ぱらのみっく・ういんどう

旅をしたりしなかったりするブログです。

盛夏の大蛇で風を浴びる【木次線 奥出雲おろち号・2022年夏】

「奥出雲おろち号」は、島根県広島県を結ぶ「木次線」を運行する観光トロッコ列車で、結構長い歴史がある。ずっと気になっていたが、車両老朽化によりもうすぐ廃止されてしまうらしい、とニュースを聞く。

ああ、そうなのか、結局また乗れずに列車が去っていくのだな…と思いながらも、私の手はスマホでe5489(JR西日本のWeb予約サイト)を登録しはじめていた。乗るなら、今しか。

 

旅程を決める

関東在住者にはなかなかハードルが高く、まず基本的には土日のみの運転である。出発の10時8分に木次駅にいるためには、当日出雲市につくサンライズ出雲では間に合わず、実質前泊必須となる。

一応、夜行高速バスか、当日初便の飛行機+タクシーみたいな手もあるけれど、うーーん、せっかく出雲に行くのだし、初めてだし、観光したいよね…と、まだ指定席をとってもいないのに予定を練り始めた。

木次へ行くにも、泊りがけでないと厳しいのだ。

最初は、なるべく長く乗りたいよね、と日曜日の出雲市駅延長運転便を狙う。しかし案の定、事前申し込みの抽選に外れまくる。

なら、比較的競争率が低そうな夏休み期間の平日を狙う(ちょうど1ヶ月後は私も夏休みだ)。すると、備後落合→木次の片道だけが取れた。やった!と喜びもつかの間、どう考えても備後落合駅で3時間くらい待つ旅程しか組めない。備後落合へのアクセス路線は木次線芸備線があるけれど、どれも一日3本とか5本とかの超弩級ローカル線なのだ。

切符はとれたのに駅までたどり着けない、という

仕方なし、これは払い戻そう。今日は土曜日、仕事も休みだし、e5489で10時(指定席発売開始時間)ジャストで申し込んでやる!とりあえず窓際じゃなくてもいい、備後落合行きか、出来たら往復で乗れれば!と意気込み操作していると、あっさり往復で取れてしまった。ありゃま、あっけない…。

ついでにうっかり同日のサンライズ出雲まで取れてしまったのでこれで一件落着。出雲旅行を楽しむぞ~。

とりあえず出雲大社は行こう。

 

木次駅

結局出雲には3泊(!?)して宍道湖周りをしっかりじっくり観光し、当日を迎える。

出雲市駅にホテルをとったので、山陰本線木次線と乗り継ぎ、木次線の分岐する宍道駅へ。トロッコ列車木次駅からの発車なので、まずは木次行の列車に乗り継ぐ。

ロングシートの1両編成、山陰線列車のの接続を受けて全席がサラッと埋まる。リュックサックとカメラを持った、おろち号に乗り継ぐ人が多そうな雰囲気だ。

宍道→木次まではキハ120形、JR西日本のローカル線ではおなじみの車両だ。

宍道駅から40分後、木次駅に到着。

機関区につながる側線には青と白の車両が留置されている。おろち号だ!

宍道から乗ってきた普通列車と同じ2番ホームに入ってくるので、このまま待っていればよい。でも、駅舎のある1番ホーム側で写真を撮りたいな、と構内踏切を渡ってスタンバイ。

いったん備後落合方面へ引き上げた後、駅へ入選する。

ロッコ客車のお顔。だいぶ改造されているが、もとの客車の雰囲気がけっこう濃い。

おろち号が入ってきた!みんな一斉にカメラを向ける。

先頭に立つのはDE10形1000番台ディーゼル機関車、貨車の入れ替え用に貨物駅によくいるイメージだけど、最近は引退が進んでいる。
後ろには客車が2両、機関車側は控車扱いの普通の客車で、反対の先頭側は窓のないトロッコ列車になっている。

編成は下記の通り。

(←木次)DE10-1161 + スハフ12-801 + スハフ13-801(落合→)

さっきまで乗ってきた普通列車は微妙に移動し、おろち号と縦列停車。

写真を何枚か撮るが、意外とすぐに発車時間となってしまう。乗り込んで席を探す。

指定席券は1枚だが、普通の客車=控車(スハフ12)と、トロッコ客車(スハフ13)と、両方の車両に1席づつが確保されている。トロッコ列車は硬いベンチシートだし、雨が降ったら大変なので、避難用として普通の席の車両も用意されているというわけである。

ゆえに総定員はたったの64人で、機関車含めて3両編成での運行と考えると、かなり贅沢だ。

 

車内の様子

ロッコ車であるスハフ13-801。窓が取っ払われていて、とても開放感がある。

開放的なトロッコ車。

シートは写真のように、外向きベンチ席と、向かい合わせ4人掛けのボックス席がある。通常の列車の席配置とちょっと異なり、ABCDが横一列でなく、区画ごとに振られているのが特徴的。(観光列車でたまに見るパターンだ)

今回は往復で両方乗ることができたが、人と向かい合わせにならず、目の前に大パノラマが広がる外向きベンチ席のほうがおすすめかな。

ボックス席。ニス塗りの木製シート。ややくたびれを感じる。

外向きシート。3人が外(窓側)向きに、奥の1人がそこに対して横向きに座ることになる。

もっとも、席指定があるとはいえ、意外と乗り降りでの入れ替わりが激しく、また控え客車の方に乗る人もそれなりにいる。あえて立っている人も多い。結果として割と空いてる席があるので、ちょこちょこ移動しつつ、みんな自由に座っている感じだった。

 

この車両は客車だけれど、前方に運転席がついている。奥出雲おろち号は、いわゆる「ペンデルツーク」と呼ばれるシステムになっていて、備後落合行きでは客車の運転台で機関車を操作し、後押ししてもらう。

スハフ13-801のちいさな運転台。

機関車の付け替えが不要なので、機関車牽引列車の多い欧州なんかではよくある運転方式。一方日本だと、大井川鉄道井川線や観光トロッコ列車くらいにしか例がなく、だいぶ珍しい。私はこういうのが大好物で、そもそもおろち号に興味を持ったきっかけだ。

他の「ペンデルツーク」列車の例として大井川鉄道井川線。後ろについている機関車がすべての動力を担い、先頭の制御客車から操作ができる。

 

運転台は片隅に寄せられているので、車両の先頭までいって前方を眺めることもできる。これは楽しい!

先頭部。左側のこじんまりとした部屋が運転席だ。

しかも先頭の窓まで開く。そこ、開くんだ…。

まさか開くとはおもわず、乗り合わせた人が開けはじめてびっくり。

一方、トロッコ車両では無い方の控車、スハフ12-801の方は、普通の簡易リクライニングシートが並んでいる。観光列車らしい改造は特に無い。あくまで荒天時の緊急用と割り切った車両だろう。

控車は装飾もなく、「普通」だ。

かなり「ふつう」だが、とはいえ普通の客車列車自体が消えて久しいし、私も当時を知らない。マニアはむしろこちらで旅したくなるかもしれない。私も、帰りとなる木次行では乗り合わせた人たちに少し遠慮してしまい、こちらにいることが多かった。

客車端からは見た機関車。この景色がとても好き。

 

木次駅出雲三成駅

指定席に戻って発車を待つ。取ったときは、B席なので通路側か…と思っていたが、改めて座席表を確認すると外向きベンチシートの席だった。おかげで、前を向いて座っているだけでずっと大パノラマが広がるのだ。

本当に開放的だ。

発車まで時間もないし、大人しくしているつもりだったとが、ちょうどホームに販売カートが。地場の木次乳業がアイスや牛乳を売っているらしく、これは買っておかねば!と急いで買いに行く。夏の鉄道の旅といえば、新幹線であれ観光列車であれ、とにかくアイスというものだ。

思わず買ってしまう、駅弁ならぬ駅アイス。

しかし、発車時間の10時8分を過ぎても、なかなか出発する気配がない。

どうも今朝発生した山陰本線の遅れが響き、木次線の代行タクシーから乗り継ぐお客さんを待っているようだ。乗ってきた木次線は、接続する特急列車を待ってからの発車だったはず、でもだいぶ慌ただしく、乗り継ぎに失敗したのだろうか。それとも、もっと別の場所で混乱があり、どうしても間に合わなかったのか。

 

大変だなあ…とか考えながら、アイスが溶けそうなのでチマチマ食べながら待つ(おいしい)。結局24分遅れて、10時32分ごろの出発となった。

とかく待つしか無い。アイス溶けそうだし食べちゃおう。

 

列車は全席指定ながら各駅停車。本来は全く同じ時間帯に、普通列車出雲横田行きが走るのだが、奥出雲おろち号が走る日は運休となるようだ。先程の代行タクシー対応も見るに、土日と夏休みの木次線は奥出雲おろち号を中心に回っている感じがある。

窓から凄い勢いで風が入ってくる。テーブルがあるが、不用意にものをおいておくと飛んでいってしまいそうで、実際に軽いものは飛びますよと案内放送が入る。トンネルに入る瞬間気圧差で大きな風が吹き、隣の人の指定券はどこかへ飛ばされてしまった。

おかげさまで夏らしい晴天に恵まれた。トロッコ日和だ。

トンネル内では天井のランプが良い雰囲気。

トンネルの中では天井のランプが灯り、ひんやりとした空気も相まってなかなか良い雰囲気になる。トロッコ車両の真ん中には大蛇の飾りがあり、周りが暗くなると光っているのがよく見える。木次線で一番長い下久野トンネル(下久野出雲八代)で写真を撮りに来る人が沢山いた。

 

日登、下久野出雲八代と各駅に停車していく。歴史の有りそうな好ましい駅舎たちがよく見えるのも、トロッコ列車の良いところだ。

日登。いきなりこんな駅舎がのこっているなんて!と思ったが、木次線では普通のようだ。

下久野駅。駅構内でシソを育てている。

出雲八代。駅舎の形というのはある種制式化されているのだけれど、それでもウン十年と使っていれば個性が出てきて、見比べるのも楽しい。

どんどん緑が増えてきて、元気の良すぎる夏の木々の枝が、威勢よくバチバチと車体を前からひっぱたく。窓に近寄りすぎたら一発洗礼を食らいそうだ。そして景色が開けると、田畑や山々、青空が広がり、赤褐色の石州瓦で彩らえた民家が爽やかな景色を引き立てる。

パチンパチンパチンパチン、ザッザッザッザッ、と、前の方から木々が車体の枠をひっぱたいてくる。

山陰らしい石州瓦。赤でも黒でも、なめらかな光沢が夏に映える。

不思議だったのは、意外とさっさと降りてしまう人が多かったことだ。まだ木次を出たばかりなのに、だんだんと席が空き始める。

降りるお客さんに対しては、車掌さんはトロッコ客車から身を乗り出して切符拝見。

この先の出雲三成で木次行の普通列車と行き違うが、それで木次へ戻るのだろうか、案外こういう「チョイ乗り」もあるのだなあ。まあこちらとしては、席が空いてくれるので、いろいろ移動して座ってみたりしていた。

出雲三成駅では団体ツアーが乗ってきて、先程空いた席を席をまた埋めていく。そうか、出雲三成からは予めツアー会社が抑えていたとすれば、木次~出雲三成間は席が空いていることになる。

そうか!さっき降りてしまった人たちは、その空き枠を狙って乗っていたのだな。

出雲三成駅。列車交換もできる大きい駅で、奥出雲町内では横田と並ぶ規模の街だ。

 

仁多牛べんとう

出雲三成ではお弁当屋さんが乗り込んでくる。「仁多牛べんとう」という肉系駅弁の車内販売が始まった。

これは取り置きができるので前日に予約しておいたが、その際に「三成駅停車中に受け取ってくださいね」と言われていた。この列車は遅れているし、すぐに発車してしまうだろう。買いそびれたらこの後ずっと飯抜きだし、それ以上に申し訳ないぞ、と、早速受け取りに行く。

しかし列車が走り出しても、そのまま販売員さんが乗って弁当を配っていたので、焦らず席で待っていてよかったようだ。1000円を渡し、弁当を手に入れた。

車内販売がはじまる。

仁多牛べんとうは…見た目は牛丼で、実際に牛丼だ。

しかしなんというか、夏に飲む冷えた水のごとく体に自然に入ってくる感じが凄い。うまく例えられないのだけれど、味はそう濃くなく、しかしこのうまみは素材の味というやつか。

美味しいものを食べると目を細めてしまう癖がある。このとき、この夏一番の糸目だったと思う。

なんというか、牛丼というもののポテンシャルは実はすごく高いのだなと思い知らされ、いや、とにかくうめえな?と夢中で食べてしまう。列車に乗りながら、風に当たりながら食べる駅弁というものほど最高もないと思うが、それが美味しければもう天国だ。文章にまとまりが無くなってしまった。

すべての素材が地元産らしく、究極の地産地消。ちなみに、仁多はこのあたりの郡名で、また平成の大合併で奥出雲町が出来るまで、三成を中心とした仁多郡仁多町が存在した。

 

出雲三成出雲坂根

奥出雲おろち号では、予約弁当販売が各駅である。木次では鯖寿司の弁当とか、亀嵩のそば弁当とか。実はそば弁当も気になっていたのだが、あいにく蕎麦屋さんが定休日の火曜日に乗ってしまったので食べられず。うー、タイミングが悪い…。まだ全然お腹に余裕がある。

亀嵩駅。駅前二蕎麦屋さんがありお弁当を出している…が火曜日はお休みだ。

亀嵩に停車する。砂の器で有名、という知識だけはあるが、映画も本も読んだことはない。しかし雰囲気のある駅だ。

お次は出雲横田。ここはかなり大きな街で、駅前にいい感じの旅館が多くある様子。いつか泊りがけで、じっくり歩きたい街。

出雲横田駅は、注連縄が改札口にある。重厚な木造駅舎とよく似合っている。

この先はがくっと列車本数が減る。奥出雲おろち号を入れても1日4往復、それが走らない普段の平日は1日3往復しかない。

今年に入り公表された、JR西日本の閑散区間別営業成績でも、出雲横田から備後落合は営業係数6596…つまり100円の運賃収入を得るのに6596円の支出だったという、わりととんでもない赤字区間だ。(しかもコロナ前、2017-19年の平均値)

しかし、それだけ費用がかかるのも納得の、物凄いところを通っていくのだ。いよいよ木次線のハイライト区間八川駅出雲坂根駅と進み、その先は有名な三段スイッチバックで山に挑む。

八川駅。しかしこのスタイルの駅舎が多く残る木次線、改めてすごいな。

目前には大きな山が迫る。

沿線の駐車場から子供たちが手を降ってくれていたりと、観光列車の楽しい瞬間もありつつ、列車はまた夏の奥出雲を走る。列車の走る谷はだんだんと幅が細くなり、ここが詰まったところに出雲坂根駅スイッチバックの出発駅だ。

と、高まる期待を前に、坂根の少し前手前で列車は止まってしまった。

 

倒木発生!

