ぱらのみっく・ういんどう

ひとり旅のブログ。乗り鉄中心、バスに船、街歩き。ひとつのテーマをじっくりと…。

憧れの台湾ナロー、虎尾の製糖軌道を歩く【虎尾糖廠・馬公厝線 2024年1月】

台湾には現役の製糖ナロー軌道が残っている。

Twitterで海外鉄道の情報をよく見るようになった10年前頃にそんな話を聞いて、ずっと気になっていた。毎年「今年で最後かも」と言われていて、しかしなかなか踏ん切りがつかず、行けないままなのかなあ…。そう思っていたが、渡航制限が消え去った2023年になってもまだ運行が続いているようだ。しかも勢いで取った桃園行きのスクート航空券が手元にある。あれ、これ、行けるのでは??

 

そんなこんなで2024年の正月休み。夕刻に台湾高速鉄道の雲林駅に降り立ち、虎尾まではタクシーで200元。

虎尾。大学も産業もあるからか、ちょっと想像以上に街でした。

登豐米蘭商務旅店(ミラノデンバーホテル)という、妙に名前の由来が気になるホテルに泊まり、自助洗(コインランドリー)で洗濯も済ませ、翌日に備えて早めの就寝。

 

畑行き1・2便/朝の中正路踏切

翌朝、食堂で塩っけの強い卵とおかゆを掻き込んでから街に出る。8時少し前。

バイク行き交う通りの端を歩き、中正路の踏切までやってきた。道端がそのまま朝市のようになっていて、肉屋があったり、トラックの荷台で白菜を売っていたりと大変賑やかだ。

中正路踏切。道端で白菜を売っている。

踏切小屋にはもう人がいて、トランシーバーでなにやら話している。どうやら今日は列車が動くらしく一安心。下調べの通りならもうすぐ来るはず。

どこで写真を撮ろうか、とそろそろと動き回る。虎尾の街中は、線路とも裏道ともつかないような風景の中を走る景色が数年前まで展開されていたのだけど、段々と整備が進んだらしく、線路沿いには舗装された遊歩道が出来ている。将来の観光列車化を見据えているのだろうか。

朝日眩しい虎尾。踏切から工場方向を望む。

工場からサトウキビ畑へ行く便はどうせ逆光になるし、街の風景を入れたスナップにしよう。GRiiiを片手に踏切から少し離れた場所に陣取る。

 

8時15分ごろ、踏切警手のおっちゃんが出てきて警報機が鳴り出した。遮断ロープがそろそろと下がり、交通が止まる。いよいよだ。

ギャリギャリガタガタと音を立てながら、軽便鉄道が街を行く。

オレンジの小火車が、黒と黄色の小さな貨車を引き連れて、キャリキャリと走ってきた。貨車は空車だけれど、なかなかに長くて迫力がある。速度も遅く、踏切も閉まったまま、だんだんとバイクが溜まる。

列車が通過し終えてロープが上がると、水門を開け放ったようにまた交通が流れ出す。

バイクの洪水。虎尾は大学もあり、かなり人流は多い。

ああそうだ、ぼくはこれが見たかったんだ。今年が最後かもしれないと言われて何年間も経ち、きっと変わった景色も多いけれど、良くここまで走っていてくれた。一つ憧れの街に来ることが出来た。今日は長くなりそうだ。

 

通常、午前は8時と9時に工場を出る、というのが事前調査でわかったことだけれど、次はいつ頃だろうか? 適当に街をぶらつきつつ、次の撮影ポイントを探してみよう。とりあえず、線路沿いの遊歩道を進んでいこうとしたけれど、飼い犬が激しく吠えてくる。おおっとコッチは行かないほうがよいな…と躊躇っていると踏切が鳴り出した。

民家のガレージと一体化した線路をゆく。これはこれで併用軌道の雰囲気?

あれ、もう?まだ9時にはなってないぞ、いや専用線の時刻なんて当てにならないものが。とりあえずカメラを構える。

かなり長い編成が街なかをゆっくり走る。

焦って写真はあまり上手く決まらなかったが、軒先やガレージの前を抜けていく列車を見られたのでそれは満足。

踏切小屋に戻り、Google翻訳に「次の列車はいつですか?」と打ち込んで、すみません、と警手さんに近寄る。コイツ日本人で言葉分からんのだな、とすぐに理解してくれたようで、スマホに表示された訳文を見てから指をクロスさせる仕草をされた。

踏切でタオルが干されていたり、生活感あふれる雰囲気。

バッテン?わからない、いや、教えられないのかなぁ、とその意図を掴もうとしていると、僕が片手に持っていたメモ帳を認め、そこに「10点」と書き記していただいた。そしてジェスチャーで「戻って来る」。つまり10時頃に折り返してくるということか。わかりました、という仕草とともに、謝謝、と伝えると、『アリガトゴザイマス!』と元気よく日本語で返された。ちょっと唐突で笑ってしまったが、日本人の相手をすることも多いんだろうな。

 

虎尾の街から郊外へ

10時ということで、1時間以上ある。一旦ホテルに戻り、荷物をまとめてチェックアウト。目星をつけておいた撮影地に向かい歩き出す。

レンタサイクルもあるようだけれど、今日は借りないで歩きで巡る。荷物はリュックで7kgすこし、水も持ったしなんとかなるだろう。作戦は「線路沿いを歩いてサトウキビ畑までゆき、適宜写真を撮影、帰りは路線バスで高鐵雲林駅へ」だ。

今思うと、沿線でトイレも水調達も無理なのを考えれば、やはり自転車か、頑張ってタクシーと交渉したほうが良かった気もする…。まあ、とにかく今回は「徒歩鉄」で頑張ってみた。

線路沿いを歩く。遊歩道は、カラーコーンがあったりとまだ整備中の雰囲気。

虎尾の街中はずっと、線路沿いがきれいに舗装され、街灯や植栽も整備されている。ここは廃線跡を楽しめる遊歩道で、軌道は昔のまま残してるんだよ、とか言われたら信じてしまいそうだが、ちゃんと現役線だ。

本音を言うなら、数年前までの、街なかヘロヘロ併用軌道の姿の方を見てみたかったな…。でも、いまの姿も一つの生きたナローの形なんだろう。

虎尾糖鐵緑廊、はここまで続いた遊歩道の名前だろうか?観光化が進行中の雰囲気。

街外れまで来た。川を渡ると線路は小さな築堤のような場所を走る。「虎尾建國一村」という軍事系遺構を使った施設が線路の反対側にある。糖鐵の保存車両も見え、気になるが今日はスルー。

その先で道路は線路から離れていくが、その脇にも別の線路が埋まっている。ここは廃線跡のようだ。今は一路線しかない糖鐵も、かつてはこの平野を網の目のように駆け巡っていたらしい。

綺麗に廃線跡が残っている

県道158号線の先でまた線路と合流。このあたりは、片方の線路の端までが舗装されていて、高知のとさでん交通後免線とソックリだ。

台湾の国道195号線である。

併用軌道好きとしては、この辺でもスナップしてみたいなぁ…と思うけど、まだ列車が来る気配がない。もう少し進んでみる。

線路は左に緩やかにカーブを描き、その先で台湾高鐵の高架線路と交差。ここで高鐵とサトウキビ列車を同時に納めた写真を見たことがある。ちょっとその画にも惹かれるけど、流石にギャンブル要素が強いか。

 

工場行き第1便/(旧)北渓厝車站

高鐵の線路をくぐれば順光になる直線区間が広がっていて、編成写真を撮るにはうってつけ。ちょっとゴミのポイ捨てが多いが…。サトウキビ畑から戻って来る列車はここで撮ることにした。Google Mapだと北渓厝車站と記載がある。

構図を考えながらしばらくうろついていると、遠くからフェーン!と汽笛が聞こえる。列車が来る!カメラを構える。

サトウキビ満載!

