ぱらのみっく・ういんどう

ひとり旅のブログ。乗り鉄中心、バスに船、街歩き。ひとつのテーマをじっくりと…。

バンコクで「都会のローカル船」に乗る【センセープ運河船・2023年夏】

バンコクの都市公共交通といえば…やはり緻密なバス網が第一。そして高架電車に地下鉄、国鉄電車と、最近は着実に軌道系交通の整備も進んでいる。

一方で、かねてよりの交通の主役は船だろう。今でも、チャオプラヤ川をゆくエクスプレス・ボートなんかは有名どころで、特急や急行が走り、駅のごとく「船着き場番号」が設定されていたりもする。都市交通としての船がある、という素敵さに憧れてしまう。

チャオプラヤー・エクスプレス・ボート。王宮地区やショッピングモールも結び、観光にかなり便利です。種別は船上の旗で表されていて、終日運行のあるオレンジは急行相当。

そんなわけで、チャオプラヤ川のボート乗船はやりたいことリストに入れていたのだけど、現地在住の友人とメシを食べながらその旨を話すと「このへんにもボートが走ってるよ」と教えてもらった。

気になったので、予定にねじ込んで乗りに行ってみよう。

 

センセープ運河船(Khlong Saen Saep boat service)

友人からはざっくりと存在を聞いただけなので、ホテルに戻って下調べ。GoogleMapを拡大してみると、たしかに細い運河に港のマークがある。

それは「センセープ運河船」というらしく、バンコク中心部では空港鉄道と高架電車の間を走り、郊外方面に放射線として伸びてゆく。

下記のように系統が途中で切られていて、Pratunamで乗り換えが必要だが、切符は通しで購入可能であり、一体的に運営されているようだ。

  • パンファ・リーラード(Panfa Leelard/W4)~プラトゥナーム(Pratunam/CEN)
  • プラトゥナーム(Pratunam/CEN)~ワット・スリブンルアン(Wat Sriboonruang/E22)

路線図…にもなっていないけどイメージ図。都市鉄道を補完するように走ります。

今回はPanfa Leelard(W4)からPratunam(CEN)までの区間に乗る。観光向け?の英語名称では、”Golden Mount Line”と呼ばれているようだ。乗船場ナンバリングでは、西側の区間だからか、「W」を充てられている。とりあえず脳内では「金山線」とか「西線」とか呼んでいた。

 

Hua Chang乗船場

高架鉄道2路線が交差する、バンコク随一のハイストリート、サイアム地区。

ドンキやカラオケまねきねこ8番らーめん等が出店しているMBKセンターに「ここ北陸の街なん…??」と戸惑いつつ、高架鉄道沿いのパヤータイ通りを北上すると、橋の麓にHua Chang乗船場がある。

 

…はずなのだが、ほんとにここか???

車道の脇の道は運河に突き当たり、右手は橋の下で行き止まり。左手には、薄暗い屋根付のもと、勝手口の裏手のような、あるいはガレージのような空間があるが、覗き込むのをためらう。

なかなか入りづらい。

同じく乗るつもりだったらしい、近くの日本人観光客は、迷った末に「一つ向こう側の道なのでは?」引き返していってしまった。不安しか無いが、いや、よく見ると道の左手にHua Chang Pierと看板が出ている。アヤシイ屋根の先に入っていくのか……?

 

迷っていたら、欧米系の観光客が中から出てきた。とりあえずうん、看板は出ているし、駄目なことはなかろうと意を決して進む。屋根の下は簡単な屋台街になっていて(駅前商店ならぬ桟橋前商店?)そしてその奥に確かに乗船場があった。

華やかなるサイアムから、なんかすごいところに来ちゃったな。でも広告があったりと、ちゃんと生きた交通機関を感じる。

おお、本当にここかぁ、と周りを見ていると、目的のPanfa方面の船が来て、すぐに行ってしまい、乗りそこねた。まあ、次の船を待とう。

頻繁に船が来る。両方向とも同じホームなので、間違えないよう注意。

都心の運河だけあってあまり綺麗とは言い難いが(というかドブ)、まあ、水被ったりとか落ちなきゃ別に良いのだ。ただ結構波も立っているので、乗ってたら飛沫が飛んできそうで心配ではある。

チャオプラヤ川より川幅がぜんぜん狭いし、直角のコンクリ護岸だから、船が通ると波が反射して大変な揺れが起きている。

 

駅名標”(駅ではないが)は泰英2言語表記。簡単な路線図や運賃表もある。

船場は、運河の片側に設えられた「ホーム」と屋根があり、簡単な運行経路図や乗船場名標、運賃表、乗換案内…と、鉄道駅に近い雰囲気がある。それも、近代的なメトロとかじゃなく、東武亀戸線とかのような「都会のローカル線」の雰囲気だ。

運賃表はいわゆる三角運賃表で、文字が小さくて読み取りづらく、読むを諦めてしまった。乗ってから聞けばいいだろう。

 

Panfa Leelardへの船旅

しばらく待ち、Panfa方面の船がザブザブとやってきた。

結構かっこいいと思うんですよ

中央の乗り口から船内に入る。

とりあえず座り、運賃筒をもった船員氏に「ぱんふぁ、りーらーど!」と告げたら12バーツの切符を見せてくれたので、10バーツ札と1バーツ貨2枚を渡して、入鋏がわりに少し千切られた切符を受け取る。

船内の様子。全体的にオレンジ色。

船体中央に乗り口とエンジンがあり、船頭と船尾に向かって通路が伸びて、その両側に進行方向向きのシートが並んでいる。屋根にはオレンジ色の救命胴衣がびっしりと敷き詰められ、窓を覆う透明ビニールは曇ってしまって外がよく見えない。都市河川交通は過酷だ。

ちなみに今回、行きも帰りも終点まで乗ったので知らなかったけど、天井にはバスのごとく降車ボタンが設置されていたようだ。

窓には水よけのビニルが貼られているので、景色はあまり良くない。

かつては(と言っても数年前らしい)船体中央の通路がなく、窓から直接乗り込むし、集金の船員氏は外の梁を伝い歩き、乗船客は水しぶきにあわせてブルーシートを持ち上げたりしていたらしい。ジャングル・クルーズ感すらあるその頃に比べれば、今は随分乗りやすいのかな?