なんと倒木が発生したらしい。

車両前方には人だかりができていて、その隙間から見せてもらうと、しっかりと木が一本横たわっている。メチャクチャ太いというわけでも無いが、しかし、力付くで動かしたり折ったりするのは容易そうではない。

この時点で12時頃。遅れがなければ三段スイッチバックを走行中のはずだが、またまた遅れてしまいそうだ。

あちゃあ。

この区間、本数が少ないゆえ、始発列車のあとは奥出雲おろち号まで列車がない。その間に木が倒れてきてしまったのだろう。

 

しかしどうするか。普通列車に使われるキハ120には、こういう自体に備えてノコギリが積まれているらしいが、奥出雲おろち号にはその装備がない。車掌さんより「いまから乗務員で押して動かしてみます!」と放送があり拍手と激励が起こるも、結局動かせず。

こう、昔の話だとこういうとき、乗客総出で押して動かしたりするよな、とも思ったが、まあ令和の御代にはコンプラ云々でそういうわけにも…である。

何事かと人が少し集まってきた。

下の方には工事現場があり、そこからなんとかノコギリが借りられないか、という話になる。心配して見に来た人もいるが、下の道と線路とで高低差が大きく、声が届かない。出雲三成から乗ってきたツアーの添乗員さんも、宿に連絡を入れたりと大変そうだ。

 

やることがないので、車内を見て回ったり、乗り合わせた人と「どうなるんでしょうね~これ」と話したり、外のトンボを撮影したりしてぼーーっと過ごす。トラブルはもう待つしかない。

トンボ。オープンなトロッコ客車だから、こういった虫があっさり車内に入ってきたりする。

停車から30分以上過ぎた頃。なんとか借りられたノコギリで頑張る乗務員さんの姿が!

結局、下にある物産館に電話し、さらに隣の工事現場に頼んで、少し先にある踏切を経由してノコギリを借りられたようだ。2人がかりで倒木の2箇所を切断する。前の方から歓声があがり、どうやら無事切断できたらしい。戻ってきた車掌さんたちを、乗客みんなが「本当にお疲れ様です」と拍手で労う。

 

結局、12時42分に再出発。それからすぐ、出雲坂根駅に到着した。

にわかに活気づく出雲坂根駅

先程の工事現場の人がノコギリを回収しに来ている様子を眺めつつ、駅ホームに降りてみる。列車はなにせ1時間も遅れているので、いつ発車するのか分からないので程々に…と思っていたが、かなりの人が駅前の方へ行っていた。物販などがあったのかもしれず、とどまってしまったのが少し惜しい。

実のところ、ここで進行方向が変わるので、駅にはそれなりに長く停車していた。

 

3段スイッチバック

ここからは、木次線名物の3段スイッチバック区間だ。先頭の展望スペースに人が集まり始める。出雲坂根駅で先程までとは逆方向に出発し、さっき通ってきた線路とは分かれ、山側へ。

出雲坂根駅の先は行き止まりで、線路はサビつき緑に飲まれている。

先程までとは逆に、機関車を先頭に進行。右側にカーブで消えていくのが、出雲坂根駅到着時に通った線路。

人工物は線路くらいしか見えないような緑の中をしばらく走る。すると唐突に屋根が見えてきて、列車はそのなかへ中へ突っ込んでいく。「折返線」と呼ばれているポイントで、ここでまた進行方向を変える。

この辺は冬場かなり雪が降るから、折返線が雪で機能しなくなるのを防ぐための屋根だろう。雪国のスイッチバック駅だと、例えば旧信越本線二本木駅(現在はえちごトキめき鉄道)なんかでも見たことがある。

屋根の中へ吸い込まれる列車。

中はこんな感じ。転轍機や信号施設などを守るのだろうか。

そういえば、ホームのない折返線、運転士はどうやって移動しているんだ?と思っていた。

実際みたところ、一旦止まった列車の中を、機関車の運転台から客車の簡易運転台まで、客車の中を通って移動するようだ。しかし、客車へたどり着くためには、機関車のキャブから一旦降り、外に出なければならない。一旦線路際に降りるのか、車体側面の通路を渡るのかは分からないが、しかしこれは結構大変そうだ。

運転士の移動のため、車掌により機関車とつながる貫通扉が開けられた。

 

再びトロッコ列車を先頭に発車し、列車はさらに高度を上げていく。ずいぶん下の方、木々の間に赤い屋根の建物が見え、あれが出雲坂根駅か。

出雲坂根駅舎が見えるのは、ほんの一瞬だけだ。写真を見返してみて初めて、ホームで手を振ってくれている人がいたことに気づく。

またえらく登ってきたものだ…と思っていると、車掌さんからちょっと横すみません…といわれ、謝って横に避ける。ちょうど立っていた窓枠のすぐ横に、放送設備やドアスイッチなどが設置されていて、ここから車内放送とドア開閉を行っているのだ。

写真左側の箱が「車掌スイッチ」で、車体両側で計2箇所設置されている。

そのあとすぐに「おろちループ」の車内放送が入る。山の中に突如として、白い巨大なループ橋が現れ、そして真っ赤なトラス橋が目に飛び込んでくる。みんな一斉にスマホやカメラを向けるが、夏の盛りで木々が伸び切っているのか、カメラにスッキリと全体を収めるのが案外難しい。

木々のあいだにとぐろを巻いているようで、だから「おろちループ」なのか?

鮮烈な赤さのトラス橋。

ここを通るのは広島市雲南市を結ぶ国道314号線であり、1992年に開通。鉄道が2回のスイッチバックで稼いだ高度を、道路はループ線と巨大橋を駆使して登ってくる。

しかし木次線が廃止されなかった理由として、並行道路の未整備、というのがあったらしいが、かなり立派な道路ができてしまったのだなあ…。

 

三井野原→備後落合

高度を上げきった列車は、民宿やスキーリフトの中を走って三井野原に到着する。ここで先程の団体ツアー客が降りていった。

三井野原駅。駅前には団体ツアーのバスが待っていた。

三井野原はスキー場の駅だ。Wikipediaを眺めると、そもそも駅を誘致するためにスキー場を開設したらしい。かつてはスキー列車が走ったりしたようだけれど、流石に今は列車でスキーに来る人は稀だろうか。そもそも、木次線が冬季運休になってしまうことが多い。

スキー旅館が立ち並ぶ。冬場は雪がすごいのだろう。

三井野原スキー場はわりと広く、いくつかリフトやロープ塔(滑走式リフト、ロープトゥのことか)があるけれど、それぞれの運営は細かく分かれている。

町営スキー場や運営する旅館ごとに料金も別であり、共通券もなく、実質的にはロコスキー場の集合体という、結構珍しいシステムだ。スノースポーツ好きに言うと、共通券のない志賀高原みたいな感じ(結局わかりづらい)。

自然に飲まれるスキーリフト。別の場所にきれいなペアリフトもあったけれど、そちらももう動かしていないようだ。

もっとも、昨シーズン動いていたのはロープトゥ1箇所だけだったらしく、車窓から見えた立派なチェアリフトも運行をやめてしまっている。このへんのスキーヤーやボーダーは、今はどこで滑っているんだろうか。

 

三井野原を出ると、線路敷までも緑化度合いがすごいことになってきた。ホントに現役の鉄道線だろうか?島根-広島県境は三井野原駅をでてすぐのところにあったようで、意識しないうちに、すでに広島県内にいる。

写真のヒストグラム見たら緑だけすごいことになってそうだ。

油木駅、ゆき駅、雪がすごそうである。(???) 駅舎は新し目のプレハブだが、駅名標は古いものが残されている。

廃線敷を利用した散策路」とキャプションをつけても違和感がない。

ちょっと不安になる鉄橋。いやあトロッコらしいではないか。

木次線のハイライト区間出雲坂根三井野原、と思っていたが、その先備後落合までの区間こそ「本気」のローカル線区間だ。むしろこの区間こそ乗らなくては、前面展望を楽しまなくては…と、三段スイッチバック区間を過ぎて、随分落ち着いた車内で思う。いやまあ、一人でじっくり味わえて嬉しいのだけれど。

油木駅に止まってから、しばらく走って終点・備後落合へ。

 

備後落合駅

だんだんと右手から線路が近づいてきて、これは芸備線か、と思っているとカーブの先で線路がいくつもに分岐し、とても大きな駅(木次線比)が現れた。使われてはいなそうだが、転車台まである。

山中の巨大ターミナル、備後落合駅へ。芸備線と合流する。

古びた転車台が右手に見えた。

ホームには制服を着た駅員さんがいる。あれ、ここ無人駅では?と思いきや、この人はボランティアらしい。駅では10人以上が待っているが、一体どこから来たんだろう?一本前の列車は木次線芸備線も午前9時台なので、さすがに車で来たのかな。

13時39分、備後落合着。予定通りなら12時36分には着いていたのだが…。

 

先程手を降ってくれたボランティアさんが駅を案内してくれる、と聞いていて楽しみにしていたが、流石に1時間遅れでその余裕はなさそうだ。「準備でき次第すぐの発車となりますので、折り返し乗車のお客様はそのままお乗りになってお待ち下さい」と案内放送が入る。

さっと降りてパシャリ。それにしても広い構内だ。

せっかく来たのに車内待機というのも悲しいが、しかし置いていかれたらもっと悲劇である。だいいち倒木はどうしようもない事情だし、それを地元の方の協力で借りられたノコギリで乗務員さんが切り倒して、今こうしてちゃんと動いているだけでも、ありがたいことだし凄いんだと思おう。

それでも、一瞬だけ降りてみた。地味に人生初の広島県着地である。

再び車内へ戻り、駅構内を観察。芸備線ホーム、超ローカル区間なのに、上屋のサインシステムは都会的な雰囲気で、何だか可笑しい。

そそくさと車内に戻り待つ。13時45分、6分ほどで折り返しの準備を済ませ、おろち号はすぐに発車してしまった。これも遅れがなければ12時57分発であった。

すぐにさようなら…。駅に残る人は、このあとどうするんだろう。

 

備後落合→木次

先程と逆回しで景色が流れていく。トロッコ車は今度は最後尾になるので、先頭だった落合行ほど展望スペースに人気はなく、ちょくちょく見に行っては写真を撮ったりして過ごす。

坂根まで戻ってきた。列車がいつ発車するのが分からず、私は精々機関車の写真を撮るのが精一杯だ。とはいえ結構、駅舎の方へ行っているひとも多かった。

ふたたびスイッチバックを下り、出雲坂根でも準備が終わり、外にでていた乗客が戻り次第、すぐに発車してしまう。木次行のおろち号は、交換待ちも兼ねて長時間停車が設定されているのだけれど、このへんも全部削って飛ばしていく。長時間停車で駅の周りを見て回るのはローカル線観光列車の楽しみの一つ…だけれど、まあ今日は仕方ないか。

 

車掌さんが、乗っている子供に記念カードを配り始めた。ある駅で、おじいちゃんと一緒に列車を見に来た子供が待っていた。車掌さんはその子にも記念カードを渡していく。

「孫を載せたかったんだけど、指定がとれなかったよ」と会話が聞こえた。やはり人気列車だ。

帰りの指定席はボックス席で、窓側だが進行方向後ろ向き。それは良いとしても、グループがすでに固まって机を使っている。

これはちょっと座りづらいな…と、ブラブラしたり開いている席に座ったりしていたが、結局控え客車の方で過ごすことが多かった。まあ、それ以上に、備後落合行きで濃厚な乗車体験をしたから、ちょっと「トロッコ疲れ」みたいなものがでてきているのかも。

シート回転で思い切りが足りずにひっかかり、車掌さんに「大丈夫ですか?」と声をかけられる直前の写真。

やや苦労して簡易リクライニングシートを回転させ、ぼーっとすわる。リクライニングとはいえ古いものなので、角度はあまり思い通りにならない。とはいえ、トロッコ車の木製ベンチシートに比べれば遥かに座り心地は良い。

控車側だけ切り取ると完全に「ディーゼル機関車が引く客車普通列車」である。

デッキ付近。国鉄が残っている。

まったくふつうの客車の旅、これはこれで、令和の今ではとても得難い経験だ…。と思いながら、リラックス状態になり少しウトウト。

 

出雲横田では回送列車とすれ違う。どうも奥出雲おろち号が遅れたので、備後落合14時台発の普通列車が運休となり、タクシー代行をしているようだ。区間運転のため送り込みで来たのだろうか?