通過するディーゼル機関車の乗員と目があい、すかさずお互いに手を上げて挨拶。なんだか楽しい。

最後尾には赤い布が結わえてある。

サトウキビ満載の列車は、高鐵の線路の向こうにゆっくりと消えていった。

 

工場行き第2便/(旧)改良場站 手前

さて、次の列車は何処で撮ろう。とりあえず歩きだすけど、この先はあんまりアイディアがない。朝の時点で下調べとはかなり異なる運用だったし、さっきの列車も結局10時をだいぶ過ぎてから来たしで、イマイチいつ来るかわからない状況だ。

この先で線路は小川を渡る。並行する道はないので、とりあえず迂回。

流石にこれは…人は渡れないか…。

春のような田園地帯を歩いてゆき、再び線路沿いの道に合流。更に考えもなく進んでいたが、霞んだ空気の向こうにオレンジの点が見える。汽笛も聞こえる。あっ、もう来るのか!と、その場でカメラを構える。

ヘロヘロ道端軌道をゆっくりと…

各貨車のシルエットはなかなかに不揃いだ。

 

ここは側面逆光だし、とりあえず風景重視のスナップに、遊びで影を強調の一枚。

編成写真はさっき撮れたので、まあもう気楽なもの。この辺りは町外れとはいえ中でも人の往来を感じられるエリアで、バイクやトラックが路駐してあったりする。その雰囲気を長編成のナローがゆく、それもまた愛おしい。

関係者だろうか、黄色のベストの人がバイクで列車の最後尾を追っかけていった。

少し先に、良い三輪トラック!こっちと絡めて撮ればよかったか。

さて、朝見た2本が戻ってきてしまった。このあと果たして列車は来るのか?

少し先の「改良場站」の踏切にはまだ人がいたので、これはこのあとも運行があるのだろうと判断し、更に歩いてゆく。農家の並ぶ田舎道にヘロヘロ路側軌道、無条件に健康に良い。

ここに線路があり、冬場は毎日列車が行き来している。それだけで御飯が進む。

また別の踏切小屋で、待機していた警手のおっちゃんが、僕の姿を認めると盛んに話しかけてくれた。しかし言葉がわからずアー、となっていると、ジェスチャーで虎尾の街から向こうに行くよ、と。なんとなく拾えた単語から、30分くらいしたら来るのかな〜、と察し、謝謝!と伝えてまた歩きだす。

やさしい警手さんの踏切。黄色い貨車流用の踏切小屋が目を引く。

親切な警手さんのおかげで、とりあえずまだ列車が走ることに確信が持てた。まだまだ歩ける。

 

畑行き第3便/9号装車場

更にひたすら西へ西へと歩く。大きな農園区画の先、線路が分岐し、貨車が留置されているのが見える。「9号装車場」についた。此処から先がいよいよ、この糖鐵の目的地たるサトウキビ畑エリアだ。

何両も貨車が留め置かれている。

踏切の先で列車交換ができるようになっている。生きている設備のなかでは、この路線唯一の交換場らしい。GoogleMap上だと「繁殖場站」の表記がある。

少し先で線路はサトウキビ畑の中に消えていってしまった。大きな道路の方は近くの集落に折れて入っていく。

さてどうしようかなとうろついているうちに、遠くの方にライトとオレンジの影が見える。あ、来てるじゃん!足早にさっきの踏切に戻ってカメラを構える。運良く自動車も来なかった。

「鉄✕路」の道路ペイントが郷愁を誘うカッコよさ。

10号装車場へ

1本行ったばかりがたら、次はまた当分先だろう。脚に疲れは来ているけど、まだ11時半。せっかくだし畑の中まで行ってみようか。「南天宮」というバス停のある集落の中を通り、西へ抜けられる道を探す。

GoogleMapだと新光・有才と表記されている集落。大きな関聖帝君廟がある。

Googleマップが示した道は、立入禁止のチェーンが貼られており、その前には野良犬が屯していたので足早に通り過ぎる。一つ横の、水路沿いを抜けていく道に迂回。

水路沿いを歩き、線路と交差する道路脇から列車を上手く撮れそうなポイントを見つけた。悪くないな、と、うろついていると、近くの踏切小屋から警手さんが出てきて盛んに話しかけてくれる。

スマホやら筆談やらを駆使してやっとわかったが、どうもしばらく列車はない、あと1時間は来ないよ?ということらしい。おおっと、そうなんだ…。

このあたりのサトウキビはまだ背丈が低い。

しかしこのあたりの方は親切だ。ろくに言葉も話せないオタクにもできる限りしようとしてくれる。中国語覚えないとな…。

次の列車まで待ってても良かったけど、じっとしてるのは性にあわない。それにさっきの警手さんも不安だろう。少し道を戻り、サトウキビ畑のなか更に西に進むことにした。

どこまでも広い空

たまに大きなダンプトラックが通り、サトウキビを糖鐵の駅まで運ぶ。

育ちきったサトウキビというのはとても背丈が高くて、向こうを見通せない。良い陽気で春の心地、日焼けし額がヒリヒリと痛む。用水路を流れる水の清らかな音が気持ち良い。時たま、大きなトラクターやダンプが走ってきて、ここが巨大農業地帯であることを思い返す。

サトウキビの切れ目に貨車が見えた。

あそこが駅?

10号装車場か!盛んにサトウキビの積み込みを行っているようだ。せっかくだし、この辺でも写真を撮ろう。

 

突然のオタク国際交流

隣の踏切に移動し、構図を色々試していると、後方から白い乗用車がやってきた。

おや立派な車だな?と思っていると脇に停まり、降りてきた男性が話しかけてくる。「アー、Sorry, I'm Japanese, 我是日本人、I can't speak Chinese、エー、Mandarin…」と情けなくもお決まりのフレーズを口にすれば、『Japanese? 日本人ですか?』と返ってきてびっくり。

踏切で思わぬ出会い。

台北から車で3時間かけてきたという彼は、オタク話ができるくらいに日本語が上手く、やはりとても申し訳なくなりつつも、そのまま色々会話する。

『日本からなんですね、日本でもここは有名なの?』と聞かれ「有名ですよ!ずっと来たかったんです!」と思わず返してしまう。

まあ虎尾の小火車は、海外鉄趣味のみなさんは知ってるだろうし、なにより地球の歩き方・台湾編にも記載がある。これは世界的有名撮影地ということでいいですかね。

そんな話をしている間も積み込みは続く。

台北の彼は頻繁に虎尾を訪問しているよう。さっき私が編成写真を撮影した北渓厝車站のストレートも、数年前に訪問済みらしい。この日は13号装車場から車で追っかけをしていて、このあと虎尾に向かっていくんだと、撮った動画を見せてくれた。僕は「午前中に虎尾から歩いてきた、そろそろ切り上げてバスで高鐵駅に出るつもり」と答える。『このへんにバスはないと思いますよ〜』と言われてしまったけど…さっきバス停は見つけたので大丈夫だと思いたい。

 

工場行き第3便/10号装車場

ここはなかなかどう撮るか難しい…と二人で立ち位置を模索していると、遠くの方に汽笛が聞こえ、列車がやってきた。

貨車列のむこうに、オレンジの影。

積み込みを待つためにしばらく停車。やがて出発し、留置中の車両を追い越していく。

そのまま踏切を行き過ぎたが、途中で停車。あっこれは連結だな?と、二人とも立ち位置を変える。

ポイントを切り替え、隣の線路へ。

元より長い編成は更に長くなり、満載のサトウキビといっしょに発車。

車で追っかけをする台北の彼と、立ち位置を変えて撮るつもりの僕。お互いなんとなく意図を察して簡単に別れの挨拶をし、私は走り出し、彼は車に乗る。手を振りながら、異国で思わぬ出会いがあったことを喜ぶ。

サトウキビの海をゆく。

まあ、その後また同じ場所で立ち止まって写真撮ってて、お互い笑っちゃったけどね。9号方面に行くであろう彼は、何枚か写真を撮るとすぐに出発していき、また一人に。さて私はどうしよう。シャッターを切るたびに疲れが回復した気分になるけど、なにせもう手持ちの水がない。次のバスまで1時間ほどあるが、ぼちぼち潮時か。

