ぱらのみっく・ういんどう

ひとり旅のブログ。乗り鉄中心、バスに船、街歩き。ひとつのテーマをじっくりと…。

Pトップと急行型客車で峠の麓へ【ELぐんま よこかわ・2022年秋】

帰省ルートについて思案。いつも新幹線一本で帰るけど、今回は日程に余裕もあるし、ちょっとばかし寄り道してみたい。色々考えたり「えきねっと」を見ていたら、ちょうど「ELぐんま よこかわ」の横川行きが空いていた。そういえば乗ったことがなかったし、ちょうどいいかなと予約。

 

 

当日。東京→高崎だし、指定席を取るほどでも…と思って乗り込むと、連休初日の上越新幹線の自由席は大混雑。案の定座れず、混雑する新幹線のデッキに立ち、高崎駅に向かう。ホームに滑り込む少し前に煙が見えて、下を見ると蒸気機関車青い車両がつながっていた。なるほどあれが来るのか。

青い客車!ちらっと見えた。

高崎は雨降り。あるき回るにも…微妙。と思いつつ、しばし時間を潰し、再び駅構内に向かう。「ELぐんま よこかわ」は2番線発着だ。

こういうときは向かい側からスッキリ写真を撮ったりしたいけど、1番線は封鎖され立ち入れない。大人しく柱のそばで待つ。

 

高崎駅入線

9時35分頃、上野方面から列車がやってくるようだ。天気も悪いし、駅舎の影で暗く、ホーム上は人が多いしで、よく見通せない。それでも、汽笛の音から列車が入ってきそうなのがわかる。点字ブロックを越えぬように、と、盛んに放送して注意喚起をしている。

だんだんと列車の形らしきものが近づいてくるのがみえる。

おお、来たかな…??

おお!!Pトップじゃん!!!

今日はEF65-501の牽引だった。機関車の下には人たち、前方を注視している。
それにしても随分とゆっくりだ。

 

 

当日の編成

EF65の後ろには青色の12系客車が5両。そしてその後ろは、高崎時点では見に行かずにわからなかったのだけど、安中で確認したところD51496だった。

 

SLぐんま は日によって編成が変わるが、今日の編成は下記のとおりだ。

(横川) EF65-501+12系5両D51 498 (高崎)

横川駅は構造上機関車の付替えができないので、かならず前後に機関車がつく、いわゆるプッシュプルの動きで走ることになる。

高崎地区の客車観光列車は結構マニアックな方面のバラエティに富んでいて、ほかにもC61、旧客、EF64-1000やDD51が来たりもする。

Pトップ:EF65-501

そのなかでも、EF65-501が来たのは素直に嬉しかった。東海道方面のブルートレインなんかを引いていたことで有名な、EF65型500番台の旅客タイプ1号機。鉄道趣味界隈ではPassenger型のトップナンバー、の意でPトップと呼ばれていたりする。

めちゃくちゃキレイなボディに愛を感じる。

かなり歴史ある車両。引退したら鉄道博物館に入ってもおかしくないような車両だし、今の今まで活躍しているのだって、動態保存的な意味合いが強いのだろう。

しかしながら、もう客車列車なんてJR線にはいないし、観光列車以外でのメイン業務だった工事列車や列車回送向けにも新型が登場。最近はJR東日本・高崎地区の電気機関車が立て続けに廃車されている状況で、趣味界隈でも、EF65-501だっていつまで走るのか…という雰囲気がある。

うしろのSLのほうが人気かな、と思いきやPトップも大人気。

まあ、数年前から廃車説は出ていて、結局まだ走るんかい!という部分はあるけれど。それでも車両も古いのだから、早めに見ておけるのに越したことはない。

 

まあ、色々書くが、なによりカッコいい!見てみたい!というのがずっとあったので嬉しかった。ブルーとクリームの優美な配色、横に細長い窓、その下のグリル、青い客車、昔図鑑を見ては絵に書いた「ブルートレイン」がいまここにいるのだ…。まあ、Pトップが活躍した時代には、まだ私は生まれてないんだけど。

このアールのついたお顔がいいんですよ… (@横川駅)