回送列車とすれ違い。かなりダイヤが混乱しているよう。

出雲三成でも備後落合ゆきと交換。本当はこの列車を待つために20分間止まる予定で、逆に普通列車を待たせていて、すぐの発車。

それでも待っていた地元の人たちが、笑顔で手を振ってくれた。きっと物販なども準備していたろうに…。こうなると、またいつか来なくては、という気持ちが強まる。

今度は真っ赤なキハ120と交換。タラコ色とか首都圏色とか呼ばれている国鉄時代からのカラーリングだが、コスト削減のため、JR西日本は鋼製車体のディーゼルカーをとりあえずこの色に塗っている。

して、ここまで飛ばしまくった結果、宍道行き列車の発車を待たせて木次で接続することになったようだ。その宍道行き列車も、山陰線が接続待ちをするらしい。なんと、最大1時間の遅れを木次駅着10分遅れまで戻してしまい、更にすべて予定通りの接続をとるというのだ。

どうも、特急やくもへの乗り継ぎが厳しい人がいたようで、乗り継ぐ人は車掌にお声がけください、と車内放送をしていた。遅れを取り戻し、調整もうまく行ったのだろう。

いやしかし凄いな。私もこのあとは「サンライズ出雲」で東京へ向かうつもりだったから、最悪ケースよりも随分余裕ができた。本当にありがとうございます。

帰りはちょっと曇り空。列車の最高速度は45km/hで、徐行区間も数多いが、それでも急ぎ足で列車は駆ける。

ふたたび下久野トンネル。トンネル出口の光がどんどん遠ざかる。

遮断器と警報機のない第4種踏切。ああ、ローカル線…。

結局あっという間に木次駅へ。乗り換え列車もすぐに発車してしまうので、足早に隣のホーム、宍道行き列車に乗り換える。

素晴らしい景色の一方で、運悪く立て続けのトラブルのたびに遅れが積み重なり、そしてそれを取り戻すように走る。最後は慌ただしくなってしまったが、ともあれ無事木次まで帰ってこれた。いろいろあっても、無事着いてしまえば楽しい旅でした。乗り換えて、出雲市駅まで戻りましょうか。

乗り換えを待たせているので、手早く隣のホームへ移動。そういえば車内に水筒を忘れた人がいたらしいけど、無事手元に戻ったのだろうか?

 

奥出雲おろち号は、2024年度をもって運行終了が決定している。

後継に、山陰線の観光列車「あめつち」が来るようだけれど、三段スイッチバックを含む出雲横田~備後落合間は運行しない。流石に急勾配で厳しいのか、しかしあの区間こそ魅力的なのに…。と、乗る前は思っていたのだけれど、木次~出雲横田駅だけでも、沿線風景はとても魅力的に思う。

夏の空と緑に映える石州瓦の民家、急流にかかる鉄橋、あるいは古く魅力ある駅舎…という風景は忘れられそうにない。

発車する木次行列車の中からパシャリ。さよなら、おろち号

木次線、なかなか関東からだと乗りにくく、運行終了までに「おろち号」もう一度!は厳しいかもしれない。

しかしまた、今回あまり出来なかった沿線めぐりに訪れたいなと思う。亀嵩の蕎麦とか、泊まれる恐竜博物館とか、まだ見ていないものが沢山あるのだ。「おろち号」が去っても、まだ魅力ある木次線としてなんとか残ってくれること、微力ながら応援したい。

SL銀河の「帰り路」を追う【SL銀河/回8533D・2022年初夏】

釜石線を走るSL銀河のチケットが取れ、日曜運行の片道全区間を乗ることができた。朝に釜石駅を出発し、花巻駅には15時半前に到着。このあとはSL銀河の回送を追いかけつつ、盛岡まで向かうことにしたい。

SLについていた運行表(右)。ハキ→モリ の「後回8533D」が今回とりあげる回送

この「回送」をわざわざ追いかけようと思うのは、このSL銀河の回送方式がちょっと独特だからだ。

 

SL銀河の車庫は盛岡にあるが、花巻に到着した時点で、機関車は盛岡とは反対側(一ノ関/仙台方面)を向いている。普通ここから盛岡方面へ回送となると、機関車の位置を付け替えたり、別の機関車を持ってきたり…という作業が必要となる。

一方SL銀河の場合は、そのまま機関車を後ろにつけたまま客車が走り出していく。SL銀河の客車は、実はディーゼルカーの改造であり、自走可能…というのは趣味界隈ではそれなりに有名な話。「客車に引っ張られて走る蒸気機関車」は、多分ここだけ…だと思うので、一度見てみたかったのだ。

駅裏から見送る。花巻電鉄の保存電車を見に行こうとして諦めました。

花巻駅周辺をうろついていると、大きな汽笛が聞こえてきた。駅裏手にいる間に、SL銀河はバック進行で発車していってしまう。しまった。

 

花巻空港駅にて

自分も一旦駅に戻り、15時50分の盛岡行普通電車に乗り込む。

この空間好き。

東北本線を走る701系は、ワンマン運転のときは後ろ側の窓際まで近づける。そこにスタンバイし、次の停車駅・花巻空港に到着。

花巻空港駅へ。機関車がいた!

 

ホームを挟んでお隣、回送のSL銀河が止まっています。ホームにはカメラを持つ人が数人、機関車の近くでは乗務員さんが歓談中。

3~4人のギャラリーが見守ります。

一時期は空港アクセス手段がなかった花巻空港駅。今はアクセスバスが経由します。

普通電車なのですぐに発車してしまいます。そのまま先頭に立つ客車を見送り…。

このあとSL銀河回送は、日詰でも長時間停車する。適当な駅で降りて、客車が先頭になって本線を走るシーンを見ておいても良かったのですが、観光の欲求に抗えずとりあえずそのまま盛岡へ。

冷麺食べたかったし…

展望室とか登りたいし。

地下の食堂で冷麺を食べたり、公共施設の展望台に登ったりと、盛岡駅周辺でやりたかったことを済ませて、入場券を買って再び改札内へ。

 

盛岡駅到着シーン

盛岡には17時半頃にSLの回送が到着するようだ。7番線につくので、お隣田沢湖線のホームで待ち構える。

SLが目立たず、普通のディーゼル列車みたいだ。

ホーム先方からライトが見え、ゆっくりゆっくりとSL銀河が入線してきた。ホームにもギャラリーが数人程度。マニアらしき、動画を撮っている人が多いかな。

SLが後ろにくっついて、客車が自走してくる…のは、見た目にユーモラスさ、物珍しさがあるかな、と思っていたけど、案外そうでもない。SLが目立たないのもあるし、前日に釜石で客車だけ動くシーンをみていたからかも。どうも「そういうもの」として見れてしまう。沿線で走る姿を、こうサイドから見ればまた違ったかな?

今週末もお疲れ様でした。

到着後、蒸気機関車と旅客車はさっさと切り離されてしまう。いつのまに。

気づけば切り離しが終わっていた

ただのキハ143になり、回送。このあとは見かけず。

まず旅客車が青森方面へ回送されてゆく。こちらは盛岡駅の青森方にある車両基地に入庫する。ついで、蒸気機関車もバック運転で青森方のホーム端へ。

跨線橋より。ホームギリギリに停車。

駅の外からもよく見えるのだ

改札を出て、跨線橋を渡り駅裏のバス駐車場まで歩く。跨線橋にも駅裏にも、SLを眺めに来たらしき人がちょくちょくいる。改札外は特に家族連れが多く賑やかで、マニアがまばらにいるだけだったホーム上とは対照的。地元のちょっとした名物、鉄道好きの子の週末の楽しみ…として根付いている感じがした。

SL銀河、盛岡は回送でしか走らないのだけど、それでも週末にSLがいる…というのはなんだか羨ましいし、存在感がある。

 

駅裏で見ていたら、貨物列車がやってきた。スピードを落とし、ちょうど蒸気機関車に被る形で、大きな音をたてて停車。

大先輩と後輩

今の東北本線の主役は貨物列車なんだなぁ…という堂々たる長編成で、こうなるともう蒸気機関車は見えない。ただ、停車はほんの少しで、すぐ動き出した。

 

転車台と入庫
駅裏…盛岡駅西口から徒歩5分ほど歩くと、かつての車両基地の隅に転車台と機関庫が整備されている。ここ、見学ができるらしいと情報を得ていたので、そちらにも行ってみることにした。

あまり積極的にアピールはされていないようだが、入り口には駐車場がある旨、カンバンが立っている。

(矢印)このあたりにある。右下が盛岡駅

なんだか不安になる入り口だが、駐車場の案内が出ている。

ここ、行っていいのか?と思ったが、駐車場の案内が出ている。坂を登ってみるとちゃんと見学用通路が整備されていて、鉄道150年の横断幕もかかっていた。

坂を登ってみると大きな機関庫が。三角屋根レンガ風の意匠。

そして転車台

渋いねえ

青と黄色に彩られた釜石駅の転車台と比べると、かなりシックな雰囲気。個人的にはこちらのほうが好き。

SL銀河関連の転車台、2様。左:釜石駅、右:盛岡駅

駅隣接のビル・マリオスの展望台のにあった古そうな写真にかつての転車台が写っていた(右側写真)。今も、建物配置から転車台の位置は変わっていなそうだ(左側写真)。機関庫に隠れているけれど。

ずいぶん古そうだが、国鉄時代からここにあったものらしい。かつては盛岡機関区の転車台で、SLの運行開始に合わせて放置されていた転車台を復活させ、ついでに機関庫も建設したようだ。

今の盛岡の車両基地は駅を挟んで青森方にあるので、蒸気機関車だけこちらで休むことになる。

転車台脇にいた車両。SLを移動させるための機械かな?

三脚持ちで動画撮影をスタンバイしているマニヤ、自転車で来ている親子連れなど、ぱらぱらと人が集まり始める。多くても10人前後だった気がする。

たまたま転車台を見に来た人に「もうすぐSLが来るんですか?」と聞かれ「詳しくはわかんなくて…ネットの情報だとあと20分後くらいみたいですね」と話したりしながら過ごす。どうも盛岡市内でも、知る人ぞ知る…というポジションか。あるいは毎週のこと、日常として溶け込んでいるのか。

 

18時を回った頃、遠くから汽笛が聞こえてきて、ドラフト音とともに機関車がゆっくりやってきた。

ゆっくり、ゆっくりと…

転車台へ!!!!

何度か停止しながら、蒸気機関車が転車台に乗る。そして回転開始!!

夕日がボディを照らす

機関庫の位置関係的にそこまで回転しない。時計だと2時分くらいだろう。

そのままバックし、機関庫にお尻を突っ込んで、整備が始まる。整備は18時15分過ぎ頃まで続き、そして機関庫へ戻っていった。

今週末もお疲れ様でした。

入庫。新幹線と絡めて撮ろうとして諦めた図。

いやあ、良いものを見れた。

そのまま盛岡駅に戻り、お土産を物色してから18時50分の新幹線で東京へ戻りました。それでも東京駅にも21時代には着くので、時間的に問題がなさそうならこの「回送&入庫見学」はとてもオススメしたいところ。

ここまで立派な機関庫も作ったんだし、SL銀河、車両リニューアルして運行継続しないかな~~。

青い銀河に乗ってきた【釜石線 快速SL銀河・2022年初夏】

釜石線を走るSL列車・SL銀河が運行終了、というニュースが出たのが去年。気になっていたこの列車、結局このまま乗りに行けないのは悲しいな…と思うも冬場は運行がなく。

6月に入って、そろそろ夏だし、どうかな?とえきねっとで事前申込をしたら、釜石から花巻の片道、後ろ向きだけど、窓側がとれてしまった。行くしかない!

とれちゃった

SL銀河の運行は、土曜日に花巻→釜石、日曜日に釜石→花巻、というのが基本。できれば往復で乗りたいのがオタクの性…、土曜日の便も取れないかな?とえきねっとを見つつセルフキャンセル待ちを粘るも、取れず。仕方なし。

別ルートで前日入りし、釜石駅前のホテルフォルクローロ三陸釜石に泊まって備えることとしました。

 

釜石駅:前日

前日、三陸鉄道宮古から釜石に移動。列車が釜石駅に近づくと、青色に塗られた転車台や待機する機関車が見えてきます。

今日は花巻から釜石まで走ってきていて、その後の整備中なのでしょう。

整備中の機関車。機関庫が星空模様で目をひきます。(列車内より)

客車は切り離されて、ホームからも見える位置で清掃中でした。

その後16時15~20分頃、客車のみ移動し、駅ホームにとどめ置かれます。

三鉄・釜石線列車と顔合わせ

客車は1番線につけていて、泊まったホテルフォルクローロ三陸釜石の部屋からも思いっきり見えました。今日はここで銀河と一夜を共にします、おやすみ。

カーテン開ければすぐそこに。
フォルクローロ、予約したシングルルームはすべて線路と反対側。そんなこと知らずに「線路のみえる部屋で」とリクエストをしてしまったのですが、なんと特別にアップグレード対応。ありがたや……!

こんな配置で釜石に停泊。フォルクローロの展望デッキより。

 

 

釜石駅:当日

翌朝。朝風呂上がりにホテルの展望デッキに出てみたら、機関車が動きそう!カメラを持って駅横、「シープラザ釜石」裏の通路へ向かいます。ここからは駅構内がよく見えるのです。

連結作業は8時40分~50分頃に行われるようです。蒸気機関車はもう動き始めていました。誘導されながらゆっくりゆっくり、バック進行で客車の前へ。

多くのギャラリーが見守るなか、ゆっくりとSLがバックしてきた。

そして連結!!