 

畑行き第4便/雲103号線踏切

道を戻りながら線路の方に目をやると、先程列車の時間を教えてくれた警手さんが旗を持って道路交通を止めはじめている。そうか、さっきの工場行き列車と9号装車場で行き違って、別のサトウキビ畑行きが来てるんだ!と気づいて、急いで望遠レンズを装着。

ゆっくりゆっくりと道路を横断。

そして、サトウキビ畑の中を大きくカーブし、10番装車場へ。

 

離脱、バスで高鐵雲林駅へ

よし、今度こそ満足。とりあえず今日は離脱しよう。この先の11号~13号装車場は、また次回、レンタサイクルかタクシーチャーターで行きたい。流石に徒歩は無理だ。

のどかな田園地帯。なんで初めての国で急にこんなところにいるんだ、という気分にもなりながら、とにかく歩いた。

9号装車場近くの集落まで戻り、嘉義客運「馬光南天宮」のバス停の前で待つ。

雲林市區公車202号線、というのに乗れば良いようだ。バス停には始発停留所の時刻しか書かれておらず、GoogleMapで出てくる時間もアテにならないので、日本と比べると乗車のハードルは高い。スマホで位置情報を確認しながら待って、バスがカーブから飛び出してきたら、ぴっと挙手。こうしてアピールしないと通過されてしまうらしく、ちょっと緊張した。

無事止まってくれたバスに乗り込んでしまえば、特に難しいことはなく、あとは車内の端末に悠遊卡をかざすだけだ。車内はガラガラ、いくつかの集落や工業団地に立ち寄りつつ、あっという間に高鐵雲林駅に戻ってきた。

ありがとう糖鐵!

ファミマで水を買い一気に飲み干す。

まだ14時台で明るいし、高鐵駅からまた虎尾に戻っればあと何本か撮影できるかな……というのもちょっと考えたけど、なにせ脚がかなり痛いので厳しい。次の宿を高雄に取ってしまったから、このまま高鐵で南下してしまおう。

 

むすび

ずっと来てみたかった路線だけあって、疲れこそしたけれど、撮影はすごく楽しめた。ヘロヘロ併用軌道のある風景は健康に良い。願わくば、虎尾の街なかが整備される前に来てみたかった…けれど、ともあれ現役のうちに訪問できてよかったなと思う。

そういえば、装車場でトラクターを使って貨車を引っ張る様子を見損ねてしまった。サトウキビ畑の末端部も行けてないし、工場の方や廃線跡の鉄橋も見れていない。虎尾の街もちゃんと歩いてみたいし…また再履修したいところ。

再見!

バンコク近郊ローカル線に乗って【タイ国有鉄道・マハーチャイ線 2023/夏】

メークローン駅といえば、メークローンの線路市場で(たぶん)全世界的に有名だろう。一方で、バンコク市内から国鉄メークローン線でアクセスしようとすると、鉄道マニア目線ではなかなかクセの強さがある。

 

まず、メークローン方面の列車は、他のタイ国鉄線から完全に独立した始発駅(ウォンウェンヤイ駅)から発車する。そして、途中のマハーチャイとバーンレームの間はターチン川で分断されていて、渡し船で渡ることになる。

この渡し船を境に、バンコク側のウォンウェンヤイからマハーチャイまでの区間を、通称マハーチャイ線と呼ぶらしい。

近郊非電化ローカル線って好きです。

2023年夏のタイ旅行では、バンコクからメークローン市場まで、メークローン線・マハーチャイ線を乗り継いで日帰り旅行をした。ハイライトはメークローン線側なんだけど、マハーチャイ線のいい感じの「都市近郊非電化路線」具合もとてもよかったので、紹介したく。

 

ウォンウェンヤイ駅

バンコク側の始発駅、国鉄ウォンウェンヤイ駅は、他の国鉄線どころか都市鉄道にも接続せず、完全に独立した駅になっている。一応、地下鉄にウォンウェンヤイ駅はあるけれど、わりと歩くので接続駅とも言い難い。

アクセスには地味に困る。結局、フアランポーン駅前に取ったホテルからシェアライドを使って向かうことにした。しかし出発時間を勘違いしていた上、渋滞にハマってしまう。車を降りると、ちょうどホームを汽車が出ていくのが見える。

まあ、知らん土地なのにギリギリに出た私が悪いのだ。仕方ないので、1時間後の次の便を待とう。

1面1線、低床ホームのシンプルな駅。

ちょっと洒落た切符売り場。有人駅です。

駅は1面1線の非常にコンパクトなもので、特段改札などもない。

日陰を得るためか、大きな屋根がホーム全体についている。その下にも屋台や商店が出ていて賑やかだ。美味しそうな匂いがホームにも漂うが、既にホテルで朝ご飯を食べてしまった。ちょっと勿体ないことをしたかも。

線路と道路の間にはガードロープがあるが、ところどころ切れていて行き来ができる。

線路を挟み、ホームと反対側は道路になっていて、バイクや自転車が結構走ってくる。まだ比較的涼しい朝の時間帯だから、歩いている人も多い。洒落たカフェやセブンイレブンもあって、ちょっと日本的な「駅前」の雰囲気と重ねて見てしまう。

線路内立ち入りも特段咎められないので、ホームや線路上を含めて、一体の街として動いている様がなんだか面白かった。

 

セブンイレブンでお茶を買うついでに、少し奥の方に歩いてみる。線路脇まで集合住宅がせまり、その軒先には商店が出ているようだ。こっちもなかなか魅力的なロケーション。街と鉄道の近さ具合は、日本で言えば江ノ電的というか。

少し奥まで。このあたりも活気があります。脇道に気になる商店街もありましたが、あまり離れて迷ってもいけないので、深入りはせず。

 

そろそろ列車の到着時間。フェーン、フェーンと汽笛が聞こえ、ゲロゲロゲロとエンジン唸らせながら、日本製のディーゼルカーがやってきた。どことなく親しみある車体の造りだけれど、こうも近くを通るとかなり迫力がある。

よく見るとここも「線路市場」で、線路際まで商品が広がっている。

大迫力。窓まわりの青い塗装がイカしてます。

列車を見送り、足早に駅に戻る。自由席なので、さっさと席を確保せねば。

ちょうどホームに戻ったタイミングで、時報が鳴る。ああもう8時か!国旗掲揚時の国家演奏で、駅スピーカーから国王讃歌が流れ始める。まわりのタイ人に合わせて立ち止まり、しばし清聴。

放送が終わると、駅はまた騒がしさを取り戻した。

ホームは昔ながらの底床ホームで、列車側にステップが付いています。屋台もたくさん。

切符を買おう。マハーチャイ線は無人駅も多く、車内で車掌さんからも買えるみたいだけど、ここは有人駅なので窓口へ。

きっぷはマハーチャイまで10バーツ(約40円)だった。

印刷しておいた公式時刻表の記載を読み違えて、20バーツと少しを出したのだが、駅員さんに不思議な顔で突き返される。どうも、エアコン付き車両が特別料金のようで、僕はそっちを読んでいたらしい。

そもそもこれから乗る列車にはエアコン車はないようだ。折角なら窓を開けて汽車旅を楽しみたいし、もとより非冷房に乗るつもりだったけど。

 

タイ国鉄NKF型/THN型

嵩上げがされていないホームから、列車の床面までは随分な高さだ。ツーステップバスが可愛く見えてくるような段差を、よじ登るように乗り込んだ。道路側の列車の扉も開いていて、道路から直接乗り降りする人もいる。

4両編成で、車内にはボックスシートが並ぶ。両端の各2両はプラスチックむき出しの座面で、まんなか2両がクッション付きシート。プラスチックシートのほうが「NKF型」で、クッションシートは「THN型」らしい。

先頭2両。プラスチックシートがならぶ。

中間の2両。合皮クッションの色合いも含めてすごく既視感。こちらに乗った。

2扉でボックスシートが並ぶのは、日本国鉄車みたいな雰囲気だ。日本製なので、きっと同じ設計思想なのだろう。みんな似ているな~と思うようで、日本人ファンからの通称は「タイのキハ47」だとか。

 

スパイスと国鉄の香り…。

ボックスシートを1つ確保した。窓は下降窓で、非冷房ゆえ開け放し。青い座席に銀のサッシ、さっきセブンで買った緑茶を置けば、あれ?青春18きっぷどこにしまったっけ?と不安になるような日本国鉄の香り。

灼熱非冷房国鉄型、気分は夏休みの18きっぱー旅!