12系客車

後ろにつながる12系もなかなかに貴重だ。改造車はそれなりに存在しているものの、数は減りつつある。

2ドアに大窓が連続する姿、私になぜかメチャクチャ刺さる。 (@横川駅)

いちおう急行形客車に分類される。急行なくなり久しき今、そもそも急行形というのも風前の灯火である。ディーゼルならいすみ鉄道のキハ28、電車はえちごトキメキ鉄道のクハ455がそれぞれ「最後の1両」だ。どちらもわりと、先は見えている。

急行型自体が好きなのかも。写真のいすみ鉄道キハ28は、23年2月で引退。

それに対して12系グループはもう少しの間残りそうで、国鉄の「急行」というものの雰囲気をしばらく伝えてくれるのだろう。

 

筆がのっていろいろ講釈をたれてしまった。一方、このとき現場にいた私は、ホームの端っこでひとしきりシャッターをおして満足し、ちょっと早めに車内へ向かう。

本日のお席

事前にえきねっとで見た通り、車内のボックスはすべて埋まっている。ただ、私は一人旅だったけれど、1ボックス専有できてしまった。確かに、なかなかこの状態を見て、予約も入れづらいな…と少し申し訳なくも、しかしせっかくなので贅沢に使わせていただく。

家族で盛り上がるボックスもあれば、私のような一人旅もいて、子供にマニヤに、いろんな人を載せている。

発車が近づく。わりとギリギリまで外で写真撮ってる人が多い印象。

ちなみに各車両1ボックスは荷物置き場になっていて、ここは大荷物やベビーカーを置くのにご利用くださいと放送があった。なるほど、古い客車だからスペースは少ないけど、こういうふうに対応しているのか。

トイレと洗面台は大理石張りに美しく改修済で、女性専用トイレもある。水回りがしっかりキレイ、というのは、現代の列車として大事なのだろう。

水回りはぴっかぴかで、ここだけ昭和じゃない。

高崎→安中

9時48分の定刻にホームを発車。案外、高崎駅に止まっている時間は短い。

ELが、ぴきぃぃぃぃーー、と警笛を放ち、それに呼応してSLがぶぉおおおお、と汽笛をあげ、ガッコン、と揺れて動き出した。

行ってきます!

初動の揺れが大きくて、ああ、客車らしい感じ、と思ったが、走り出してしまえばすごくなめらかだ。3号車には発電用エンジンもついていないし、実に静かにコトコトと走る。線路もかつての幹線・信越本線だから作りがいいのだろう。

 

ちゃらららららん、らららららん♪
ハイケンスのセレナーデが流れ、自動放送が始まる。軽く運行の案内をしてから、牽引する機関車の紹介に入る。この列車は「ELぐんま」であるから、後ろについているSLではなく、先頭で引っ張るEL、電気機関車の説明だ。

EF65-501の説明や、ブルートレインとして活躍した線路などに加えて、鉄道ファンにはPトップと呼ばれ親しまれています、なんて話もあり、やはりしっかりと主役。

「旅」だ

もう一度ハイケンスのセレナーデが流れ、車掌放送が終わる。続いて車内販売のご案内。子供向けには冊子を配りますと案内が入る。

限定のお弁当とか、お菓子や飲み物、Tシャツまで売っているらしい。この車内販売、3号車の中程にある私の席で見かけたのは、もうだいぶ旅の終わり頃。歩みが遅いわけではなく、どうも安中でホームに降りている間に一度通り過ぎ、折り返してきたところだったようだ。やはり今日繋がっている方のグッズが人気なようで、このときにD51のTシャツは早々に売り切れて、C61だけが残っているというような会話が聞こえてきた。

すっきりしない天気。まあ、こんな日もある。

車窓はどんより曇り、時折雨。スピードはさほど出さず、スマホに入れているGPS速度計を見ると45km/h程度で、のんびりしたものだ。それでも快速なので駅を次々に通過してく。

こんな雨の中でもやはりPトップ牽引は魅力的なのか、沿線でちらほらカメラマンを見かける。畑地に沿って咲く真っ赤なヒガンバナと絡めて撮る人もいて、なかなか素敵な写真になりそうだ。ヒガンバナの赤はどんよりした車窓にも特によく映え、そして今日が秋のお彼岸であることを思い出す。