これで準備万端です。スッキリ編成写真。

今日の編成が完成しました。この瞬間を見ようと、傘が必要なほどの雨の中もそれなりに人が集まり、写真や動画を撮っています。乗る前からさっそく楽しいぞ!

 

 

釜石駅は、改札が列車発車の15~30分前に始まるシステム。

SL銀河は9:57分発なので、27分から改札だよ、と駅員さん。じゃあ20分ごろに行って待ってるかあ、と、連結作業を眺めたあと部屋へ戻り、のんびりチェックアウトして駅についたら、既にすごい人だかり。

あふれる旅行者の中、車内で売るお弁当の宣伝や、途中停車する遠野駅の観光案内が飛び交います。フォルクローロでニューデイズの割引券をもらいましたが、ちょっと混んでてそれどころでない。

もう並び始めてるぞ

いやいや、全車指定席なので急ぐ必要もないでしょう… ということもなく。お弁当が個数限定だったり、車内にあるプラネタリウム(!)の整理券数限られていたりするのだ。プラネタリウムはどうしても見たかったので、形成された列に加わる。

 

時間になり、改札が始まった。きっぷを見せて駅構内へ… あれ、隣の窓から駅員さんが呼んでいる、と思ったら袋を渡された。

たべないでください

「記念品の石炭です」そんなことある!? 早速面白いプレゼントです。袋には入っていますが、ズボンのポケットに入れっぱなしにしておいたら、空いた穴から粉が出てきてしまいました。とりあえず手持ちのジップロックに入れて保管。

 

ホームはもう結構な人だかり。

とりあえず自分の席へ向かって大きな荷物を置き、そのあと無事に車内プラネタリウムの整理券を確保して一安心。

早速先頭では撮影タイム。

SL銀河は機関車1両と客車4両で走り、私は3号車。折角なので、一通り車内や車外を見て回ることにします。

 

 

「SL銀河」編成概観

今日の花巻行、編成は下記のとおりです。

C58-239キハ142-701キサハ144-702キサハ144-701キハ143-701

 

列車の主役たる蒸気機関車、C58-239。3動輪のテンダー機関車です。青色のナンバープレートが特徴的で良いですね。

客車やヘッドマークの青金カラーと合わせたようなナンバープレート、素敵。

もともと盛岡市内の公園に置かれていたものを、走れる状態までレストアたそうで、よくやったものだな~と思います。運転台の横には7月らしく、笹の葉と短冊。そうか、七夕かあ。「銀河」だけになかなか良いチョイスですし、この列車が今後も運行されますように…とお願いも書かれていて、これはぜひ叶えてほしいな。

サイドビュウ

たくさんの配管がホンモノの証。

客車はグラデーションがかった青色に、黄色と金で宮沢賢治銀河鉄道の夜」モチーフの柄があしらわれた4両編成。

じつは自走できる

金色のエンブレムと星座のモチーフが美しい。

 

車内は木の多く暖かいレトロ調で、観光列車だなあ~~という雰囲気。窓に合わせてボックスシートが並ぶのは「汽車旅」の雰囲気を盛り上げる。

1号車にはプラネタリウム、4号車には大きなソファと売店スペースがあるので、実際にお客さんが乗れるのは3両編成分くらいだろうか。各所には宮沢賢治にまつわる展示もされていて、結構見応えがある。

ソファスペース。革張りだ!いわゆる「ロングシート」なのだが、ここまで優雅なロングシートがあるだろうか。

売店。置かれているナンバープレート「D51 498」は高崎で動態保存されてる機関車ですね。釜石線を走ったことがあります。

コンセプトアートの展示もあり、見入ってしまいます。冊子化されないかな、こういうの。

南部鉄器の鉄瓶もSL銀河カラー。こんな色付けもできるんですね。

車端部はこんな感じでギャラリーになっています。

 

ボックスシートは2人がけが向かい合わせで、4人定員。なんというか結構な狭さだし、窓側は暖房の吹き出し口?があって脚にぶつかる。ちょっと窮屈だ。でも、これ昔地元で走ってた115系電車とか、こういう狭さだったな。その辺も含めて汽車旅らしさ、と割り切って乗ろう。

窓上のステンドグラスがイカ

あしもとはかなり狭い。なんか出っ張ってるし。

花巻ゆきは数字問わずD席が進行方向になるが、僕が予約したのはA席で後ろ向きになる。ボックス席を陸中大橋までは2人で、その先は3人で乗り合わせての旅となったが、D席に結局人は来なかった。進行方向窓側、その席が一番アタリなのに!

 

指定席ではない部分にもいくつか椅子があり、こっちに座っている人もいた。なにせボックスシートに大人4人では結構ギュウギュウ詰めになるし、ある種避難所の役割もあるのか。

ソファスペース

 

ちなみに客車、というか、正確にはこれは無動力の客車ではなく、自走できるディーゼルカー。JRも一応客車とは案内せず「旅客車」と呼んでいる。

しっかり運転席がついている

のりばの「PDC」は、Passenger Diesel Carの略かな。客車改造気動車がこう呼ばれます。

もともと北海道の学園都市線札沼線)などで走っていた車両で、キハ141という形式。SL銀河用に改造されたので、今はキハ141-700番台を名乗っている。北海道にいたからか窓も2重窓、で、最初内窓も締めてたので、あれ?なんかヘン?と違和感。(とりあえず内窓だけ開けた)

2人でがっちり

ディーゼルカーなのは、釜石線の峠越えがめちゃくちゃ急勾配で、今の安全基準や出力を考えると、SLだけじゃ登れないから、らしい。SL銀河以前に運転されていた臨時SL列車では、ディーゼル機関車を2両余計に繋いでなんとか走っていたとか、そういうレベルの山岳路線なのだ。

 

もっとも、もともとキハ141系自体が50系客車という客車を改造したモノなので、機関車に引かれる姿は違和感がない、のかも。真岡鐵道とか50系客車のSL列車があるし。

まんなかの「キサハ」はエンジンなし。客車にエンジンを付けて改造した気動車のうちエンジンがないグループ、という、客車なんだか気動車なんだか…

ただ、ディーゼルカーなので結構エンジンがうるさく、蒸気機関車の音がなかなか聞こえてこない、というのはちょっと残念かもしれない。汽笛はよく聞こえるのだけれど、シュッシュッというドラフト音まではあまり分からなかった。

 

 

釜石→花巻

9時57分、雨の中。お見送りとともに駅を出た汽車は、細長い釜石の市街地に沿って進む。手を降ってくれる人が本当に多い。踏切まちの人、庭先の人、駅でカメラを構えていた人、家の窓から手だけを出してる人… なんというか、愛されているなあと、観光列車にのっていてほっこりする瞬間。

 

市街地の駅はすべて通過するが、見に来ている人がちらほらいたり。

小佐野・松倉・洞泉と、ここまでの駅はすべて通過して、市街地が終わり山が近くなってくるともうすぐ陸中大橋

緑に映えるトラス橋

進行方向左手を御覧ください、と言われて待ち構えていると、はるか上に大きな赤い鉄橋、鬼ヶ沢橋梁が見える。あそこに線路が通っていて、ここからが名高い釜石線オメガループ。これからあの橋まで、ヘアピンの形に180度曲がった線路で高度を稼いで登っていくのだ。よくやるよな…。

 

陸中大橋駅には10時29分着。11分ほど停車する。

際の際まで山に近づいた

駅自体はとても簡素で、駅舎もなくアーチ状のゲートがあるだけだけ。一方で、山側にある大きな建造物がとても目を引く。ホッパーというやつで、鉱山の駅だったことを偲ばせる。上の方に観光看板がついているのが、平成を感じるというか…。

昔は駅舎があったらしい

かつては陸中大橋駅前まで製鉄所の社宅が広がっていて、この駅も大きな駅舎があったようだ。今でも駅前の郵便局は結構大きい。

もうすぐ列車がくるから注意するように、と案内が入る。オメガループを下ってきた快速はまゆり号がゆっくりと入線し、そのまま通過していった。かつての急行は停車していたそうだけれど、今の快速は通過なのか…。

ありゃま、いっちゃった

10時40分に汽車は出発。ここからは本格的に山に挑む。陸中大橋駅を出てすぐトンネルに突入し、そのままぐるっと180度向きを変える。

ここがあのオメガループ、でもトンネルの中なのであまりよくわからないな、と思っていると外に出て、眼科に先程まで走ってきた谷と線路が見える。もうさっきの赤い橋の上にいるようだ。

こんなに上ったの!?

その後更に線路は右に90度まがって、長さ2975mの土倉トンネルへ。

このトンネルが開通した1950年までは、割り切って、峠の区間は線路を敷いていなかった。旅客は徒歩や駕籠(!?)、貨物はロープウェイで運んだらしい。釜石線が全通し1本につながってからは急行列車が行き交い、いまや隣を高速道路が直線的に通り抜けている。交通の進歩というのは凄いものだ。

 

トンネルが多いので窓は閉めるように、という放送が入っていたが、それでも隙間や空調から煙が入ってきて、車内はどことなく煙たくなる。

煙っくさい車内

3km弱、長い長い闇が続く。トンネルを出た一瞬に車窓は明るくなり、少し遅れてから煙が晴れて景色が見えてくる。そうか、これが蒸気時代の車窓というものか。

土倉トンネルを抜けると上有住駅。10時58分着、ここでも5分停車。

コケのついた縦書き駅名標は蒸気とよく似合う。

峠を超えたらすっかり晴れてきた! 駅につくたびに先頭は大賑わい。

駅は少し高いところにあり、展望台のようになっている。集落はもう少し下にあるようだ。駅チカ洞窟”滝観洞”もあるらしく、気になるが、流石に見に行く時間はない。

 

上有住を出るとまたトンネルで、お次の足ヶ瀬でもドアは開かないが停車。ここまでの駅でもそうだったが、SLの整備のためちょくちょく停止しているようだ。さすがに山岳路線で、こまめに手入れをしながら丁寧に丁寧に走っていかねばならないらしい。

念入りな整備を各駅で行う。

足ヶ瀬で山岳区間は終わり、隣の平倉をすぎると景色が開ける。遠野盆地に入った。

畑地が広がり、近くに山、広がる空、木々の緑、のびやかな夏の景色。大きな農家が多い。線路際すぐに牧場があり、牛が放されているのがみえて少し驚く。牛の方は慣れているのか特に驚きもせず、牧草を喰んでいた。

線路際に牧場がいくつかある。また曇ってきたな。

早瀬川を渡って山際を回り込むと、もう遠野駅だ。

 

遠野駅

遠野には11時46分から13時53分まで、2時間近く停車。ちょうどお昼時だし、観光も兼ねて市内でご飯食べてきてくださいね、という感じかな。

折角なので私も観光に…の前に、蒸気機関車の方に向かう。この駅でガッツリメンテナンスを行うようで、機関車が切り離された。そのまま走り、ホームの先端より少し先に止まる。早速人だかりができている。

旅客車側から機関車を眺める。ホームの少し先に止まって作業中。

カマに火を焚き、水を沸騰させて走るには、大量の石炭と水が欠かせない。線路際の消火栓からホースを繋ぎ給水、作業員さんは炭水車の上に登って石炭を崩している。

なかなか見られない光景、みんな動画に収めていた。

消火栓のホースから給水するらしい。炭水車の上では作業員さんが石炭の山を崩している。

足回りの点検もしっかり

客車の顔はだいぶ煤けている

 

ずっと見ていられるが、しかし遠野は初めてなので歩いてみたい。ある程度で切り上げて、人気がすっかり引いたホームから遠野市内観光へ向かう。

みどりの窓口がいまだ健在。急行券、寝台券、なんて表記があり、かなり昔に書かれたものだろうか。窓口の上にはSL銀河の先代「SL銀河ドリーム号」の写真が。

ちなみに、釜石~花巻/新花巻で切符を買うと、距離が100kmに満たず、遠野駅では途中下車できなくなってしまう落とし穴がある。釜石~遠野、遠野~花巻で別々に買っておくと安心です。自分は盛岡まで切符を買っていたので、普通に途中下車しました。

たださすがに、2時間車内待機というのもキツそう…で、実際”お目こぼし”があるのか…?観察しておけばよかった。

 

市内でご飯(ジンギスカン丼!)を食べたり、市立博物館を見学したりして過ごします。流石に、カッパ淵や遠野ふるさと村あたり、有名所は遠すぎていけませんでした。また遠野、こないとな。

「肉を食う」といえばジンギスカンを指すらしい遠野。創作料理としてジンギスカンキムチ丼を出している店があり、そこでお昼。この羊っくさい風味よ!ホント好き。

展望台から遠野市内を一望

2時間は思いの外あっという間に過ぎ去り、遠野駅に戻ります。列車の度は乗りっぱなしになりがちなので、こういう途中下車観光ができるスタイルは良いですね。

 

プラネタリウムへ!