帰国したのか?という気分になるけれど、飲もうとした緑茶の味がたっぷりの砂糖入りで、それがすぐに心をタイに引き戻す。

 

4305列車 マハーチャイ行き

8時35分、発車。マハーチャイ線はだいたい1時間ヘッドで、全線にわたってそれなりの乗車もあり、日本の地方都市の近郊電車な雰囲気。始発も終電もやたら早いのはタイだなあという感じだけれど。

車掌さんが鋏をチャンチャンチャンと鳴らしながら巡回してきたので、切符を渡して入鋏してもらう。

タイ文字よめない…。観光客が多い駅だと、英語のチケットが出てきたりもします。

しばらくはバンコクの街なかを行くが、ここが駅なの?という雰囲気のところも多い。高架道路の下に仮乗降場チックな設備だけだったりとか、ほとんどの列車が通過してしまうような、よくわからない駅もある。

もうすこしタイ慣れしたら、途中下車して鉄道風景スナップも楽しいかも。

ウターカート駅。2020年開業の新しい駅で、スカイトレインと乗り換えもできる、というのは、現地ではなかなか想像ができなかった。なんかすごい駅だなと写真を撮る。

 

始発から15分くらい走って、ワットシン駅でウォンウェンヤイ行き列車と交換。このときは、これが最初で最後の交換列車だった。

ワットシン駅。キレイに手入れされたローカル駅感、良いものです。

途中乗降もけっこうありました。ホームのこのやたら低い感じ、かつての日本もこんな感じだったんでしょうか。

段々と郊外へ、田舎へ。

やっぱりカラフルな寺院建築は見ていて楽しい。

Khan Keha駅、なかなか良い感じの駅名標が残っていた。

なんと手動の踏切が。重しのついた遮断感を警手さんが押し下げている。

タイの夏、マハーチャイ線の夏、2023。

田園風景に風に当たりながら浸っているうちに、再び街場らしくなってくる。線路は幹線道路沿に走り、小さな駅に停まり、そして建物がひしめく中に突入していく。

 

マハーチャイ駅

線路いくつか分岐すると、その先には市が立っていて、脇を汽車がスピードを落として走る。

マハーチャイにも立派な線路市場があるんですね。

マハーチャイ駅。たくさんのパラソルを前景にみると、市場の建屋に見えてくる。

踏切を越えると終着のマハーチャイ駅だ。大屋根に覆われていて、ホームはやや薄暗い。そんななか列車の写真を撮っている人が結構いるので、観光スポットにもなっているらしい。

到着。終点なのでみんな降りてゆく。

いい天気です。この奥は車両基地

先のローカルムードたっぷりの線路市場も気になるし、奥には車両基地もあるのだけど、しかしあまり乗り継ぎに余裕がない。あまり時間をかけて見ては回らずに、駅舎を出る。

駅前は海鮮市場のようになっていて、そのまま渡船の乗り場まで賑やかな通りが続いている。

にぎやか。メークローンまで行かなくても、普通にショートトリップ先として楽しそうだ。

魚市場。ちょっと生臭いが見ていて面白い。

ターチン川渡船

メークローン側の鉄道に乗り継ぐには渡船に乗らねばならない。たしか3バーツだった。雰囲気は概ね、尾道の渡船に近いものがある。天井は低めで、うっかり頭をぶつけてしまった。

人とバイクをギチギチに詰めてから動き出す。けっこう川幅は広くて、クルーズ感もありちょっと楽しい。

バーンレム側船着き場(THACHALOM)の雰囲気がめちゃくちゃ好みでした。

なんだか尾道感がすごい

メークローン線側は別立てでブログを書きました。こっちはこっちで楽しかった。

ptrmgn-nnhi.hatenablog.com

 

 

4308列車 ウォンウェンヤイ行

帰りに戻ってきたときは、マハーチャイの線路市場はもう閉じてしまっている。少し残念。

帰りのメークローン側からの接続はちょっと悪く、1時間弱待つことになってしまった。市場や駅構内を見学したりしながら、列車までの時間を潰す。

駅構内。服屋さんがあったりと、ちょっと市場っぽさもある。

踏切の中まで八百屋さんが侵食している。

帰りの便がやってきた。

ホームの端っこの方に立っていたため、列車が目の前に止まらず、乗り混むタイミングが遅れてしまった。かなりの混雑で、ボックスシートはすでに埋まり、ドア脇のロングシートになんとか座る。17時35分発。

ちなみにタイ国鉄はやけに終電が早く(マハーチャイ19時発)、この列車は終電2本前の便だったりする。

 

バンコクに近づくにつれ車内は更に混雑して、立ち客も増えてくる。学生もたくさん乗ってきて…というのは、JRの近郊路線なんかと共通する風景。どうもこのときは海外という気がしなかった。

日も落ちてきて、お寺の境内で夜市が立ち始めている。

ぼけっとスマホをいじっているうちに、ウォンウェンヤイには18時30分ごろ着。数分で列車はマハーチャイ方面に折り返して行ってしまった。

すっかり夕刻で、街は活気づいてきた。なかなかいい雰囲気だ。

ウォンウェンヤイ駅ホーム。午前の便と比べてだいぶ人が多い。

ようやく涼しい時間帯。バンコクはこれからにぎやかになる。

ウォンウェンヤイ街歩きをしたい気分になったけれど、このあとは友人とムーガタを食べる約束をしているので、また今度。シェアライドを呼んで、一旦ホテルに戻った。

 

むすび

半ばメークローン訪問のおまけでのった様なマハーチャイ線だったけれど、個人的にはこの「ふつうの」近郊ローカル線風情がとても気に入ってしまった。

一方で、ウォンウェンヤイ~マハーチャイは、将来的には国電会社ダークレッドラインで代替される計画もある様。時代に合わせてアップデートしていけるのは良いことだけれど、この路線もいつかフアランポーンと同じく、かつての古き良き時代の汽車旅風景…になってしまうのだろうか?

もしバンコクにまた長く滞在することがあれば、ぜひ機会を作って沿線をぶらついてみたいところです。

ある意味世界的有名撮影地、メークローン市場への旅【タイ国有鉄道・メークローン線 2023/夏】

2023年8月、もう大手を振って海外へ行けるだろう、と、初めてタイを訪れた。バンコクを拠点に色々行ってみようか…と考えたときに、思い浮かぶのはメークローン市場とメークローン線。

メークローン市場、あるいはタイの折りたたみ市場・線路市場、といえば、タイ王国の観光地としてはかなり有名な方ではなかろうか。もとより鉄道オタクの私はともかく、両親も、オンライン英会話のフィリピン人講師も知っていたくらいだ。

ベタではあるけれど、やはり実際行ってみたい気持ちが勝り、1日割いて鉄道で往復してみることにした。

 

 

バーンレム駅

バンコクのウォンウェンヤイ駅から鉄道で1時間、マハーチャイの街から、さらに渡し船で川を渡る。

船着き場からは少し歩く。

干物やさんが並ぶ通りを少し歩き、学校の前を通り過ぎ、本当にここか?と思うようなでかい倉庫の脇を抜けて、バーンレム駅に到着する。やや離れているからか、自転車タクシーやバイクタクシーが船着き場前で待機していたけれど、まあGoogleマップがあれば迷わず歩ける距離だった。

 

バーンレム駅

駅は簡素な1面1線構造。とりあえずは終点メークロンまでの乗車券を買う。10バーツ、約40円。水ペットボトル1本と同じ値段だった。列車は1日4本、チケットは30分前から発売、と掲示されている。