こんな天気だから、赤い彼岸花は目を引く

群馬八幡をすぎたあたりで、今度は12系客車の説明がある。どことなくマニアックで、かつて12系が使用されていた、ということで、夜行急行ちくま(長野〜大阪)とかの名前も出でくる。どうも、鉄道を学ぶ、という需要を満たそうという雰囲気がある。まあ終着駅の横川には「鉄道文化むら」もあるから、乗っている人はきっと何らかの形の鉄道好きだ。

本日のきっぷ。

安中の手前で車掌さんが切符の確認に来た。指定券と乗車券をそれぞれ手元に用意しておきさっと出す。乗車券の方は特に見られず、指定券にスタンプを押してから返さえた。そうか、高崎〜横川はSuicaエリアだから乗車券は持たない人も多いのだろう。

 

安中駅

山肌を埋め尽くす東邦亜鉛の工場が左手に見えてくればもうすぐ安中。

ここすき

安中駅には3分遅れの10時7分に到着。雨だからだろうか?本来は8分ほど止まるが、遅れたので停車時間が短くなってしまった。それでも12分の発車までの5分間でホームへと降り立ち、後ろの蒸気機関車を見に行く。

 

D51-498

先述の通り、高崎時点では後ろにどの機関車がついているのかわからなかったが、ここでおなじみ?D51-498だというのがわかった。

D51-498

D51-498は、正直雨に嫌気がさしてあまりあるきまわらなかったので、よく見れていない。割と色んなところに出てくるイメージで、幼き頃に篠ノ井線の明科とか、信越線の豊野とかに見に行った覚えがある。お久しぶり、だ。

「ぐんま車両センター」になかなか慣れないオタク。「高」じゃなく「群」

蒸気と煙、熱気、そして音。カマに火の入った蒸気機関車というのはやはり力強さがある。石炭臭いのもまた楽し。この便の主役はあくまでELの方とはいえ、やはりSLの魅力に抗えるものではなく(?)、雨が降り続く中でも写真を撮りに来る人が多い。

点検確認も行っているようで、状態チェックを兼ねた停車だろうか。

東邦亜鉛と蒸気。

JRの人も、背景の工場と蒸気機関車のコラボレーションをお楽しみください、と案内をしている。ちょうど工場方面が開けたところにとまり、これはなかなかカッコいい。スチームパンクくささがあるというか。

 

しかし、安中はぜひとも工場夜景を見に来たいですね。計画立てるかあ。

急いで戻る

結局すぐに時間は来てしまう。そそくさと客車に戻る。横川駅についたあとにたっぷり時間はありますから、と親切に乗車を急かす声が外から聞こえた。席について、発車時刻を待つ。

 

安中→横川

結局1分遅れで発車して、ふたたび雨の中を走る。工場の中に入ってゆく引込線が見え、こういう風景は健康によい。

あ~、ここを列車が走るシーン、見てみたい

安中を出ると田園地帯が広がる。少し離れた道路を並走する車、その後部座席で手を降っている子供が見える。緑の中に大きなカントリーエレベーターが見えた。

穀倉地帯にきたな~という気分になる、カントリーエレベータ

お次は磯辺。〜〜〜発祥の地、という放送がよく聞こえなかったが、2回めでわかった。温泉マーク♨発祥の地だった。聞いたことあるなそういえば。

その磯辺はすぐの発車で、ホームには降りないよう、という案内が入る。

磯部。磯辺焼き食べたい…いや漢字が違うわ。

磯辺から松井田あたりは信越化学工業の工場が連なっている。グループの信越半導体の工場もあって、こちらはシリコンウェハが世界トップシェア、持ってる電子機器のうちいくらかの成分はここ出身なのかもしれないな。信越本線群馬県区間、安中をはじめとして、けっこう工場風景がよく見えるのだなあと思う。

信越化学工業碓氷峠が廃止となり、信州・越後まで行けない信越線の群馬県区間で、もしかして唯一の信越要素なのでは?