13時53分、遠野駅を出発。出発後しばらくして、整理券に書かれたプラネタリウムの上映時間がくる。それまで車内を見学ししつつ待ちます。

出発前にゲットした整理券を持って向かいます。降りる駅によって配慮があるようです。

頃合いをみてプラネタリウム前で待機し、時間が来たら整理券を渡し、部屋の中へ。小さな倉庫くらいのサイズの部屋で、丸い椅子が感覚をあけて5脚。けっこう空間には余裕があります。

一時期は上映自体を中止していたようですが、今でも密を避けるため、定員を減らしてるんでしょうね。

車内だとけっこうスペースをとってます。

室内の写真はNGでしたが(やはりプラネタリウムだからか)真ん中の台に小型の投影装置が置かれてました。これが結構本格的で、天井いっぱいに満点の星空を出現させます。

気分は夜汽車

暗くなり、上映が始まります。宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」、物語に絡めて星座の解説が入ります。真っ暗な中、星がきらめき、体にガタゴトと揺れが伝わり、先頭の機関車から汽笛が聞こえてきて… 

すごく没入できる環境でした。10分間の宇宙の旅、他では得難いものです。これはみんな体験してほしいし、なんなら色々な観光列車でやってほしい。

前にちゃんと読んだのはいつだっけ。

そういえば、話が「どこまでもどこまでも旅してゆこう」で終わったからこれ、カンパネルラと一緒に行ったままジョバンニ帰ってきてないのでは…などと思考が重箱の角を突き始めますが、深く考えずに席に戻りましょうか。

 

遠野→花巻

少し時間を巻き戻します。遠野を起った列車は、またしばらく盆地の中を走ります。途中横をかすめる道の駅に大勢のギャラリーが詰め掛け、手を振ってくれました。

道の駅 遠野・風の丘・永遠の日本のふるさと より手振り。情報量が多い名前だ。

最後尾から遠野盆地を眺める。

 

盆地が果て、また少し山際を走り、次の停車駅は宮守。

駅手前には有名な撮影スポット、宮守川橋梁があります。めがね橋と呼ばれる、美しい連続アーチ橋だけれど、まあこういうのは乗っているとわかりません。橋を渡る際、左側の車窓からたくさんの人が手を降っているのが見えました。

 

宮守駅へ到着、14時26分。ここでも7分ほど止まり、機関車の整備を行います。

折角なので先頭までいってみると、このあたりのホームは砂利敷で草が生えていて、なんだか鄙びて良い雰囲気です。

またすっかり晴れて、空が広い!

良くないですかこの駅

この頃から旅の終わりまで、すっきりと夏空でした。

 

列車は猿ヶ石川に沿って走り、国道283号線とも並走します。夏らしい青い田んぼと山々を背景に、車の後部座席から手を振る子供たち、夏の思い出ができる瞬間。

「夏」をゆく銀河

列車は北上高地から北上盆地へ、遠野市から花巻市へ。土沢駅には14時53分着。土沢駅の停車時間は3分と短いので、ホームに行くことはせず、少しだけ窓から写真撮影。

土沢

発車して土沢の街を抜けると、また初夏の中を走ってゆきます。盆地の中、起伏がありつつ拓けていて、なだらかに段々畑が広がります。

概念としての北国の夏

車窓をどう切り取っても絵になるのは本当にズルい。

 

まだまだ乗っていたいけれど、もう新花巻駅。大きな建物は東北新幹線の止まるホームで、釜石線はその下の控えめなホームに停車。15時6分着。

巨大!!!航空写真を見たら駐車場とレンタカーと食堂しかなかった。

ここで降りる人も多い。そのまま15時20分の新幹線やまびこ66号に乗れば、東京には18時4分に帰りつける。

 

一方で、ちょっと驚いたけれど、ここから乗ってくる人もいる。近くの席に家族連れが座り、さっそく車内を探検していた。

そうか、人気列車で満員の日も多いけれど、こういった短距離乗車ならまだ可能性があるのか。乗れるのが11分だけだとしても、例えば観覧車に乗るようなものと考えればアリかもしれない。車両自体が魅力的だし、チョイ乗りでもよい思い出になりそう。

普通に乗ろうとするとやはり満員…。が、遠野まで・からだともう少し空きがあるのか。

 

新花巻を出てすぐに大きな北上川を渡り、花巻の街が見えてくる。

北上川を渡る

花巻の市街地へ…

大きくカーブした線路は東北本線と合流して、いよいよ終点の花巻駅。駅舎のある1番線に到着した。15時19分着。

釜石を出てから5時間22分ほどかかったけれど、途中で2時間の遠野駅観光があったから、さほど長旅という感じもしない。

 

混み合うホームを避けて、反対側のホームから写真を撮ったり、駅舎を見学したりして過ごす。入場券を買ってSLを見ようとする人もいて、なかなか活気のある駅となった。

跨線橋から。この画角好き。

跨線橋を渡ったホームより。ロープを気にしなければ、すっきりした編成写真が撮れる。

SLを見に来る家族連れも多かった。

客車の老朽化で廃止…というのが惜しいくらいに、良い旅でした。全体的に客車のインテリアが良すぎるし、車内プラネタリウムは没入感がすごい…。乗っておけて本当に良かったです。

 

沿線の見どころも多いし、蒸気機関車もせっかく復活させたので、なんとか代替車両で運行が継続されないかなあ…と切に願っています。

またね。

深山をゆく単行ツーマン快速(3637D 山田線快速リアス・2022夏)

山田線。

岩手県内で完結する鉄道路線で、今は盛岡駅宮古駅を結ぶ。2011年の震災前は、宮古からさらに三陸海岸沿いを南下し、線名の由来である山田町を経由して釜石まで向かっていた。

この区間津波被害ののち、紆余曲折あり三陸鉄道として復活することになった。したがって、今のJR山田線としては、北上高地を横断する部分だけが残っている。


しかしこの山田線、並行するバス路線が強すぎる故に、ぼちぼち存続が怪しい感じがある。山田線は全線を走るのが1日4本だが、バスの方は40分くらい早くて1日12本もある。(2022年7月/土休日は10本) 

山田線のライバル、岩手県北バス。

左が鉄道、右がバスの時刻表(宮古駅) 何が恐ろしいって、バスの方はコロナで大幅減便を食らってコレなのだ。

まだ公式には存廃議論のような素振りはないが、少し前にJR東日本が収支公表した閑散区間のPDFにはガッツリ名前が乗っていて、嗚呼…まあそうだよな。まあ、JR東日本のローカル線はほとんど全部名前が乗っていたかのだけれど。

 

さて、そんな山田線に乗りに来た。

新幹線との接続はかなり良く、1109発の「快速リアス」3637Dは、東北新幹線はやぶさ9号(8時40分東京発→10時55分盛岡着)から乗り換えができる。ただしこの新幹線は22年春改正で臨時列車化されてしまったので、日によっては走らない。

私はもうすこし余裕がほしいと、1本前のはやぶさ7号に乗って、10時30分に盛岡につく。

 

盛岡駅

新幹線乗換改札口

盛岡駅は新幹線改札内にはたくさんのお土産屋・駅弁屋があり、ニューデイズもある。
一方で、在来線改札内には売店もなく、自販機くらいでとても簡素。

山田線には2時間半くらい乗るし、なんか、食べておこうかな、と思っていたのだけれど、うっかり買いそびれてしまう。在来線側、こんなにも寂しいとは…。

列車の到着がない時間はがらんとしている。

 

車両:キハ110系と車内の雰囲気

快速リアス号は一番駅舎側のホームに止まっている。なんと1両編成だ。

「愛称付き」の「快速列車」で「単行列車」だけど「車掌乗務」と、ひとつひとつの要素はわかるが、まとめてしまうと結構珍妙な気がしてくる。

今日のお供はキハ110-137

車両はキハ110形。JR東日本のローカル線ではよく見かける。登場がバブル期だからか、作りがしっかりしていて、どことなく高級感のある車両だと勝手に思っている。

それなりに新しいイメージがあったけれど、東北や信越国鉄型キハ40系気動車が(観光列車を除いて)すべて引退してしまった現在、実はJR東日本最古参の気動車だとさっき気づいた。

同じ日に見かけた、東北本線釜石線経由の快速はまゆり。こっちは同じキハ110でも、リクライニングシート指定席付きで立派だ。
車内には既に、わりと人が乗り込んでいる。進行方向右側の2人ボックスシートは埋まってしまっていたので、左側にある4人ボックスシートにひとりで座る。

普通のローカル線車内風景と言った感じ。

みんな旅行客だろうか、後ろのボックスですでに盛り上がってる人、キャリーバッグをもった二人組、僕と同じ一人旅と思しき人は時刻表を手繰っている。

旅の雰囲気…を強く感じる人ばかりだ。


盛岡市内の区間ですらかなり本数が少ないし、おまけに快速で駅を随分飛ばす。時間帯もあって地元客というのは少ないのかもしれない。

そういえば、観光客の便を図るため、車内にはミニテーブルがついている、という話があったのだけれどそういうものは見当たらない。感染症対策で撤去されてしまったのだろうか?まあ、お弁当買いそびれたのであまり影響はないけど。

よく見ると左下の窓枠下に金具が。テーブルはずしちゃったのかな。

 

盛岡→上米内

時刻表通り、11時09分に発車。

結局このときに乗っていたのは20人弱で、ほとんどの人が宮古まで乗り通した。
新幹線やIGR線なんかと分かれて、盛岡市内を進む。1日数本の路線でも、しっかりと踏切なんかは整備されている(それはそうか)。

盛岡駅の裏手。

山岸駅
上盛岡、山岸と駅に停車する。この辺はまだまだ市街地で、上盛岡なんかは隣にマンションやロードサイドショップあるし、山岸は住宅街だし、で、案外本数を増やせば市内区間は利用があるのでは…?と一瞬思い始めたところでローカルゾーンに突入する。もう緑しか見えなくなる。
 

一気に郊外に。このあとを考えるとかなり拓けているのだけど。
盛岡〜上米内間は一時期社会実験として増発もしていたらしいのたけれど、あまり利用は伸びなかったらしい。バスや自家用車がやはり優勢なのだろう。
一方で、やはりせっかくの市街地…となれば、山岸の少し先まではLRTにできないか?と活動している市民団体もあるようだ。一応、現状でも盛岡〜上米内間は区間列車が2本ほどある。
 
緑のなかを走り、上米内につく。ここは交換可能な2面2線駅で、しばらくとまって宮古からやってきた盛岡行とゆきちがう。あちらは2両編成だった。

上米内駅にて最初で最後の行き違い。
 
上米内→区界
上米内から先、25.7km先の隣駅・区界まではもう、なにもない。
なにもないという言い方も変だけれど、実際なにもないのだ。山岸~上米内間だってまだまだ拓けていたなという気分になる。
 
この間にあった大志田と浅岸の2駅は2016年に廃止されてしまった。利用がほぼ無い上に、下手に開設しておくと利用者がクマに襲われかねず、危険だったとか…。

ずっとこんな景色。北海道で函館本線長万部~小樽)に乗ったときを思い出す。

ただただ緑の中を進む。この区間は車掌さんが運転席の横に立ち、前方をずっと注視している。駅がないので旅客対応の必要もないし、このほうが非常時の対応に都合がよいのかもしれない。あるいは、鹿とかが出るのでその見張りだろうか?

 
暇つぶしにスマホを見ようにも電波が立たない。106特急バスはwifi完備らしく、本数や所要時間以外の面にも格差を感じてしまう。
GPSは入るので、読み込みが半端で解像しないGoogle Mapを見ながら今どのあたりだろうか、と見当をつけながら過ごす。

大志田駅跡地を通過。

浅岸の駅前通り。
大志田・浅岸の両駅跡はいまでも保線の拠点となっているのだろうか、建物がいくつかあり、道も見える。ただそれ以外にはなにもない。
 
ただ、駅跡地の近くでは電波が入るため、ここが駅であったことを感じることはできた。そういえば、ドコモは駅での通信環境はどんなローカル線であろうと整備していたな。今でも鉄道の管理のために、きっと必要なのだろう。
 
すこしあたりが開けてきて、区界駅に至る。

少し前まで運行拠点として全列車が停車していた区界駅無人化されて、駅舎も簡素な待合室だけに。
 
 
区界→陸中川井
ここからは、閉伊川に沿って宮古まで下っていく。川沿いということで、上米内〜区境間と比べても建物や畑も明らかに多く、駅もいくつがある。ただ、快速は区界を通過して、そのまま陸中川井までは止まらない。

どーんと高速道路
沿線で目立つのは白く真新しい高速道路。
国道106号のバイパスとして、そして震災からの復興道路として整備された地域高規格道路「盛岡宮古横断道路」である。山田線と競合する106バスも特急便はあちらを経由する。
 
引導を渡す、という言葉が頭をよぎる。
 
平津戸駅は全列車が通過する、というなかなか衝撃的な状態となっている。いわゆる休止駅といやつだけれど、ちゃんと時刻表には描かれている。

平津戸駅。モーターカーがいる辺り、保線の拠点であるのだろう。

乗り降りがないからか?ホーム上も草だらけに。
保線車両がいたりと、山田線を動かす上での機能はしっかりあるようだが、入り口にはチェーンがかかっていてホーム上は上がれず、そのホームも草だらけだった。あっという間に通り過ぎる。
 

ちらっと見える閉伊川大峠ダム。すごくカッコいい。
やはり通過だけれど、川内駅からは宮古への区間列車もあり、ここからはだんだん開けていく。いきなりクライマックスだったみたい。

川内駅。始発列車もあり、こころなしか駅舎も大きい。

荒々しい河原だ。雨がふり始めた。
上米内を出てから次の停車駅、陸中川井にようやく到着。大きな駅舎を構え、駅前にも商店もあるけれど、乗降は無かった。

陸中川井。駅舎が大きい!!
 