駅窓口。ちゃんと有人駅です。

折角だから、このあとやって来る汽車の写真を撮りたいなと駅周辺をうろつく。数年前の旅行記に「保線状況が悪く、線路と地面がほとんど同化している」と書かれていたが、しっかりとバラスト敷きに整備し直され、白く眩しい輝きを放っている。

 

保線用の車庫?と思しき場所の脇でカメラを構える。もっと奥の方まで探索したかったけど、なにぶん野犬が多いようで、やめておいた。野犬はバーンレム駅のホームにもいたので注意されたし。

しばらくして、フェーン、フェンフェン、と警笛が絶え間なく聞こえてきた。汽車が来たようだが、そのやかましさに反してなかなか姿は見えない。カメラを構えてしばらく待っていると、鮮やかなメークローン線カラーの3両編成の気動車がゆっくりとやってきた。

ジャパニーズ・トリテツ構図で1枚。この色の車体はメークローン線限定だ。

乗り遅れたら大変なので、足早に駅に戻る。

汽車が入ってくると、なかなか引き締まった風景になります。カーブしたホームがおしゃれ。

このとき、ホームと駅前道路が完全に分断されてしまう。迂回もできるが、別に汽車の中を通り抜けても良いです。

 

駅に住み着いている?野良の犬や猫。海外では狂犬病の怖さが勝ってしまいますね…。というか写真撮ってないでさっさと距離を取ったほうが良いんですが。

乗り込んで席を確保。日本製気動車というだけあり、ボックスシートの並ぶ国鉄のかほり漂う車内だ。

後ほど撮影した車内。シートこそプラスチックむき出しだが、アールの付いた席手すりにつり革の形状、ドア横のロングシートに網棚、窓のサイズと、どうも日本国鉄の雰囲気が強い。日本人ファンの間での通称は「タイのキハ47」だとか。

進行方向向き、左側の窓際に座れた。10時10分頃に駅を発車。盛んに警笛を鳴らしながらゆっくりゆっくり走り出す。

 

車内の人々と雰囲気

思いの外、バーンレム駅時点では車内は混まず、ゆったりと座ることができた。日本人の家族や欧米系、中国系の観光客は見かけ、国際的ではあるものの、なんだか地元の人も多そうだ。

ほどほど混雑。

次の駅ではボックスの向かい側にタイ人家族が座る。大家族のようで、いくつかのボックスに分散しながら座った。僕の前には、おばあちゃんと孫?と思わしき二人が座る。

しばらくは母親が来たりもしていたが、そのうち、後ろの方に兄弟か親戚がいるのに気づいたのか、窓から身を乗り出して「おーい!」と声を掛け合っている。なんとも微笑ましい。

もっとも、たまに伸びきった南国の木々が車体をひっぱたくような路線環境だから、ケガをしないものかヒヤヒヤもしてしまう。結局あとで車掌さんに注意されていたが、それもなんとも穏やかな雰囲気だった。

こういう汽車旅、思い出にのるんだろうなあ…。

このまま、まったりと閑散ローカルな雰囲気が続くのかと思いきや、いや世界的有名路線、そんなことはない。

終点に近づくにつれ、更に観光客が乗り込んできた。隣にタイ人ガイドが座ったと思ったら、こんどは恰幅の良い白人女性に席を譲る。終点に着く前には通路まで人が溢れ、その混雑っぷりは日本の通勤通学ラッシュとさほど変わらない。

どんどん混んできた。

都心から離れれば離れるほど混雑する近郊ローカル線なんて、なんとも不思議な状況だが、要はメークローン線乗車体験付きのツアーが沢山組まれているということだろう。ハイライト区間はメークローン駅前の1区間だから、どうしても末端側で人が集中してしまう。

 

 

沿線風景:美しい塩田地帯をゆく

汽車は、事前にイメージしていた「ヨタヨタ走るオンボロローカル線」をいい意味で裏切るように、かなりかっ飛ばす。保線状況が悪すぎて、減便・運休すらしていた時期があった、とはなかなか思えない走りっぷりだ。一度しっかり手を入れたんだろう。

保線拠点?にはPC枕木が積まれていた。かなり手入れはされているようだ。

 

単線だけど、そもそも1編成しか動かないので交換もない。だから長時間停車も基本的になく、強いて言えば観光客が多い駅では少し長めに止めている程度だ。

船場があったり、駅前に大きな寺院が見えたり。

タイらしいなあという風景。

 

やがて、気持ちの良い塩田地帯が広がる。田んぼのような、波のない四角く大きな水たまり達が、雨季の晴れ空を移している。シギやチドリのような脚の長い鳥がいるのも見え、海こそ見えないものの塩っ気を感じる。

どこまでも夏色の塩田地帯。塩田を見るなら、南側の席がおすすめか。

南国らしい植物が茂る中にはバナナもみかけたし、並走する未舗装の道で大トカゲが這っているのには驚いた。野良犬が勢いよく並走してくればやがて駅だ。

高架道路下、仮乗降場じみたローカル駅。

 

1日4往復しかない路線だけど、駅前には簡単な商店や食堂があり、地元の人がくつろいでいる。どこまでもローカルな、しかし生きた経済や生活も感じさせる風景は見ていても飽きない。

乗り込んでくる人はかなり国際的だ。

ツアーのバンがたくさん停められている駅もある。

メークローン市場通過を車内から

のびやかな塩田地帯の中を走っていたのが、だんだんと街場らしくなる。汽車がフェーン!と汽笛を鳴らす回数も増えて、スピードも随分落ちた。

だいぶ街場らしくなってきた。

踏切を渡るとついにメークローン市場に突入する。線路脇、汽車のすぐそこまで建物が迫り、そして汽車と建物の間にはスマホやカメラを構えた人々がみっちりと詰まっている。車内からも歓声があがり、みんな笑顔だ。

 

見下ろせば野菜や香辛料

ツアーガイドのタイ人が車内から「ヘロウヘロウヘロウヘロウ!!!サワディーカッサワディーカッサワディーカッサワディーカッ!!!」と大声で騒ぎ立てる。中も外も、カメラ片手に大騒ぎで手を振る。向かいの席の男の子も身を乗り出して、外の人と何度もハイタッチ。

 

市場に分け入るにつれ、建物のみっちり度合いも人口密度も増してくる。そこを列車は最徐行。これまたハチャメチャに人が集まる多い踏切を超え、大屋根のついたメークローン駅に到着した。

駅前の踏切にも人が密集。何がなんやら。

メークローン駅に到着した

駅構内でも沢山の人が待っていて、大変な混雑だ。汽車を降りる。低床ホームだから、飛び降りるといったほうが正しいか。

ぞろぞろ降車。ステップを降りなきゃならず、かなり進みはゆっくりだ。

なんかもうすごい…

構内にはジュース屋やら食堂などがあっていい匂いが漂ってくる。お腹はすいているが、汽車の市場通過を外からも見るのが最優先。改めてスリ対策だけ確認の上、駅を抜け出してメークローン市場へと向かう。

 

 

市場の様子

市場は踏切を挟んですぐそこだ。駅周辺は大変な混雑だが、踏切部分には警備員さんもいるので問題なく道路を渡れた。線路上にはテント屋根が広がり、足元のレールとマクラギの他にはここが鉄道線路上であることを感じさせるものもない。あいや、列車を象ったお土産はたくさんあったか。

衣類は割と見かけた。彩り鮮やかだ。

トロピカルフルーツも。このへんは観光客向けなのかな。

市場が成立した頃はもう少し地元向けの市場だったのだろう。今はかなり観光地化が進んで、駅側では装飾品やタイパンツ、ドリアン、ベタなお土産。駅から離れればカフェなんかもあり、ここで注文すれば座ってゆったりと汽車の通過を眺められる。ただ、地元向けの商店が全く消滅したわけでもなさそうで、八百屋のような店や、乾物を売る店も多々見かけた。