 

外はよく見えないが、まあ都市河川沿いってこういう景色だよね、という雰囲気の中をゆく。ものものしい護岸のそばにはトタンの低層住宅が並び、遊んでいる子供や洗濯物や。下町の雰囲気だ。華やかなサイアムを見たあとだと落差も感じるが、船内の治安は全く悪くなく、観光客と地元客とがほどよく混ざっている。

帰りの便だが、離合シーン。結構スリルがある。

船同士が離合するときは、相手方の波をお互いに受けてひどくグラグラと揺れる。船着き場は川の両側に配置されているため、狭い川幅を右寄り左寄りと走り、なかなか気を使いそうだ。日没後の運行が無いのも頷けるというか……

国鉄線をくぐって、運河と交差して、思いの外あっという間にPanfa Leelard。ここまでの旅行で、赤バスやシェアライドで酷い渋滞に巻き込まれてきたから、これは便利なものなのだなぁとしみじみ感じる。

終点が近くなると、みんなさっさと中央に集まり下船準備。

 

Panfa Leelard乗船場

船着き場はここも簡素なものだが、道路とをつなぐ階段脇にも屋台が出ていた。階段を登りきれば、トゥクトゥクが何台もいて、ミニマルながらしっかりと「駅」を感じる。

Panfa Leelardは「パンファ橋」の意味のようで、船着き場の近くに小さいが美しい橋がある。

駅前っぽい雰囲気

カオサンロードも近いが、気になっていたワットサケットが徒歩圏内。私は歩いちゃったけど、運河をまたぐ橋に歩道がなくて少し怖いから、トゥクトゥク使う人もいるのかもしれない。

こんな感じの運河です。この辺はちょっと広い。

橋上。普通に怖いぞ!

ワット・サケット。バンコクが一覧できます。
運河線の英語路線名「Golden Mount Line」はここのことを指しているようです。

観光を終えて、パンファ・リーラード船着き場に戻ってきた。ワット・サケットで夕立が激しく降り出し、これ帰り大丈夫なのか?となったけど、30分ほどで止んでしまい、今は雨上がり。雨季といっても長雨ではなく、たまにアホみたいに降る、ということらしい。

 

Pratunamへの船旅

もう船が来てるのでさっさと乗り込みます。

岸壁に降りるとちょうどボートが来ている。早速乗り込んで、今度は空いていた船の先頭に座ってみた。

出発すると、船着き場の先、橋をくぐった先にある別の運河との合流部が少し広くなっ他場所まで進む。船はそこで180度向きを変え、Pratunam方面へと走ってゆく。

操舵席の真後ろに座れた。

180度向きを変え。後続の便がすでに到着している。

切符売のとき、先の経験からてっきり12バーツ均一だと思いこんでいて、20バーツ札を渡したら20バーツの切符を渡される。あ、やべ、間違えた、となる。目的地までは後で調べたら18バーツだったらしい。調査不足ですね。現地じゃよくわかんなくて…。

 

切符。結構好ましい様式で、お気に入りです。

まあ、当地でも結局「ここ距離別運賃なんだ!きっぷのコレクションが増えた!」位にしか思ってなかったんだけども。

 

波が低いタイミングを見計らい、ビニルシートの隙間から写真を撮る。

先程よりも幾分暗くなったバンコクの運河を舟はゆく。操縦席とは特に区切るものもなく、船長のいろんな動作が見られて面白い。やがて子供がやってきて、操縦席脇に寝そべりだしたが、特に咎める様子もない。船長のお子さん?なんだろうか?

まどろむ子供と、なんかすごいところ歩いている船員さん

あっさりと到着。先程のPanfa行き便よりかなり人が多い。

 

Pratunam乗船場

やはりあっというまにプラトゥナームに着。運河ボートはここから先も運行しているが、系統はここで切られていて乗り換えとなる。

縦列でとまるから、乗り換えは楽ちん。

この運河線、むしろこの先の区間のほうが、ここまでの区間の数倍は長い。また更に奥地には電気ボートが走っているようで、いつかずっと船を乗り継いで行けるところまで行ってみたくなる。

Pratunam。鉄道臭さのある相対式ホーム…いや相対式岸壁?

プラトゥナームのホームは相対式、発車案内のLCDモニタなんかもついていて、ほとんど鉄道のようだ。夜は早く、もうすぐ運行は終了してしまうが。

Pratunam周辺はかなりの繁華街で、少し歩けば幾つものショッピングモールにぶつかる。衣料で有名な市場もあるとか。近くのチキンライス屋を友人が勧めてくれたから、とりあえずそこに行ってみよう。

 

むすび

自分は昔から「水上バス」というのに憧れがあって、観光向けでなく、実用としての都市河川交通をずっと体験してみたかったのだけれど、センセープ運河船はかなり理想に近かった。紹介してくれた友人には感謝だ。

早いし、安いし、各施設へのアクセスもよい。ドブ川だから好き嫌いは分かれそうだけど、水しぶきだけ気をつければ、結構便利な乗り物だった。バンコクは他の運河でも電気ボートが運行されていたりするので、公共交通で運河巡りも楽しそう。

ちかくの展望台より、青色が運河船、緑は高架電車。ガッツリ都心ですね…。