陸中川井→茂市→宮古
 
そのまま閉伊川にそってまた走る。雨が降り出してどんどん強くなる。
途中、国道経由便の106急行バスとすれ違う…と時刻表から推測してずっと眺めていたのだけれど、タイミングが悪かったのか、あるいは国道との間の木々に紛れてしまったのか、結局見ることはできなかった。

茂市。山田線からさらに支線があったんですよ、広い構内がそれを忍ばせる。
茂市駅。かつてはここから岩泉線が出ていたが、2010年夏に災害で不通となり、そのまま廃止されてしまった。岩泉もそのうち行ってみたいが、やはり高速バスが便利なのだろうか。
 

一人おばあちゃんが乗ってきた。
茂市もいまや無人駅だけれど、かつての分岐駅なだけあってそれなりに大きく見える。
この駅から一人、おそらく地元の方が乗ってきた。
途中駅の利用は盛岡市街地で少しだけあったのを除き、多分始めてで、ちょっとびっくりする。山田線にどれだけ期待していないのだという話だけれど。
 
106バスのほとんどが高速経由となった結果、茂市の町に止まる急行便は現在5往復(土休日3往復)。加えてローカルバスもあるが、時間によっては山田線に乗るのかもしれない。
 
 

さっきまで山だったけど、だんだん川幅が広くなってきた。
蟇目花原市と通過する頃には、急に広くなった閉伊川河川敷に海の近さを感じ始める。最後の途中停車駅・千徳駅あたりからは宮古市街地が広がる。

最後の最後で106バスと併走。

安心感がある地方都市風景が見えてきた。貨客混載バスとすれ違い驚く。
ロードサイド店舗や住宅が並び街らしくなってくる。ほどなく宮古駅に到着した。13時30分着、盛岡を出てから2時間21分後となる。にわかにホームが賑わう。
 

七夕飾り。ちょうど一昨日だ。

集札口のある駅出口。いきなり外で、雨だとちょっと辛い。
宮古駅ホームは出口と入口が分離されていて、出口側はそのままロータリーに直結する開放的なつくりをしている。
一方で入口は、宮古〜釜石間が三陸鉄道として復活した際にJR駅と三陸鉄道駅とで完全に統合されたらしく、改札が同じ。窓口も同じ部屋に2社が並んでいる不思議な作りだった。
 

出札口。列車発車前になるまでは閉鎖される。

雨なので観光は諦め、大人しく乗り継ぐ列車を待つことにする。けっこうな人数が待合室にいるので、結構むわっとした空気を感じる。

次の山田線盛岡行きは15時54分と、またずいぶん先だ。しかしこの1本前は9時22分発で、来るときに上米内ですれ違った列車である。6時間32分も列車間隔が空くのは、なかなかに凄まじい。

このあと回送されて、三陸鉄道の車両が入ってくる。

まあ、ほんと乗れるうちにだな…と思える乗車体験だった。とはいえ、乗っていた20人は全てがマニアという雰囲気でもなく、ここまでバスが強くても、鉄道を選ぶ人も存在するのだなあ…という気分。でも私込みで半分は趣味者だろうけどね。

私の後ろのボックスは半分宴会になっていたし、そういう面で気楽というのはあるのかもしれない。

今回はあいにくの雨で、晴れの日の風景もまた見たいけれど、しかし今度三陸海岸へ行くなら、106特急バスの2階建て車に乗ってしまうかもしれない。wifiついてるし…。

 

おまけ:三陸鉄道移管区間のサイン

さてこのあとは釜石まで向かった。今は三陸鉄道リアス線だけれど、震災前までは山田線だった区間だ。このエリアは新しく作り直した施設が多い…けれど、サイン類の一部はJR様式を引き継ぎ、ラインカラーも山田線の茶色。

復旧作業時にわざわざこうしたのだろうか。過去とのつながりを残していて、ちょっと粋な気がする。

津軽石・陸中山田・大槌のJR式サインたち。

二段ベッドに寝そべって【サンライズ出雲(シングルツイン)・2022年夏】

木次線に奥出雲おろち号に乗りに行こう!と、e5489(JR西日本のネット予約)で指定席を発売開始の10時申し込んでみると、あっさり往復の指定席が取れてしまった。前日までずっと事前申し込みを頑張って、結局抽選漏れしていたのが嘘みたいだ。

そのまま流れで、同じ日のサンライズ出雲・東京行きを確認してみたら、こちらもまだ空きがある。出雲への行き帰りを何も考えてなかったので、えいや!っと買ってしまった。

一度でいいから乗ってみたかった。

はじめての寝台特急だ。

昔図鑑でみて憧れていたブルートレインたちは、結局じわじわと数を減らし、最後まで残っていた「あけぼの」も「北斗星」も「トワイライト」ももういない。クルーズトレインの類を除くと、ついにはサンライス瀬戸・サンライズ出雲だけになってしまった。

夜行列車の中で一夜を明かした経験は「はまなす」の指定席くらいで、ベッドに寝そべりながら移動するというのはどんな気分なんだろうか。期待しつつ、期待しすぎず、当日を待っていた。

 

乗車まで

当日は、奥出雲おろち号から木次線山陰本線と乗り継いで、出雲市駅へ向かう。ついたのは17時過ぎ。

出雲市駅。旅行中はずっとお世話になりました。

まず夕食を調達するべし!と事前に情報を得ていた。サンライズ出雲には車内販売がないので、買いそびれると明日朝まで絶食状態だ。

 

汽車旅だしね、と、駅弁を探したけれど、感染症の余波で取り扱い中止だったり、すでに売り切れていたり。「そば弁当」で有名だった出雲市駅の駅弁業者はすでに撤退済みで、今は基本的に松江駅の業者のものを売っているから、回される絶対数も少ないのかもしれない。結局、駅近くのお寿司屋さんでセットをテイクアウト、あとは改札横のセブンイレブンで飲み物やおつまみを調達した。

駅チカ温泉、らんぷの湯。夜行に乗るときはこういう施設が有り難い。

列車内にあるシャワーは使える人数が相当限られていると聞いていたので、先に汗を流そうと駅チカのスーパー銭湯に向かう。ここはスパ銭ではあるもの、しっかり濁り湯の温泉で、しっかり長湯してしまった。キャリーバッグを持っている二人組、地元の方とサンライズに乗ることを談笑する旅行者も見かける。立地が良いので、サンライズ乗車前後の利用が浸透しているのだろう。

 

早めにホームに上がる。サンライズは発車ギリギリまで入線してこないらしいが、イマイチ正確な時間がわからない。とりあえず入線シーンを眺めたいので、ホームの端よりで待つ。

ホーム上には旅行者多数。みんなサンライズに乗るのだろう。

ゆっくりと入線してきた。

18時50分の少し前頃に、西出雲方面から列車がゆっくりと入ってきた。ホームの端の方には、自分も含めてぽつぽつとカメラを持った人が集まる。発車時刻は18時53分だから、軽く写真を撮ったら、乗り遅れないように自分の部屋のある2号車に向かう。

形式名は285系、駅看板といっしょに。写真の1号車が一番うしろになる。

東京まで一本で。「伯備線経由」とあるのは、廃止されたサンライズじゃない方の客車寝台特急「出雲」との区別のため、だろうか。「出雲は」山陰本線をずっと走るルートだった。

 

本日の部屋へ

部屋は2号車車端部にある「シングルツイン」のお部屋。妙な名前だけれど、シングルルームとしてもツインルームとしても使える個室、ということらしい。

1階部分

2階部分

見た感じ、個室二段ベッドのお部屋。

 

今回は自分ひとりで乗るので、要はビジホのツインルームをシングルユースするような感じ。だから、同じ1人用個室B寝台の「ソロ(6600円)」「シングル(7700円)」あたりと比べて寝台料金が高く、9600円。

加えて特急料金が3300円、出雲市→東京都区内の乗車券が12210円かかり、しめて25110円が本日の宿泊料金となる。

 

やっぱり値段はそれなりにする。でも、私も電車好きの例に漏れず、親にブルートレインに乗りたいと頼んでは「自分でお金を稼げるようになったらね」と言われ育ってきた、もう何も躊躇うことはないんだ。特急と新幹線を乗り継いでも20670円するので、個室であることを考えれば十分アリな価格。

 

ホントは「ソロ」か「シングル」に乗るイメージだったのだけれど、JR西日本のネット予約システムe5489だと「禁煙B寝台」という選択肢しかなく、結果的にこの部屋がとれてしまった。部屋タイプの細かい指定には、サンライズ専用の予約サイトを使うか、駅で申し込むかする必要があるらしい。

サンライズの中ではかなり広い個室だろう。

部屋のドアを開けて、喜んで写真を撮ったりしているともう列車が動き出してしまった。え、もう発車?かなり忙しない感じだけれど、2面4線高架駅の出雲市駅では、夕方ラッシュ時間帯に長々と止めておける余裕がないのかもしれない。

東京まで12時間15分の旅がはじまった。

 

「シングルツイン」は2段ベット構成となっていて、下のベッドは椅子とテーブルに変えることができる。シーツをはがし、真ん中のモケット付きパネルを外して、机を出せば完成。外したパネルは広い方の椅子の後ろのカベに沿ってはまるので、背もたれになる。

折りたたんで椅子モードに。テーブルも出てくるよ。

デフォルトの状態だと、ベッドではないスペースが案外狭い…ので、一人利用なら下段を椅子にしたほうが、着替えなり荷物置き場なりに便利だ。というか、こうしないとテーブルが出せない。

外したシーツや掛け布団、枕や浴衣は、使っていない方の椅子や天井近くの収納スペースに、適当においておいておく。

 

コンセントは、部屋の中の階段の段の下(いや中?)に1箇所、というなんとも微妙な場所に。最近のビジネスホテルのような、枕元で充電、みたいなことはできない。

まあ、1998年、20世紀の電車と考えると、これはむしろ「あるだけ有り難い」と考えるべきだろうな。総武線快速グリーン車も、最近ようやくコンセントが付き始めたのだし。

モバイルバッテリーをここで充電し、別のモバイルバッテリーを使って手元でスマホに充電、という運用としてみた。

 

上のベッドに登って写真を撮っていると、扉をノックしドアノブをガチャガチャするような音が聞こえる。

あれ?あ、車掌さんの検札だ!?と慌てて階段を降りて鍵を開ける。すっかり失念していた。ドアを開けると、車掌さん越しに向かいの部屋の人と目が会い少し気まずい。向こう側もシングルツインで、あちらは2人利用のようだ。

今回のきっぷ。寝台券のスタンプは特急「いずも」の381系があしらわれている。

出雲市から東京都区内までの乗車券と、横長の寝台・特急券を渡す。「1人ですか?」「はい、1人利用です」などとやり取りをして、寝台・特急券の方にはスタンプを押してもらった。最近はチケットレスを使ったり、紙の切符を持っていても車内改札省略のことが多かったりするので、なんだか久々の感覚だ。

 

さて、写真に検札に、乗車後の儀式は一通り終わった。お腹が空いた。

炙り系のお寿司と地ビールで乾杯!

さっき購入したテイクアウト寿司とカラアゲを取り出して、セブンイレブンで買った地ビールも開ける。寿司はかなり寄ってしまってネタとシャリが分離、そうか、これは駅弁ではないものな…と思いながら割り箸で簡単に整える。

いただきます。

 

山陰本線をゆく

列車は宍道(19:07)・松江(19:24)と停車していく。この宍道から松江あたりまではちょうど宍道湖沿いを走る、非常に景色のよい区間で、夕日もきれい…と聞いていたが、8月上旬の日没時刻(19時過ぎ)では間に合わないようだ。

まあ、今日は雲が多かったし、結局日没は見えなかったのだろう。それでも、薄暮のなか見える宍道湖や、その後ろの島根半島、線路と並行する国道9号線の車の光…は、旅の終わりの感傷に浸るにはなかなか良い。

薄暮宍道湖と島根山脈。宍道湖、でっかいんですよ。

このあたり、まだ駅ホームには人が結構いる。すっかり自室でくつろぎモードなのを見られてしまうのはなんだか恥ずかしい。一方で、どうだ、いいだろう…という謎の優越感も抱いてしまう。

結局気恥ずかしさが勝り、ホームのビジネスマンと私とでなるべく目を合わせないようにお互いそっぽを向く。あ、そうだ、カーテンがあったわ、と思い出して、たまらずピシャリと下げた。

松江駅もすぐ発車。じつは前日に見に行きました。

松江を出ると、宍道湖と中海とをつなぐ大橋川にそって走るが、もうずいぶんと暗くなってしまった。川の中にはこんもりと木々の繁る小島があり気になるが、よく見えない。あとで地図をみると手間天神社というお社があるようだ。

大橋川。この先で完全に真っ暗に

もっとゆっくり食べるつもりが、寿司もカラアゲもすぐになくなってしまう。もっと買っておけばよかった。サンライズ出雲には車内販売はないし、各駅の停車時間も短く駅で買いに走る余裕はない。

ビールはまだ結構余っている。駅のセブンで買ったチキチキボーン鶏皮チップスと、高級そうなチーズちくわを取り出して、それをアテにしてお酒で流し込む。

2人部屋なのでスペースは結構ある。向こうの椅子を荷物置き場にしていた。

揺れる車内、どうにも缶が倒れないか不安で、さっさと飲んでしまいたいな…と思うけれど、アルコールには強くないので、セーブしながら飲んでいく。しかし列車の中でお酒を飲むのも、マスクを外して過ごすのも、なんだかものすごく久しぶりだ。

 

単線区間の行き違いのために、東松江、揖屋運転停車を繰り返して安来(19:49)に至る。途中見えるはずの中海は、もうだいぶ暗く気づくことができなかった。安来までが島根県内で、続いて停車する米子(19:56)は鳥取県となる。

米子駅。もしやこの部屋、あんまり駅構内が見えないな? 駅名標は緑色に変わった。

行きは飛行機を使ったので、実は私は鳥取県に来るのはこれが初めて。素通りとなってしまいなんだか悔しい。米子からの境線にも乗っておきたいし、いずれ、じっくり歩いてみなくては。

 

伯備線をゆく

美しく輝く大きな工場が見えるが、王子製紙の米子工場らしい。この工場への貨物線がある伯耆大山駅を過ぎると、ここからサンライズ出雲伯備線に移り、中国山地を越えて南下を始める