 

だんだんと左側車窓に妙義山が主張を始める。案内放送の通り、松井田駅を通過してすぐの橋を渡るとき、パッと景色が広がりその異様な山容を拝めた。この天気ではさすがに榛名山は見えなかったが、妙義はしっかりと見えてその近さがよくわかる。

おお…

この山の形が好きで、上信越道を通る高速バスにのるとじっと見てしまう。

とはいえ今日のように、山腹に雲がかかり山頂が見える、という風景は早々ないらしい。なかなか神々しいものを拝んでしまった。

松井田駅からすぐの場所にある西松井田駅を通過すれば、山が両側に迫りはじめ、碓氷川がつくる谷の中に信越本線、国道18号、上信越自動車道があつまって並走する。鉄道がかつて挑み、そして道路は今も挑み続ける「峠」の存在を強烈に感じ始める。

「登ってきた」感が一気に強くなる。

碓氷峠の説明案内が入り、そういえば先程鉄道文化むらの園内施設の優待券も配られていた。ついたらどうしようか、初手釜飯で、そのあとトロッコ、保存車みてまわって…

18号沿いのおぎのや横川店が見えてくるともう横川駅だ。線路がいくつかに分岐し、広い構内がかつての栄華を忍ばせる。これでも相当小さくなったようだ。2番線に到着、お出口は左側。

 

横川駅

いっぽうで右側からは太鼓の演舞が聞こえてくる。1番線ホーム中程でドンドンと響かせていて、ちょうど3号車からよく見える。2番線でやるのだと事前情報を得ていたけれど、この雨だと屋根のある1番線でやるしかないのか。

なかなか迫力があるもので、何人かの乗客と一緒にしばらく降りずに見入ってしまった。ずっと列車に乗っていたからか、太古の合いの手に入る鉦の音がなんだか踏切みたいに聞こえる。(だいぶ早打ちで、2本目の電車が来るときの京成線にそっくりだ)

降りると、雨。ホームには屋根のない部分もありますので、と案内があった通り、普段列車の発着があまりない2番線側にはほとんど屋根はついていない。

釜飯とPトップ。横川のハレ寄りな日常。

さっきより雨脚は強まり、うーむ。SLの方に行くのは諦めて、客車やEL側で何枚かスナップを撮る。

国鉄色電気機関車と青色の客車の組み合わせは、どうしても乗りたくて乗れずに消えていったブルートレインたちを思い浮かべてしまう。まあ、座席車の12系は、ブルートレインの範疇には入らないのだけれど。

ああ~

かっこいいじゃんね…

そうこうしているうち、1番線には普通列車が入ってきた。ELぐんま よこかわ、なかなかゆっくり走るものだから、後続の電車がすぐのところまで迫って来ていたようだ。

お隣に普通電車。いい感じにSLが隠れて、この絵も悪くない?

いろんなアングルから舐め回す。

この雨の中、カメラを壊しても嫌なので、程々で諦めて屋根下へゆき、しかし名残惜しく跨線橋に登ったりして、そして改札を出た。

自動改札で窓口も閉じているが、駅員さんが立っている。持ち帰りたいという申し出に、慣れたように緑色の図入り無効印を押してくれた。そういえば、JR東日本の駅にしては珍しく、穴開けをされていない。

改札出ても振り返っちゃうよね

さて、どうしようか。釜飯たべるか、とりあえず、、、、

釜飯食べてから、鉄道文化むらへ。こちらにはEF65-500番台の貨物向け「F型」 EF65-520が保存されてます。

 

SLぐんま よこかわ発車シーン

しばらく観光の後、こんどは上りSLぐんまよこかわの発車時刻が近づく。まだ雨は降っている。駅への入場はせず、駅の横の駐車場を歩いて人だかりのできている方へゆく。こちらから見ている人も多い。

けっこう奥まで行ける

SLの汽笛はいつもびっくりする。

そして出発。SLはSLでやっぱりカッコイイ。

こんどは主役だ、とばかりに、JRの人とゆるキャラと、そしてたくさんのギャラリーが見守るか、D51-498は勢いよく汽笛一声、それにEF65-501も応え、ゆっくりと出発。

SLが茂みに隠れてから、ズームレンズで目一杯望遠にして切り取る。一瞬だけ、憧れのブルートレインのように見えた気がした。

いつまで走るか、だし、また来てみたい。晴れた日に沿線撮影もしてみたいし。