経費削減のため、しなの鉄道線は85km/hにスピードダウンが行われる予定で、90km/hでの走りも今のうちなのだ。(そして残念ながら「軽井沢リゾート3号」は来春改正で運転取りやめらしい)
列車は止まらずに飛ばし続けている。晴れていれば、このあたりで浅間山もよく見えるのだろうが、すっきりしない。日没も近く、明るい車内も相まって外が余計薄暗く見える。
左手に小海線の線路が寄ってくると小諸を通過。ミュージックホーンを鳴らしながら、スピードは落とすものの、それなりの速さで走り去ってゆく。
気づけば上田だ。16時43分。景色を眺めていると案外早い。
上田駅
上田では、見える範囲で3グループが下車し、5人位が乗ってきた。
降りた人は皆大きな紙袋を持っていて、きっと軽井沢でのショッピング帰りだろう。
軽井沢~上田間であれば新幹線も使えるが、近い時間で比較すると、新幹線自由席が2640円18分に対し、軽井沢リゾートだと1390円34分。ならまあ、結構選択肢としてアリではないか。リクライニングシートではないけれど確実に座れるし。
一方乗ってきた人は、おそらく私と同じく鉄道マニア(大きなカメラ持ってるし)と、あとは有料快速と知らないで乗ってしまったようだ。あとで車掌さんが来て料金を徴収していた。
となると、純粋な気持ちで(?)上田〜長野を軽井沢リゾート号で、という人は今回居なかったのか。上田~長野間は新幹線自由席1470円12分に対してリゾート号1280円30分、たしかにこれなら新幹線に乗りたい。
ついでに蛇足、軽井沢~長野感は新幹線自由席が3210円31分、リゾート号は2710円65分。これだと軽井沢リゾート号は幾分分が悪い。しかし、往復だと新幹線自由席6420円に対し軽井沢リゾート号は3390円(フリーきっぷ2390円を利用)となる。これなら戦える!
もっとも、23年春改正ダイヤで減便と時間変更があり、長野から軽井沢までリゾート号で日帰り往復はできなくなってしまいますが。
上田→長野
上田を出ると一段と暗くなってきた気がするが、調べてみると日没まではまだまだある。西上田、坂城とどんどん駅を飛ばす。
坂城には引退した169系電車が保存されている。このSR1系特別車両は平日の「しなのサンライズ」「しなのサンセット」にも使われるが、これはもともとこの169系が担当していた。SR1系にとっては大先輩だ。
ちなみに、しなの鉄道の通勤ライナーは、169系(ライナー)→189系(ライナー)→115系(無料快速)→SR1系(ライナー)と変遷している。
そういえば、母校には田中駅から長野まで通っていた友人がいた。始発を逃すとライナーじゃなきゃ1限まにあわないんだよ、と、くしゃくしゃに財布に詰め込まれたたくさんのライナー券を見せてくれたことがある。今思えば、一枚記念にもらっておけばよかったかな。さすがに変なヤツだと思われそうで、どうも言い出せなかった。
坂城の先ではトンネルに入り、またミュージックホーンを鳴らす。
16時56分到着の戸倉で、1人が降りた。ここが最後の停車駅で、このあと車掌さんが巡回を始める。そういえば最初はワンマン列車だったはずで、戸倉からは車掌乗務なのか。JRに乗り入れる関係か、長野~戸倉のみ車掌乗務、という列車が昔から結構多い。
車掌さんによる検札が始まった。私はネット予約をしていたので、特に声をかけられることもなく。予約状況は手元で見られるのだろう。上田から乗った人は指定券を持っていなかったようで、ここで料金を徴収されている。会話を聞いた感じ、車内だと券面上は戸倉→長野での発券になるらしい。どうせ料金は500円で変わらないしね。
かつて長野電鉄が来ていた屋代も通過し、千曲川を渡り、気づけば篠ノ井。
特急しなの(長野〜名古屋)が全列車止まる篠ノ井駅だが、ここも容赦なく通過し、しなの鉄道からJR信越本線へ。このあたりの風景はもう見慣れたもの。
新幹線高架と並走しながら今井駅、川中島駅を通過して犀川をわたり、その先はゴルフの打ちっぱなし、ここの脇道のカーブ、昔写真撮りに行ったな…とか思うと、もう安茂里、マルコメ味噌が左手に見えてきたらすぐに長野駅だ。
長野駅到着後のシート転換
17時13分、3番線着、お出口は右側。
このあとは折り返して戸倉行きの普通列車になる。戸倉は車庫があるから、そのまま車庫に入るのだろう。
すべての客が降りたあと、一旦ドアをしめて、シートの転換作業が始まる。
1号車は完全に自動で、1列毎うにょ~んと動き、あっというまにクロスシートからロングシートに変わってしまった。
一方2号車は人手で転換している。テーブル付きシートがあるからだろうか?こちらはシートを180°回転させて進行方向向きにし、クロスシートのまま運用に入るようだ。
ロングシート車・クロスシート車を1両つづで、実質セミクロスみたいな感じ。
ドアが開くと乗客が乗り込んでいった。2号車はテーブル付きでコンセントも使えるから、乗りトクかもしれない。大荷物の人がテーブルの上にリュックや紙袋をおき有効活用している。テーブルのある分座席数が減ってしまうが、この戸倉行はそこまで混まないのか、問題なさそうだ。
このあと6番ホームには妙高高原発の軽井沢リゾート4号が入線し、青いSR1が顔を合わせる。こちら4号は長野~軽井沢間を戸倉・上田だけ停車、61分で駆ける。
むすび
登場から2往復体制だった「軽井沢リゾート」も、長野~軽井沢間の2・3号は23年3月ダイヤ改正で運転取りやめ予定、で1往復となり、4号が日中帯の運転に時間がずらされる。しなの鉄道の次回ダイヤ改正では、減便・スピードダウンとコスト削減が中心になるようで(そのかわりパターンダイヤを導入するらしい)景気が悪いというか、人口減少の現実というか…。
そんな時世だからこそ、フラッグシップ列車の「軽井沢リゾート」には頑張ってほしいなと思う。この手の列車は色々と手の入れようもありそうだし、今後も気にかけていきたい。長野~妙高高原間も、そのうち乗らねばリスト入りだ。