製紙工場。思わぬ工場夜景にテンションが上がる。

酔いが回ったのか、旅行での疲れか、猛烈に眠気が襲ってきた。

せめて米子までは起きていようと思い、下段ベッドを変形させた椅子に座っていたのだが、そろそろそれも辛い。この椅子は特急や高速バスのようなリクライニングシートではなく、背もたれが思いっきり直角なので、長い時間座るのにもあまり向かないだろう。

つかれた

目標にしていた米子も過ぎたし、どうしても横になりたい。まだ寝るのには早い気もするが、階段で上のベッドへ上がって、電気を消して横になる。幅はかなり狭く、カメラは窓枠に、ペットボトルのお茶やスマホは体と壁の間に挟むように置いておいた。

部屋にはスピーカーがあり車内放送が聞こえるのだが、上のベッドには少し聞こえづらい。まあ、終点の東京まで乗るのであまり関係はないか。

上のベッドに登った。

シングルツイン個室は車両端にある。この車両にモーターはないけれど、それでも台車に近いところなので、結構揺れるし、ガタンゴトンという音も響いてくる。横になると、体全体でそれを意識してしまう。人によっては寝づらい、というのはあるのかもしれない。

自分のような鉄道マニアは、寧ろこういう(うるさい)席に乗りたがったりするタチがあるので、あまり気にならない。揺れたり音がしたほうが「汽車旅」を感じられて嬉しい!と思う側の人間だから、需要と供給が噛み合っている。まあでも、それを差し引いても、眠たければ普通に寝れる程度かな、と思う。

 

ただ、室内のハンガーはガチャガチャと壁にあたって気になってしまうので、これは外して天井近くの荷物置きに入れておいた。

謎の影

ハンガーを外すと黒っぽく影のような物ができている。

推測だけれど、昼間車両基地で休んでいるとき、直射日光で焼け付いてしまったのだろう。サンライズは1998年運行開始。もう24年目と考えると、若干くたびれたビジネスホテル感が出てくるのも致し方ないところ。

 

横になってスマホをいじっていると、少し長めの運転停車がある。地図を見てみると伯耆溝口という駅らしく、5分ぐらい止まっていたか。

寝そべって見る伯耆溝口の星空。下段と上段の2窓から景色が眺められるのが、シングルツインの一番の贅沢かもしれない。

線路のカーブで列車の方向が変わるたび、窓には月が現れ、消える。月明かりと雲に邪魔されているけれど、ポツポツと星々も見える。踏切や街灯の光がやってきては後ろに飛んでゆく。たまに眩しい光がきらめくのは、多分すぐ近くにあるパンタグラフから発生するスパークだろうか。

そんな、真っ暗できらきらした夜の中国山地を、列車の走行音や揺れとともに横になりながら眺めるのは、なんだか夢のような時間。いや、ホントに寝ていたようだ。気がついたら新見(21:20)にいて、もう岡山県に入っている。

ぼやっと浮かび上がる新見駅

新見を出るとまた寝てしまい、備中高梁(21:48)、倉敷(22:14)は記録も記憶もない。気づいたときには随分と大都会を走っていて、もう岡山駅の手前だ。

 

青いラインの宇野線や、黄色い山陽線電車を見ながら岡山駅に入線。

宇野の213系かな

一旦停車して、また動き出し、止まる。ここで四国・高松から瀬戸大橋を渡ってやってくるサンライズ瀬戸号との連結を行うので、多分その動作だろう。岡山では4分くらい停車するらしいのだけれど、流石にホームには降りず。車内から駅を眺めて待つ。

奥には瀬戸大橋を渡るマリンライナー高松行が見えた。

22時34分に発車。津山線吉備線の車両が集うディーゼルカーの基地を横目に、山陽本線を走り出す。

 

車内探検

このあたりで車内を探検してみよう!と個室の外に出る。個室はナンバー式ロックとなっているので、忘れずに鍵をかけておく。

 

我が2号車は2階建て構造になっていて、真ん中に通路があり、両脇にB寝台の「シングル」個室が並ぶ。車端部には「シングル」の平屋個室と「シングルツイン」個室がある。私の部屋ではないが、「シングルツイン」のうち1室は車椅子対応で、直接デッキに繋がっているちょっと特殊な作りらしい。

2階建ての2号車。通路がメチャクチャ狭く、すれ違いに難儀する。

シングル個室。なぜか1室だけ、終点東京まで空いていた。てっきり満席(満室)だと思っていたのだけれど。

3号車は通路部分は1階建てで、上段・下段に分かれている「ソロ」個室。部屋の中に階段や張り出しがあったり、そもそも天井が低かったりと、結構狭いらしい。

ソロ個室は車内にテーブルがない故か、3号車にはラウンジがある。片側4席の合計8席とあまりキャパはないが、ここに溜まっている人は深夜に至ってもそれなりに居た。

3号車。こっちは満員っぽい?

翌朝のラウンジ。なかなか良い空間。

ラウンジのお隣には、飲み物の自販機やシャワーがある。流石に、岡山を出てからではもうシャワーチケットは残っていない。

自動販売機にはコカコーラ系5種しかないが、車販もないしあるだけ有り難い。
シャワーカードは[売][切][れ]

4号車は1人用A寝台個室「シングルデラックス」と、2人用B寝台個室「サンライズツイン」。いつか乗ってみたいA寝台。

こちらも車内の通路部分に階段はなく、片側に寄っていて窓がある。個人的には、寝台特急の車内ってこういう、通路が片寄っているイメージがあるな…

4号車。「寝台特急」のイメージは、こういう片側に通路がよっている構造。

このさき5号車は、ネカフェやフェリーの座敷席みたいな「ノビノビ座席」。寝台券が不要で安く乗れる号車なのだけれど、個室ではないので、流石に冷やかしで見に行くのも…もう夜遅いし…という気分になってしまい、結局行かず。

 

深夜の山陽・東海道本線をゆく

再びベッドに戻ってうとうとしているが、街明かりと車両の減速で目が覚める。もう姫路(23:33)。JR神戸線の終電(23:17 西明石行)が出たあとで、部屋から見えるホームに停まる播但線(23:33 寺崎行)・姫新線(23:21 播磨新宮行)も終電が出ているので人気はない。

姫路駅。ホームは煌々としているが、とまっている221系電車の車内は真っ暗だ。

重機を載せたトレーラーと並走。ああ深夜…。

次の停車駅は三ノ宮(0:11)、日付が変わってしまった。並行する阪急電車はまだ走っているようだけれど、車内の人もまばらだ。

阪急と併走。マルーンカラーの車体が闇に溶けている。

せっかくなら大阪の夜景は見ておきたい。さっきまで寝ていたからそこまで眠気がないし、横になって景色を眺めながらぼーっと過ごす。ひっそりとした市街地を抜けてゆくと、淀川を渡るところで急に視界がひらけ、梅田のスカイラインの光が飛び込んできた。

ここ、とても好きかもしれない。

光の帯のようだ

橋を渡りきると、うめきた地区の工事を盛んにしているのが見える。黄色い明かりに満たされた工事現場を掠め、減速しつつ大阪駅ホームに滑り込む。

深夜の大阪駅。なんだかぞわぞわする。

大阪は時刻表だと2分停車で、0時33分発。

反対側の部屋だったら、あの大屋根や他のホームもよく見えたのかもしれないけれど、この部屋からは人気のない11番ホームが見えるきりだった。上りサンライズは大阪→東京の利用も便利と聞くので、もしかしたら、大阪から乗った人も居たのかもしれない。

 

ここから先は、明朝の静岡駅までは停車がない。

新大阪を通過。0時を回っているから、新幹線の終電も終わっている。

淀川を再び渡って、新大阪駅が見えてくるけれど、ここも通過してしまう。ここまでで結構寝ていたのだけれど、また眠くなってきた。トイレに行って、また寝てしまうことにしよう…。折角なので、カーテンはおろさずにおく。

 

ちなみに、我が2号車12番個室の最寄りトイレは、貫通路を渡って3号車に入ってすぐのところ。ただ、ここは独立した洗面台が近くになく、ハンドソープも見た限りでは置いていない。基本は車両1両分を歩いて、4号車や2号車のトイレまで行っていた。

特急列車なので独立した洗面台がある。手洗い大事。

で、結局京都に付く前には眠ってしまったらしい。

 

 

この先、Webで調べてみると、米原(1:41-1:43)、熱田(2:36-2:37)、豊橋(3:17-3:19)、浜松(3:43-3:45)とドアが開かない運転停車があるようだ。ぐっすりと寝て記憶がない…とおもっていたけれど、確か熱田で止まったときに目が覚めたのだった。

たぶん熱田駅。歴史ある駅で、結構構内が広い。

どうもやはり、駅への停車時は衝撃・明るさで目が覚めやすいようだ。ああ、熱田か、昔愛知に住んでいたから、懐かしいな…と思って、また寝てしまった。

愛知に住んでいた頃、眠れない夜にサンライズを見に行ったことがある。貨物列車が闇を切り裂いて行き交う中、窓から柔らかい光の漏れるサンライズは特別だった。

 

朝の東海道本線をゆく

そして次に目が覚めたのは静岡駅、2分ほど止まって4時40分発。ここからはまたドアが開く。しかし寝ぼけていて、「ああ、もう浜松かあ…」と勘違い。でもしっかり写真をとっていた。

明るくなりつつある静岡駅、ここは乗降可能。来たことはあるはずなのに、なんだか全く知らない街に見える。

だんだんと日が出てきて眩しくなってくるのだけれど、静岡から先では部屋は北向きになるので、結局またグッスリ寝てしまう。富士(5:10)も沼津(5:27)も記憶がない。しっかりと目が覚めたのは熱海(5:45)だった。

山にへばりつく建物群、熱海って感じ

シーツがぐちゃぐちゃになっている

熱海~小田原は東海道線が海沿いを走るので景色が良い。海側は東向きなので朝日も見えるはず、ただ部屋は山側だからラウンジに見に行こう…と思ったが、同じことを考える人も当然いるわけで、すでに先客が2人。

結局ドアの部分の窓から相模湾を眺めることにした。相変わらず、根府川あたりはとても景色が良い。そしてサンライズからサンライズを見るという実績も無事解除。

美しい朝焼け。こんどはこっち側の部屋にして部屋からゆっくり見たい。

小田原・平塚・茅ヶ崎と神奈川県の駅を通過していく。もういい加減明るいし、旅の残りも1時間くらいだ。二度寝はせずに景色を見ていることにした。自販機で買った缶コーヒーを飲みつつ過ごす。

エメマン。冷えているのが有り難い。

茅ヶ崎。そういえば相模線も新車E131系が入ったんでしたね。

相鉄線が見えてきて、横浜駅に滑り込む。6時45分、すでにホームにはかなりの人がいて、流石に気まずい。ただ、上段のカーテンは電動式なので、閉めようか迷っているうちに発車してしまった。

そいや今日平日だった。

京浜東北線と並走しながらラストスパートをかけ、山手線が近づいてきて気づけば品川も通過。車窓はもう見慣れた景色で、それが却って不思議な気分にさせる。

横浜を出てからすぐに、荷物のまとめも済ませてしまって、降りる準備は万端。名残り惜しさを感じ始める頃には東京駅の赤レンガが見えてきて、列車は定刻7時8分に東京駅8番線ホームに滑り込む。

案外列車側からも赤レンガはよく見える。駅についてしまう…

 

到着後

通路が狭いので混むと大変、頃合いを見てささっと下車。

さっきまでいた部屋を外から眺める。なるほどこんな感じ、やはり他の部屋と比べて、窓が2つあるのが贅沢な感じだ。

「宿」の外観。車番はサハネ285-3201で、JR東海所属の編成だったらしい。

ついさっきまでこの部屋に…(一応、下段をベッドに戻しておいた)

そのまま1号車の方に向かい、先頭を見に行く。軽く人だかりができていたが、まあ記念撮影程度なら無理なくできる。

お疲れ様でした。

ついでにそのまま歩いて、7号車と8号車の境目の連結部分へ。出雲市駅の時点では「サンライズ出雲」単独だったので、「サンライズ瀬戸」と繋がっている姿をここでようやく拝めた。よくよく見てみると、今回は「出雲」はJR東海所属の車両で、「瀬戸」はJR西日本所属の車両だったらしい。

285-x(0番代)はJR西日本所属、285-300x(3000番代)はJR東海所属となる。車番の書体に個性が出ている。

列車が回送されていくのを待っていても良かったけれど、もうお腹が空いてしまった。駅ナカで早朝営業のお店はいくつかあった気がする。今日はこの後帰るだけだし、ちょっと並んでも美味しそうなものを食べて帰ろう。

さよなら、またいつか。

海鮮丼!結構並んでいた。

初めての寝台特急。寝れなかったという評判を実は聞いていたのだけれど、案外寝れたな…と思っていたが、帰宅後は結局昼寝し夕方。いや、単に旅疲れか。

でも、他では味わえない楽しさが確かにあった。寝そべって、どんどん変化する星空や街明かりを眺め、深夜の人気のない駅に震え、あるいはそんな車窓を眺めてのお酒、なんて、他ではできない体験だろう。

 

サンライズ瀬戸」も乗ってみたいし、東京発にも乗ってみたい。他のタイプの個室も試してみたい。日本最後の定期寝台列車、乗れるうちに味わい尽くしておかねば。

なかなか予約が取れなかったし、もうしばらく走り続けてくれることを願いつつ、また旅費を貯めておこう。

駅前ホテルで駅弁モーニング【ホテルハイマート・2021年末】

久々に18きっぷ旅をしよう、あの列車に乗ってみたい…となんとなく旅のルートを決めれば、次は宿の予約。

自分の場合、こういう時はたいてい駅近のそこまで高くないビジネスホテルを予約サイトから探す。折角なので、面白い宿に泊まりたいよね、チェーンより地場のビジホに泊まりたいよね…という欲望もちょっと混ぜ込んで。

えちごトキめき鉄道の観光列車に乗りたかったので、直江津経由に決めました。

そんな感じで今回は、直江津の宿をどうしようか…そういえば、駅前にホテルがあったような…?と調べてみると「駅弁付きプラン」というのが目に飛び込んできた。ホテルハイマートというらしい。

さすが鉄道の町直江津、ここだなぁ!と思い、クーポンをちゃっかり使って、禁煙シングル"朝食付き"を7400円のプランを予約。楽しみです。

 

www.heimat.co.jp

 

22年末、会津若松から電車を乗り継ぎ、18時頃についた直江津はすっかり暗い。

ちょうど天気が崩れていたタイミングで雪が降り続いている。ああ…寒いな、と思いながら駅舎から出て、横断歩道を渡ったらすぐにホテルでした。

ああ、ここか~ 前に来た時に見覚えがある…

めちゃくちゃ寒いので、さっさと入りましょう。

ホテルのロビー、なんと駅弁の展示コーナーがあります。

実は予約を済ませてから気づいたのだけれど、そもそも、直江津駅の駅弁を作っているのがこのホテル。つまり今夜は駅弁屋さんに泊まるといっても過言ではない…かな。

「駅弁味の陣」の賞状がたくさん!