駅から少し離れたほうがローカル色は濃いかも。

列車通過を眺められるカフェ。

踏切につきあたって市場は終わる、こっちの方はだいぶ人も少ない。



列車通過を見守る①

汽車の時間だ。市場全体に注意放送が鳴り渡る。泰・英・中、かなり独特なイントネーションだったが、日本語の放送が流れるのには驚いた。日本人もたくさん来るんだなぁ。

ピンポンパンポーン!!と、タイの国鉄駅でおなじみのチャイムも響く。その後はタイ語で聞き取れなかったが、おそらく発車案内だろう。

もうすぐ発車時刻。

テントが畳まれ、商品が退けられる。人間は線路脇に引かれた安全ラインまで下がる。雨季の晴れなのでじわじわ暑いが、みんな今か今かと汽車を待つ。国鉄の人がやってきて、人や商品がちゃんと安全な位置にあるかを確認する。

フェーン!と、聞き慣れた汽笛とともに、ついに汽車がやってきた。最徐行でゆっくりゆっくりと走る。

さっき乗ってきた時とは逆の立ち位置だが、大騒ぎなのは何も変わらない。目の前、触れそうな位置を触れそうな速さで銀色のコルゲートが通り過ぎる。視線を上にやれば沢山の人が笑顔でカメラを構えながら手を振る。

「ヘロウヘロウヘロウ!」と、さっきの便でも車内からまくし立てていた、あのツアーガイドの声も通り過ぎていく。

 

汽車がすっかり通り過ぎれば、こんどはみんなが線路に出てきて、その姿をカメラにおさめる。それを後ろから追いかけてくるようにテントが畳まれ、商品も戻されて、またすっかり市場が出現し、沢山の人が歩いている。

毎日こんなお祭り騒ぎが展開されているのだ。

正直なところ、ベタな観光地だし、オーバーツーリズムに辟易するだけじゃ、と思って来るか迷っていたのだけど、こうも騒がしいと頭が非日常・オマツリモードに切り替わってしまう。ただただ楽しかった。案外自分はこういうの好きなんだなぁ。

 

さて、汽車がいってしまった。次に来るのは3時間後だ。ロットゥー(ミニバス)でさっさとバンコクに戻っても良いんだけど、あんまり調べてない。とりあえず、ソンテウ(乗合トラック)でアムパワー水上市場に行けるようなので、見に行ってみた。

アムパワー。シーズン外れで水も少ないけど、いい雰囲気。

列車通過を見守る②

さて、次の列車をどこで迎え撃とう?とまた市場をぶらぶら。とはいえ暑くて暑くて、もう疲れているので、ココナッツウォーターを出す青果店に吸い込まれた。

値段は20か40バーツくらいだった気がする。青いココナッツを包丁でガシガシ切ってもらいながら、そうか、ここで座って見ててもいいんだなぁと思う。ちょうど、線路向きの席を案内してくれたので、ココヤシの実にささったストローをゆっくりゆっくり啜る。

ここで見てってくれといわんばかりの席。人が前に立たなければ、だけど。

市場構内に多言語で注意喚起放送が流れ、市場のテントがどんどん畳まれる。線路沿いに人が集まってきた。幸いなことに?僕の前には人が来ないし、そのまま座っていよう。

遠くからフェーーーン!フェン!フェン!と汽笛が聞こえるけど、やはりゆっくり進んでくるから、なかなか姿は見えない。動画を撮っていたスマホが熱暴走でやられてしまった頃、ギャリギャリガタガタと走行音が近づいてきた。

ゆっくりと、しかしあっというまに、タマネギや唐辛子のめのまえを、3両編成の汽車は通り過ぎていった。

店のお姉さんにありがとう、と告げて青果店を出れば、やはりもうすっかり元の市場に戻っている。

 

帰路:ローカル駅舎観察

次の汽車で帰ろう。発車は1時間後の15時30分だが、なにぶんこの暑さで疲れているし、座れなかったらしんどい。

駅では切符はもう売られていたので、バーンレム、アダルトワンパーソン、と10バーツを差し出すお決まりのやり取りを終えてから、さっさと汽車に乗った。無事ボックスシートを確保し、ぼーっとして過ごす。

窓サッシを引っ掻いて落書きする文化、なんとタイにもあったらしい。(黄色でハイライト)

帰りは行きほどの混雑ではなかったが、それでも沢山の人が乗り込んできた。やはり車内も車外も大騒ぎで市場を通過する。

出発進行!

午後は雲が出てしまった。しかしまあ、何度も思うがすごいところを走る…。

今度は、行きとは反対に、北側(バーンレム行で進行方向左側)に座ってみた。こちらでは、色々と駅舎を見ることができて面白かった。

Lat Yai駅。ツアー拠点なのか、ここで観光客が一気に降りる。足もとが結構ボロいぞ。

Ked Muang駅。いい感じに待合室がボロい。

Bang Thorat駅。ホームがないような…というか駅名標そこなんだ。

Ban Bo駅。なんだか駐輪場みがある。

Bang Krachao駅。秘境駅ポイントが高いが、降車客がいた。

駅ごとにツアーの観光客はどんどん降りてしまい、バーンレム駅につく頃にはローカル線の雰囲気を取り戻していた。ただ、ローカル駅でも乗り降りはそこそこあったから、地元の日常利用もそれなりにあるのかな、と思う。

バーンレムの街に戻ってきた。

駅到着。降りるときは、やっぱりちょっと怖い。

このあとは友人と飯の約束があるから、渡し船とマハーチャイ線に乗り継いで、さっさとバンコクまで戻らねば。

 

結び

まず今回、メークローン線に乗るかは結構ギリギリまで迷っていた。

そもそも有名観光地に行ってもなあ……混んでそうだしなあ、という気持ちが大きかったのだ。結局行くと決めたのは前日である。発展著しいバンコク近郊、案外こういう風景はアッサリなくなり得るし、少しでも気持ちがあるなら行ったほうが良いかな…と思ったので。

行ってみたら、これはこれでとても楽しかった。どうも僕は、混雑は苦手でも「お祭り」は大好きらしい。観光客目線で見ても、オーバーツーリズムを感じはしてしまうもの、それでも八百屋のおっちゃんが楽しそうに列車の通過を見守っていたのが印象的だった。

個人的にはやはり、行っておいてよかったなあ、と思う。

時間を優先して、ツアーに申し込むんじゃなくて、汽車で自力で行ったのもなかなかいい経験になった。窓開けて夏のキハに乗るのは、もうそろそろ日本ではできなくなりそうだけれど、タイでならもうしばらくは味わえるだろう。

これからは海外でも、色んなところで乗り鉄をキメていきたい。

バンコクで「都会のローカル船」に乗る【センセープ運河船・2023年夏】

バンコクの都市公共交通といえば…やはり緻密なバス網が第一。そして高架電車に地下鉄、国鉄電車と、最近は着実に軌道系交通の整備も進んでいる。

一方で、かねてよりの交通の主役は船だろう。今でも、チャオプラヤ川をゆくエクスプレス・ボートなんかは有名どころで、特急や急行が走り、駅のごとく「船着き場番号」が設定されていたりもする。都市交通としての船がある、という素敵さに憧れてしまう。

チャオプラヤー・エクスプレス・ボート。王宮地区やショッピングモールも結び、観光にかなり便利です。種別は船上の旗で表されていて、終日運行のあるオレンジは急行相当。

そんなわけで、チャオプラヤ川のボート乗船はやりたいことリストに入れていたのだけど、現地在住の友人とメシを食べながらその旨を話すと「このへんにもボートが走ってるよ」と教えてもらった。

気になったので、予定にねじ込んで乗りに行ってみよう。

 

センセープ運河船(Khlong Saen Saep boat service)

友人からはざっくりと存在を聞いただけなので、ホテルに戻って下調べ。GoogleMapを拡大してみると、たしかに細い運河に港のマークがある。

それは「センセープ運河船」というらしく、バンコク中心部では空港鉄道と高架電車の間を走り、郊外方面に放射線として伸びてゆく。

下記のように系統が途中で切られていて、Pratunamで乗り換えが必要だが、切符は通しで購入可能であり、一体的に運営されているようだ。

  • パンファ・リーラード(Panfa Leelard/W4)~プラトゥナーム(Pratunam/CEN)
  • プラトゥナーム(Pratunam/CEN)~ワット・スリブンルアン(Wat Sriboonruang/E22)

路線図…にもなっていないけどイメージ図。都市鉄道を補完するように走ります。

今回はPanfa Leelard(W4)からPratunam(CEN)までの区間に乗る。観光向け?の英語名称では、”Golden Mount Line”と呼ばれているようだ。乗船場ナンバリングでは、西側の区間だからか、「W」を充てられている。とりあえず脳内では「金山線」とか「西線」とか呼んでいた。

 

Hua Chang乗船場

高架鉄道2路線が交差する、バンコク随一のハイストリート、サイアム地区。

ドンキやカラオケまねきねこ8番らーめん等が出店しているMBKセンターに「ここ北陸の街なん…??」と戸惑いつつ、高架鉄道沿いのパヤータイ通りを北上すると、橋の麓にHua Chang乗船場がある。

 

…はずなのだが、ほんとにここか???