食品サンプル。おいしそう…

たら、さけ、ほたて、かに、と海沿いらしいラインナップ。

駅ホームでの「立ち売り」用の木箱も展示されていました。

チェックイン時、駅弁朝食付きプランの予約者は、翌日朝に受け取る駅弁の種類と時間を聞かれます。「さけめし」と「鱈めし」の2種から選べて、たらこが食べたいなあ…と思い「鱈めし」を選びました。

 

 

すこし奥まったところにあるエレベーターで6階へ上がり、部屋へ。

なんというか普通のシングルホテルの部屋、という感じで、十分に清潔で落ち着く部屋。若干古さはあるか?とも思ったけれど、スマホを充電しやすい様に枕元にコンセントが取り付けられていたりと、最近の需要に合わせてしっかりアップデートされていて快適でした。

普通のシングルルーム。枕元にコンセントがあるのが有難い。

お風呂はユニットバス

キーとメモ用紙が良きローカルビジホ感を出してくる。

明日も一日電車を乗り回す予定なので、お風呂に入ってさっさと寝ましょう。

う~~ん、明日は雨かなあ。

 

翌朝。まずカーテンを開けて、朝の景色を眺めます。

 

直江津市街地ビュー、西向きの部屋でした。奥の方に海の雰囲気を感じます。どうも、反対側の部屋に泊まれば、直江津駅妙高山がよく見えたようで…。今度泊まる機会ができたら、予めお願いして、駅側の部屋でトレインビューを楽しむのも良いかな。

部屋(621号室)からの景色。ちょっと晴れてて嬉しい。

廊下の窓より。駅側の部屋に泊まればこういう景色が見えるはず。

眠たいですが、もうすぐ駅弁の受け取り時間です。旅行中の早起きのぽわぽわ感とともにエレベーターに乗ってロビーへ。

おお、なんか並んでるぞ!!!

鎮座する駅弁たち。

楽しみ~~!!

ロビーの人から駅弁を受け取って、部屋に持ち帰ります。

朝7時受け取りにしたのですが、ラベルにある調製時刻は朝6時。出来立て!!

眠気も吹き飛ぶ。確か6時半から受け取れます。

ちからづよい「直江津名物」

さて、早速いただきます…。

調製時間的には出来立ての駅弁ですが、しっとりと冷えています。(そりゃ駅弁ですからね) 駅キオスクで買っておいたインスタンス味噌汁で、体を温めつつ食します。

優雅な朝ごはん。

鱈めし、ということで、メインは「棒鱈の甘露煮」4切れ、と、「炙り塩たらこ」4切れ。ついでに「鱈の親子漬け」も添えられてます。

寄りで。艶めかしい。

真っ黒な甘露煮はあまじょっぱく、よく煮込まれて骨までホロホロ。塩たらこは中がレア気味で、一番好きな火の通り方。鱈の親子付けはちょっと酸っぱめで、お酒のおつまみ感が強いです。

 

下に敷かれているご飯は地元新潟県産。ご飯の上には錦糸玉子と昆布の佃煮が散らされていまして、もうこの組み合わせだけで美味い。

具の配置図。素朴な見た目ですが、うまみが押し寄せてきます。

………普通に朝ごはんとして食べてしまいましたが、これ、どっちかというと日本酒!!!!おつまみ!!!!って感じです。絶対に合う。

もちろん、単体で食べても美味しかったです。朝からいいモノ食べました、ごちそうさまです。

 

直江津駅弁がホテルハイマート産製であることは、この宿泊を機に知ったのですが、そういえば以前から直江津=駅弁、のイメージは強かったです。

改札内に小さな売り場があり、いつもここで売っている印象がありました。

改札内の駅弁販売ケース。
タイミング悪いのかコロナの影響なのか、この日は売ってませんでしたが…。

以前は、ホームでの立ち売りもやっていた気がします。北陸新幹線の長野~金沢間開通(2015年3月)より前、特急列車が直江津駅をたくさん行き交っていた頃です。

この頃は、特急「はくたか」「北越」に、快速「くびき野」、普通「妙高」と、駅弁を食べるのにおあつらえ向きな、座席背面テーブルのついた列車が各方面に走っていました。

2014年・北越急行の赤い「はくたか」 懐かしい…。

現在は、北陸新幹線上越妙高駅の店舗と、直江津駅前の「ドライブスルー」での販売が中心に。ただ、えちごトキめき鉄道が力を入れている観光列車の運行時には、立ち売りを復活販売させている様です。

ビニル袋にも上越妙高駅の文字。ちなみに「山崎屋」は、ホテルハイマートのかつての屋号だそうです。

前述の「ドライブスルー」はホテルから出た歩道沿いにあります。

チェックアウトし、駅に向かう道中、自家用車で駅弁を買いにきた人をちょうど見かけました。駅弁というのも大きな付加価値ですが、それ以前に「駅前ホテルのレストランのお弁当」と考えると、案外いろんな方面から需要があるのかも。

朝日に映える駅弁ドライブスルー

朝のホテルハイマート全景。右下がドライブスルーです。

ホテルハイマート、駅チカで便利でしたし、寝起きの駅弁はなかなか新鮮な体験でした。結局「さけめし」を食べそこなってしまったのですが、こちらもすごく美味しそう。駅弁目当てでまた行く気がします…。

はじめての成田エクスプレス、千葉から半額で。【2022年春】

2022年3月のダイヤ改正

今年もなんか、全体的に絞っていく感じなんだなあ…としんみりしていた中、千葉の住人としてびっくりしたのが「成田エクスプレスの千葉駅停車が大幅増加」だった。

いつも通過していったキミ

成田エクスプレスN’EXといえば、その名の通り都心と成田空港を直結する特急列車である。成田空港が唯一の目的地となるわけで、ほとんどの列車は、県庁所在地の千葉駅や、成田山新勝寺擁する成田駅なんかも容赦なく通過していく。

 

通勤需要も当て込む朝晩の列車は、千葉や成田にも止まるのだけれど、全車両が指定席なので結構なお値段になってしまう。

千葉駅横の橋から。前面真っ赤に塗られた屋根がカッコよくて好き。

まあなんというか、千葉に住んでいる限りは特に使う機会のない列車、という印象だった。更には昨今の状況もあり空港需要が激減、昼の便は運休しているし、動いている便もだいたいガラガラで通過していくので、見るたびなんとも言えない気分になる。

 

それがこの春から、運休していた昼間の列車が毎時1本は復活し、それらも含めて多くの便が千葉駅に止まるようになるのだ。

おまけに6月いっぱい迄、えきねっとで予約しておくと指定券が半額のキャンペーン中。東京~千葉間で640円なので、平日の快速のグリーン車(780円)よりも安くなる。

 

これは千葉駅からしたら一大ニュースである。とにかく広告を打っている。

改札口の柱にも。

改札内にも吊り下げ広告。

いたるところに、圧の強い手書き広告たち。

この手書き広告、千葉駅員さんによる作なのだろうけど、たまに千葉駅ユーザーとしての本音が見えるようで面白い…。

この辺とか、もう千葉駅利用者目線な気がする。総武快速、とにかく混むからなあ…。

 

さてまあ、せっかくなので安いうちに一度は!と、東京に出る用事があったので乗ってみることにした。

もちろんチケットレス特急券を事前予約。ちゃんと640円でとれました。

スマホで完結するのでとても便利。手元にチケットが残らないのが、マニヤ的にはさみしいところですが。

金曜日、19時24分千葉駅発の成田エクスプレス46号、新宿・大船行き。

この時間の7・8番 総武本線ホームは特急ばっかりだ

7番線に入線、待っている人はかなり少ない

さて、(失礼ながら)もっとガラガラかな?と思っていた。

実際、千葉駅で待っていたホームはがらんとしていて、見える範囲で待っていたのは5人くらい。入国後は隔離があるし、成田空港行きはともかく、東京方面行きの需要もそこまで回復してないだろう…と。でも意外と人が乗っているのだ。スーツケースを抱えている人もチラホラ。LCCのユーザーだろうか?

明るく清潔な車内、椅子に差された赤色がカッコイイ。

座席から。JR東日本らしい、飾り気なくスッキリした特急列車、という印象。

トイレに行くのにかこつけ、車内をちょっとうろついてみる。

横浜方面ゆき編成の2号車から4号車まで、3両で合わせて50人くらい… 1両あたり20人弱という感じか。以前のような状態には戻っていないのだろうけれど、これまでガラガラで通過していく様子ばかり見ていたから、思いの外乗っているなぁ?という気分。

ただやはり、海外からと思しきお客さんは見かけなかった。そりゃそうか。

 

車内天井にはモニタがくっついていて(飛行機とか関西の新快速みたいだ)そこに案内や広告映像が流れている。運行情報とか走行位置案内とか、JRの予約方法なんかも。広告はなんというか「日本の美」「Cool Japan」的な感じで、空港特急の雰囲気が盛り上がります!

天井モニタ。東京駅の構内案内と、外国人向けJR東日本予約システムのご案内。

デッキのところにも同じ情報が流れます。この編成は大船行きです。
横須賀行きとか、小田原行きなんてのもあったのですね。

NE’Xは総武快速線を駆けてゆく。時間が時間なので、外の景色はあんまり見えない。お隣を走る中央総武線の黄色い各駅停車を、ダイナミックに追い抜いていく瞬間、そこはちょっと面白い。

そういえば、快速線電車の方を追い抜くシーンも観察しようと思ったけど、見逃してしまった。いつもは快速に乗っていて、通過待ちをする側…だったり、あとは、謎に数分間の停車があり「もしかしてこの停車、本来通過を待つNE’Xが運休しているのかな」と見えない存在を感じたりとか、自分にとってNE’Xはそういう存在です。

黄色の総武線と並走。

やはり途中無停車というのは圧倒的に早い。ふと通過する駅の看板を見ると「小岩」をとあり、もう都内だ。

スカイライナーと比較され、高いわりには遅いよ~と言われるNE’Xだけれど、千葉-東京間を途中無停車の25分で駆ける。いつも快速で、千葉東京間40分を移動している身には有り余るスピード感だ。

まあ、空港までで考えると、千葉~成田空港が意外と遠くて、結局東京から空港まで1時間くらいかかるのだけど…。

気が付くと「まもなく東京」

錦糸町を通過するあたりで、間もなく東京、お早めにお荷物を準備ください、と、それなりに大きな音量で、4言語(日英中韓)での案内がある。そうか、大荷物の人も多いから…と空港特急であることを強く感じる。

大きなスーツケース置き場にはナンバーロック完備

「スーツケース置き場の暗証番号をお忘れの場合、お引き渡しは終着駅となります」という地味におっかないことも言っている。この列車なら大船行きだし、中央線方面に行くやつもある。今は運転されていないけど、前は大宮行きとか、富士急線の河口湖行きとかもあったはず。荷物と一緒に連れてかれちゃった人はいるんだろうか?

 

総武線の地下区間を走り抜け、東京駅の総武線地下ホーム4番線に到着。

総武地下。よく使うけど、東京駅の中では地味な乗り場かも。

今回は東京駅に用事があるのでここで降りるけれど、もうすこしだけホームに。ここで大船ゆきと新宿ゆきが切り離されるので、せっかくなので見ときたい。

すでに車両間の連絡通路が折りたたまれてます。

ライトが点灯し、ドアが閉まって…

そのまま発車。

サヨナラ~~

実は何度かこのシーンは見たことがあるけれど、「切り離し」と「列車の発車」が同時に行われるため、なんだかちょっとシュール。どうも新宿行きが唐突に置いてけぼりを食らったように感じる。

自分の中で、列車の編成分割というのは「切り離し」→「一旦停止」→「発車」なイメージがあるからかもしれない。

新宿行きも数分後には発車する。ぱっと見、1両5~6人くらいで結構ガラガラだった。

しっかりお見送りを済ませて満足したので、次の目的地へ向かうこととしました。

東京駅コンコース方面のエレベーター沿いにも、NE’Xポスターがたくさん

総武線ホームの入り口。「成田エクスプレス」の案内、いつも使う「機会無さそうだな…」って一瞥していたけれど、ついに乗れたよ!

6月中は特急券半額で乗れるので、もう一度くらい乗っておきたい気がする。今度は明るい時間がいいな。でも、空港に行くのに使う機会は相変わらず無い気がする…また海外行きたいなあ…。