車道の脇の道は運河に突き当たり、右手は橋の下で行き止まり。左手には、薄暗い屋根付のもと、勝手口の裏手のような、あるいはガレージのような空間があるが、覗き込むのをためらう。

なかなか入りづらい。

同じく乗るつもりだったらしい、近くの日本人観光客は、迷った末に「一つ向こう側の道なのでは?」引き返していってしまった。不安しか無いが、いや、よく見ると道の左手にHua Chang Pierと看板が出ている。アヤシイ屋根の先に入っていくのか……?

 

迷っていたら、欧米系の観光客が中から出てきた。とりあえずうん、看板は出ているし、駄目なことはなかろうと意を決して進む。屋根の下は簡単な屋台街になっていて(駅前商店ならぬ桟橋前商店?)そしてその奥に確かに乗船場があった。

華やかなるサイアムから、なんかすごいところに来ちゃったな。でも広告があったりと、ちゃんと生きた交通機関を感じる。

おお、本当にここかぁ、と周りを見ていると、目的のPanfa方面の船が来て、すぐに行ってしまい、乗りそこねた。まあ、次の船を待とう。

頻繁に船が来る。両方向とも同じホームなので、間違えないよう注意。

都心の運河だけあってあまり綺麗とは言い難いが(というかドブ)、まあ、水被ったりとか落ちなきゃ別に良いのだ。ただ結構波も立っているので、乗ってたら飛沫が飛んできそうで心配ではある。

チャオプラヤ川より川幅がぜんぜん狭いし、直角のコンクリ護岸だから、船が通ると波が反射して大変な揺れが起きている。

 

駅名標”(駅ではないが)は泰英2言語表記。簡単な路線図や運賃表もある。

船場は、運河の片側に設えられた「ホーム」と屋根があり、簡単な運行経路図や乗船場名標、運賃表、乗換案内…と、鉄道駅に近い雰囲気がある。それも、近代的なメトロとかじゃなく、東武亀戸線とかのような「都会のローカル線」の雰囲気だ。

運賃表はいわゆる三角運賃表で、文字が小さくて読み取りづらく、読むを諦めてしまった。乗ってから聞けばいいだろう。

 

Panfa Leelardへの船旅

しばらく待ち、Panfa方面の船がザブザブとやってきた。

結構かっこいいと思うんですよ

中央の乗り口から船内に入る。

とりあえず座り、運賃筒をもった船員氏に「ぱんふぁ、りーらーど!」と告げたら12バーツの切符を見せてくれたので、10バーツ札と1バーツ貨2枚を渡して、入鋏がわりに少し千切られた切符を受け取る。

船内の様子。全体的にオレンジ色。

船体中央に乗り口とエンジンがあり、船頭と船尾に向かって通路が伸びて、その両側に進行方向向きのシートが並んでいる。屋根にはオレンジ色の救命胴衣がびっしりと敷き詰められ、窓を覆う透明ビニールは曇ってしまって外がよく見えない。都市河川交通は過酷だ。

ちなみに今回、行きも帰りも終点まで乗ったので知らなかったけど、天井にはバスのごとく降車ボタンが設置されていたようだ。

窓には水よけのビニルが貼られているので、景色はあまり良くない。

かつては(と言っても数年前らしい)船体中央の通路がなく、窓から直接乗り込むし、集金の船員氏は外の梁を伝い歩き、乗船客は水しぶきにあわせてブルーシートを持ち上げたりしていたらしい。ジャングル・クルーズ感すらあるその頃に比べれば、今は随分乗りやすいのかな?

 

外はよく見えないが、まあ都市河川沿いってこういう景色だよね、という雰囲気の中をゆく。ものものしい護岸のそばにはトタンの低層住宅が並び、遊んでいる子供や洗濯物や。下町の雰囲気だ。華やかなサイアムを見たあとだと落差も感じるが、船内の治安は全く悪くなく、観光客と地元客とがほどよく混ざっている。

帰りの便だが、離合シーン。結構スリルがある。

船同士が離合するときは、相手方の波をお互いに受けてひどくグラグラと揺れる。船着き場は川の両側に配置されているため、狭い川幅を右寄り左寄りと走り、なかなか気を使いそうだ。日没後の運行が無いのも頷けるというか……

国鉄線をくぐって、運河と交差して、思いの外あっという間にPanfa Leelard。ここまでの旅行で、赤バスやシェアライドで酷い渋滞に巻き込まれてきたから、これは便利なものなのだなぁとしみじみ感じる。

終点が近くなると、みんなさっさと中央に集まり下船準備。

 

Panfa Leelard乗船場

船着き場はここも簡素なものだが、道路とをつなぐ階段脇にも屋台が出ていた。階段を登りきれば、トゥクトゥクが何台もいて、ミニマルながらしっかりと「駅」を感じる。

Panfa Leelardは「パンファ橋」の意味のようで、船着き場の近くに小さいが美しい橋がある。

駅前っぽい雰囲気

カオサンロードも近いが、気になっていたワットサケットが徒歩圏内。私は歩いちゃったけど、運河をまたぐ橋に歩道がなくて少し怖いから、トゥクトゥク使う人もいるのかもしれない。

こんな感じの運河です。この辺はちょっと広い。

橋上。普通に怖いぞ!

ワット・サケット。バンコクが一覧できます。
運河線の英語路線名「Golden Mount Line」はここのことを指しているようです。

観光を終えて、パンファ・リーラード船着き場に戻ってきた。ワット・サケットで夕立が激しく降り出し、これ帰り大丈夫なのか?となったけど、30分ほどで止んでしまい、今は雨上がり。雨季といっても長雨ではなく、たまにアホみたいに降る、ということらしい。

 

Pratunamへの船旅

もう船が来てるのでさっさと乗り込みます。

岸壁に降りるとちょうどボートが来ている。早速乗り込んで、今度は空いていた船の先頭に座ってみた。

出発すると、船着き場の先、橋をくぐった先にある別の運河との合流部が少し広くなっ他場所まで進む。船はそこで180度向きを変え、Pratunam方面へと走ってゆく。

操舵席の真後ろに座れた。

180度向きを変え。後続の便がすでに到着している。

切符売のとき、先の経験からてっきり12バーツ均一だと思いこんでいて、20バーツ札を渡したら20バーツの切符を渡される。あ、やべ、間違えた、となる。目的地までは後で調べたら18バーツだったらしい。調査不足ですね。現地じゃよくわかんなくて…。

 

切符。結構好ましい様式で、お気に入りです。

まあ、当地でも結局「ここ距離別運賃なんだ!きっぷのコレクションが増えた!」位にしか思ってなかったんだけども。

 

波が低いタイミングを見計らい、ビニルシートの隙間から写真を撮る。

先程よりも幾分暗くなったバンコクの運河を舟はゆく。操縦席とは特に区切るものもなく、船長のいろんな動作が見られて面白い。やがて子供がやってきて、操縦席脇に寝そべりだしたが、特に咎める様子もない。船長のお子さん?なんだろうか?

まどろむ子供と、なんかすごいところ歩いている船員さん

あっさりと到着。先程のPanfa行き便よりかなり人が多い。

 

Pratunam乗船場

やはりあっというまにプラトゥナームに着。運河ボートはここから先も運行しているが、系統はここで切られていて乗り換えとなる。

縦列でとまるから、乗り換えは楽ちん。

この運河線、むしろこの先の区間のほうが、ここまでの区間の数倍は長い。また更に奥地には電気ボートが走っているようで、いつかずっと船を乗り継いで行けるところまで行ってみたくなる。

Pratunam。鉄道臭さのある相対式ホーム…いや相対式岸壁?

プラトゥナームのホームは相対式、発車案内のLCDモニタなんかもついていて、ほとんど鉄道のようだ。夜は早く、もうすぐ運行は終了してしまうが。

Pratunam周辺はかなりの繁華街で、少し歩けば幾つものショッピングモールにぶつかる。衣料で有名な市場もあるとか。近くのチキンライス屋を友人が勧めてくれたから、とりあえずそこに行ってみよう。

 

むすび

自分は昔から「水上バス」というのに憧れがあって、観光向けでなく、実用としての都市河川交通をずっと体験してみたかったのだけれど、センセープ運河船はかなり理想に近かった。紹介してくれた友人には感謝だ。

早いし、安いし、各施設へのアクセスもよい。ドブ川だから好き嫌いは分かれそうだけど、水しぶきだけ気をつければ、結構便利な乗り物だった。バンコクは他の運河でも電気ボートが運行されていたりするので、公共交通で運河巡りも楽しそう。

ちかくの展望台より、青色が運河船、緑は高架電車。ガッツリ都心ですね…。

(note更新) 初めての広島電鉄を歩く【2023年・GW】

 

2023年のGWは、山口から岡山まで山陽筋を旅しました。宇部線小野田線に、スカイレール尾道渡船、黄色い115系…いろいろ拾っていったのですが、一番時間を割いたのが広島電鉄です。

前々からずっと行ってみたかった。写真中心でnoteにまとめ、4記事もできてしまいました。

 

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これでもまだまだ巡りきれていません。また行きたいものです。

 

note記事内にもちょっと記載しましたが、訪問後、広島駅電停の架線高さが下げられ、菱形パンタグラフをもつ3003号は入線しなくなったようです。さらにダイヤ改正で系統に変化が生じ、その影響か1形式1車輌の旧型車がほとんど車庫から出てこなくなったと聞きます。

まあ、GWに思い切って行っておいてよかったとも言えますが、寂しいですね…。今回縁がなかった582・602・762・913、また本線上で撮ったり乗ったりできる日が来るのを願ってます。

 

駅前大橋線の工事もじわじわ進んでいるようですし、いずれにせよ今後のさらなる変化を楽しみにしておきましょう。

 

(note更新) とさでん交通を訪ねて【2023年・春】

2023年4月。成田からのLCCで、週末弾丸高知をしてきました。とさでん交通の乗車と撮影が目的です。写真中心に、noteを書きましたので、よろしければぜひ。

 

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とさでん交通、ずっと行ってみたかった存在です。

どうも最近撮り鉄欲がムンムンと湧き上がっていたのと(長電3500系追っかけの影響ですね)、いろんな写真を見て、久々に「トラム鉄」をしっかりやりたいな…という思いがありました。

 

 

そんななか、とさでん交通の今後を憂うようなニュースが流れます。経営が厳しい…というか、そもそも車輌・設備更新が全く追いついていない。今のままじゃ置き換えに100年くらいはかかってしまう、という内容のもの。

私に何ができる訳でもないのですが、気づくと成田~高知のジェットスター電子航空券が手元にありました。1ヶ月前くらいに予約すれば、土日でも案外安いんですね。

 

あるいは、ちょうど仕事で苦しい思いをしていて、なにか逃避を求めたのかもしれません。

 

 

結果として、路面電車にはセラピー効果があることがよくわかりました。

 

 

このあと、タイミングを見つけては飛行機のチケットを探し、広島・岡山・松山・長崎と彷徨うことになります。最近人生がちょっと楽しいかも。そんな根源に、このときの高知の記憶があります。

 

高知もまた、時期を変えて行かねばなりませんね。普通に観光もしたいです。涼しくなって、非冷房車が運用入りする頃が狙い目でしょうか。

(note更新) 長野電鉄3500系、最後の一般運用を追いかけた日々。【2022-23・年末年始】

2023年1月、長らく地元長野を走っていた、長野電鉄3500系が引退しました。

引退を記念し、最後の一般運用に入る、とのことで…。その期間中、2022年12月31日から2023年1月3日まで、帰省のついでに追いかけた記録をNoteにしたためました。

(写真中心です)

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電車といえば長野電鉄信越本線、そして、長野電鉄といえば普通電車の3500・3600系と特急電車2000系、という環境で育った私。

須坂駅のスイミングスクールへ、権堂のグランドシネマズへ、駅前の理容店へ、松代遠足へ。鉄道オタクとして、以外にも、日常のいろんな思い出の中にこの電車がいます。3500系の引退は、一つまた、懐かしい地元の風景が過去帳入りしてしまうことになります。

寂しさはありながら、チャリにまたがりカメラ片手に沿線を追いかけ、フリーきっぷを買って1路線をじっくり乗り回す……そんな忘れかけていた楽しい経験に、最後に導いてくれた3500系N8編成には感謝です。

 

せっかくなので、Twitterにカウントダウン風に毎日アップロードしていた写真も、こちらに貼っておきます。昔のデータは飛ばしたりしてしまい、馴染みの割にはあまり写真がないのが惜しいのですが…。

2014年1月9日 朝陽~附属中学前 
おなじみ「朝陽インカーブ」の近くですが、田園風景の中、飯綱山バックや志賀高原バックで撮れる、とても気持ちの良い区間でもあります。

2014年9月16日 附属中学前駅
硬券入場券集めに熱を上げていた頃、ちょうど来た3500系と駅舎。ながでんの有人駅=入場券発売駅も、思えばずいぶん減ってしまいました。

2015年11月22日 信濃竹原駅
駅舎公開&硬券入場券発売イベントで、信濃竹原へ。このときは、確か自動車運転の練習も兼ねて訪問しました。ローマ字なしの幕がなんだか懐かしいです。

2018年8月17日 善光寺下駅
この頃には進学で長野を離れています。撮影日的にも帰省のときの写真でしょう。こういう、何気ない雑なカットも、今となっては貴重なもの。やはり地下区間が似合います。

2019年12月2日 長野駅
だんだん帰省しても見る機会が減っていました。そろそろ…と思っていた頃。

2020年1月2日 附属中学前
見かけるたびにカメラを構えていました。長野は大洪水で色々大変だった時期で、あまり沿線を駆け回るとかはできなかったのですが。

2022年1月2日 市役所前駅
その後、そもそも帰省もやりづらかった時期…。久々の年始の帰省、ちょうど見かけたので、1区間だけ乗ってみました。このあと22年4月以降は運用がなく、もう動かさないものと思っていましたが、最後に一般運用入りしたのは前述の通り。


3500系は2回もオリンピック輸送に関わった、なかなか稀有な車輌でもあると思います。埼玉在住の友人も見送りに来たりと、広く愛された電車なこと、改めて感じました。(東武線ユーザーの彼いわく、長電は東武車はいないけど、車輌から東武を感じると。田都線に日比谷線と、確かに…)

最後の一般運用も、鉄道マニアばかり…では決してなく、志賀高原に向かう外国人観光客に、初詣に向かう善光寺平の人々に。特段の装飾もなく「いつもの電車」を貫いていました。そのせいか、正直あれから半年がたった今でも、帰省したらしれっと走っていそうな気がしてなりません。

 

3500系、お疲れ様でした。ありがとう。